探しもの

夕方六時前でもこんなに明るいのは
水平線の向こうまで
夏が来ている証拠だ

歩幅を少し広くとって
足首を使って歩く

そう決めていても
歩いていると色んな思いが浮んで
おろそかになる

こんなに近くに海沿いの道があるのに
歩き始めたのはここ数年のこと

会社員として普通に働いてた頃は
散歩する余裕はなかった

そう思えば今って
幸せじゃないかと
他人事のように思う

おろそかになってるよ
もうひとり他人がいた

波打ち際で遊ぶ子供たちに混じって
シーグラスを探すけど
ひとつも見つけられなかった

その代わりになのか
波が来るたびに
打ち上がったクラゲが近付いて来た

今日はもう帰りなよ

諦めが悪い僕に
さらにもうひとりが言ってる

どんなに探しても
見つけられないことがあると
教えられて僕は来た道を戻る

きっと誰の中にも
他人がいっぱい住んでいて

自分っていうのは
みんなの意見をまとめて
メモしてるだけなんじゃないだろうか