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NHK大河ドラマ「光る君へ」の花山天皇がエキセントリックで好き。

初登場からずっと、エキセントリックな言動で視聴者をざわつかせていた花山天皇が、失恋のショックだか政治のストレスだかで、ついに坊さんになってしまいました。

ドラマの展開は史実に沿っていて、帝位にあっても政治には関与できず、皇太子を後見する右大臣家からの
「早く退位しろ」
というプレッシャーと、お気に入りの妃に死なれてしまい、

よし子、よし子ぉ〜

逢いたいぃ〜!

と号泣。
逢いたくてx2震える

メンタル変調
の流れがよかった笑

陰謀で出家させられ、退位に追い込まれた事件は、
「寛和の変」
として知られていますが、花山天皇は出家してからのほうが自由に行動してしあわせそう笑
元々凝り性なので仏道修行に打ち込んで、比叡山で灌頂受戒まで受けて最高位に至っています。

勢いで出家したようでも、皇族の身分を離れてしまえば制約も人の目もなくなりますし、贅沢はできなくても食べることに不足はしないので、あちこち熱心に出向いては仏道修行に励み、和歌を詠んで風流を極めている。
帝位を捨てたことを悔やむわけでもなく、のびのびとよい余生。
正直な話、アーティスト気質な人は、政治には向かないですよね…。

あ、この方は感受性が豊かで、喜怒哀楽の感情のうねりを恐れない強さがあると思ったのは、花山天皇の和歌が素晴らしいから。
たとえば、この御製。

あしひきの山に入り日の時しもぞ
あまたの花は照りまさりける

風雅集202

表現が絵画的なのがとてもよくて、表現したいことをまっすぐに捕まえて言葉を当てはめられるのは才能ですね…。
いまひとつの和歌は言葉をこねてしまうので、歌の姿が小さくなります。

花山天皇から和歌、そして西行法師の話へ脱線してしまいますが、思いついたまま書いているのでご容赦ください。
日本の伝統文化の源流になっているのかな、と思うのがこれ。

木のもとをすみかとすればおのづから
花見る人となりぬべきかな

詞花集276

花山天皇が出家後に仏道修行で諸国をめぐった頃に、桜の木の下に足を止めて休んだ時に詠んだ和歌です。
帝位にあった人が身分を捨て、一介の僧として放浪するドラマチックさに加えて、当時の人の
「僧侶はカタブツ」
「仏の教えに傾倒して、人の心の機微がわからない」
という偏見を逆手にとって、旅の僧侶にも浮いた心を起こさせるほどに見事な桜よと、情感たっぷりに花を表現していると思います。

この和歌のフレーズ、
「木のもと」
「桜」
と言えば、西行法師の

願わくは花のもとにて春死なむ
その如月の望月のころ


をすぐに連想するのですが、

木のもとに住みけむ跡をみつるかな
那智の高嶺の花を尋ねて

花山院の足跡をテーマに和歌を残しているので、花山院の和歌も当然知っているはず。。。

西行さんは存命中から和歌の名手として知られて、京都の公家衆どころか帝からも一目おかれていましたが、自己ブランディングのために花山院の
「孤高の詩人」
のイメージを利用してますね…。

西行さんは話す言葉が自然と和歌になって、人のこころを動かす天才詩人なのだけれど、
「孤高」
「漂泊」
を歌う際は、こころは必ず都のほうを向いています笑
現代に転生したら、Instagramで桜の写真を投稿して

#桜好きさんとつながりたい
#無常感
#ただ感動#今年も桜

「西行先生の新作、楽しみにしてます!」
のコメント待ちをするイイね厨になるはず。

西行さんは自編のアンソロジー「西行集」を残して、後世に名前を残す手がかりを作っていますし、勅撰集に採用されるため、山奥に住んでいてもこまめに上京して人付き合いを欠かさず人脈を維持しています。
才能だけじゃ生き残れないですよ、世の中のトレンドを押さえたクリエイティブが必要だし、自分の価値を高めていかないと、と語る広告代理店勤務のコピーライターみたいな人。

でも、和歌の通りに二月の満月の晩に、桜の木の下で入滅したのだから、ここまで徹底すれば自己プロデュースもむしろ気持ちいいですね。
そして、自分の感情のおもむくままに行動できる花山天皇は、やはり生まれつきの超おぼっちゃまです笑。

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