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業者参入に買収騒動…今から「ゆっくり動画」を始めるのはアリなのか?

はじめましての方ははじめまして!
私は現在顔出し、声出し基本無しの「ゆっくり動画」(ゆっくり解説)のメインの生き物系チャンネル「へんないきものチャンネル」として活動して8ヶ月、チャンネル登録者9万人のチャンネルを私個人で運営している「ろう」と申します。
YouTubeのゆっくり系は現在たくさんの業者やチャンネルの買収などが横行しており個人ひとりで戦っていくには大変な状況が続いています…

そこで今回は

・ゆっくり動画はそもそもなんなのか?
・これからゆっくり動画を作るのはどうなのか?
・ゆっくり動画の将来性はどうなのか?

と言ったディープな部分を、ゆっくり動画を作っている私自身の目線で色々解説していきます。

※こちらの動画は動画集客チャンネルさんの酒井さんとの対談動画で使用した台本を元に再構成したものです。動画で見たい方はこちらをご視聴下さい。

そもそもゆっくりとは?

ではまず、そもそも「ゆっくり」とはなんなのか、どんな動画でどんな文化なのか紹介していきます。

ゆっくりは2008年に2chに投稿されたアスキーアートが元ネタであり、そのアスキーアートにも「東方Project」という元ネタがあります。

東方ProjectはZUN氏が手掛ける個人制作の同人ゲームの一つで、20年以上の歴史があり色んなジャンルのゲームが出ていますが、縦シューティングゲームになりネットの普及などで爆発的に人気になりました。

そしてこの二次創作から色んな作品や動画などが続々と生まれるようになりました。

そんなある日、当時の2ch(現5ch)にて主人公ポジションのキャラクターである「霊夢」と「魔理沙」という女の子が1頭身のおまんじゅうみたいなデフォルメをされ「ゆっくりしていってね!」というセリフが添えられたアスキーアートが投下されました。

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原作にはこのデフォルメキャラクターも、こんなセリフもないのですが、そのインパクトから注目を集め、色んなスレッドに貼られたり当時勢いの会ったニコニコ動画でパロディ作品が大量に作られました。

これが「ゆっくり」の始まりです。

それからニコニコで流行→Youtubeへのクリエイターの遷移などがありながら10年の月日を経て、ゆっくり動画は主に以下の3タイプの動画に派生していきました。

・ゆっくり解説
・ゆっくり実況
・ゆっくり茶番

うちのチャンネルは特定のテーマについて解説する「ゆっくり解説」をメインとしています。

大手では歴史系解説の最強のメラさん(登録者16万人)、企業解説のカカチャンネルさん(登録者14万人)が居ます。

次にゆっくり実況は、いわゆるゲーム実況のゆっくり版です。

こちらは登録者102万人のたくっちさんが最大手で、他にも50万人30万人とかなりの登録者がいる大手の方もたくさんいます。

最後にゆっくり茶番は、東方Projectのキャラクターたちが紙芝居のように茶番劇をするもの、風刺的なエンタメ動画と思っていただければ合ってます。

こちらもあまり詳しくないのですが、登録者28万人のてきとう太郎さんなんかがかなり大手だと思います。

このように「ゆっくり動画」と一言で言ってもいろんな構成、ジャンルのものがありある種の概念や文化のような存在なっています。

棒読みのゆっくりボイスを使う動画、ゆっくりのように1頭身のキャラが動いているもの全て「ゆっくり動画」という括りに入ります。

初見の人からするとこういったバックグラウンドはわからないかも知れませんが、色んな方が同じキャラを利用しているのでいい意味でも悪い意味でも一定のクオリティで動画を楽しめますし、表現の一つとして10歳以下のお子さんから、40代以上の方まで幅広く認知されています。

動画の制作にどれくらいの時間がかかるのか?

ではクリエイター目線で実際にゆっくり動画はどれぐらいの作る時間がかかるのか?紹介していきます。

まず前提として私のチャンネルは「ゆっくり解説」なのでゆっくり実況、ゆっくり茶番の方とは制作フローが大きく異なります。
また、ゆっくり動画は必ずセリフをテキストに入力して読み上げさせなければいけないのでそれを入力する手間も発生します(これはどのゆっくり動画でも共通ですが)

ゆっくり解説の場合は間違ったことが言えないので場当たり的に適当なことは喋れません。
事前調査→台本づくり→動画に落とし込むという制作フローになります。

制作は大体8~12時間ぐらいで、2日に分けて台本づくりと動画作りを1日ずつ行っています
ゆっくりボイスだけならYMM3とAviutlというツールでテキスト入力→読み上げチェックの微調整だけで済むので、だいたい5時間ぐらいで1本出来たりするのですが、現在はボイスロイドを使用しているので調声の作業が入って作業時間が長くなりました。

10~15分の動画を作る場合、文字数は3500~6000文字ぐらいになります。
文章を書く力、まとめる力、動画を作るスピードなどなどで制作時間は大きく変わると思いますが、ずっと文章を書く仕事をしてきたので私はそこまでキツくないですが、普通に考えて実写系では考えられないような労力がたくさんかかるので

「ゆっくり動画って顔出し声出しなしでツールもたくさんあるしラクそう~」みたいなノリで始めると後悔します。普通の人は真似しないほうが良い。

私はずっとニコニコでゆっくり動画を見ている側の1ファンだったので続けられているのもあります。(そうじゃないと動かすキャラのキャラ性とか吸収できないですし…)

ゆっくりが2018年から規制され、収益剥奪された事件について

2017年末頃に、Youtubeの収益化基準が変わった時期あたりからゆっくり動画の広告が剥奪されるという騒動が起き始めました。

特に狙われていたのは「ゆっくり解説」で、当時は剥奪される人も少なかったため、泣き寝入りするしかなくてそこまで話題にはなりませんでした。

その頃のYoutubeはテキスト動画と言われるテキストが流れるだけの動画が大量にあり、その動画のほとんどがコピペだったり、ひどいものだと週刊誌の転載という著作権侵害にあたるものが溢れてました。

多分、数年前に下から上に文字だけ流れる動画を開いてイラッとした経験がある方は居るんじゃないでしょうか?でも今はほとんど見かけないですよね。

多分この頃にYoutubeを使った情報商材で、コピペ動画を投稿すれば稼げるみたいなノウハウが出回ったのではないかと推測しています。

Youtubeがそんな低品質な動画を許すわけなく、厳しい収益化条件を設けた
その上、広告審査のAIを導入してスパム的に量産されている動画を取り締まり始めました。

皮肉なことに情報商材のノウハウの中にはゆっくりボイスを使って読ませれば良いみたいなものがあり、海外の人はゆっくり文化を知らないため、ゆっくりボイスを使ってる=スパム動画の証だ。
みたいな判断をしてしまって、ゆっくり動画がテキスト動画に巻き込まれる形で広告剥奪されていったのではないかと推測しています。

この辺りの顛末はこちらのnoteでもまとめています。

大手チャンネルも被害にあった、はく奪の原因を推測

大手のゆっくり解説の大手の人が剥奪されたのが話題の発端です。

ゆっくり解説は基本的に背景固定、画像を出しながら文字が出て解説するというスタイルなので、画面に動きがない+ゆっくりボイスなのでAIが勘違いして広告剥奪した可能性は高いです。

その証拠にゆっくり茶番とゆっくり実況での剥奪事例はその時は無く、剥奪されるケースもゆっくり解説が8割、残りが2割というぐらいゆっくり解説は狙われていました。

剥奪の原因はその時色々と議論されましたが「繰り返しの多いコンテンツ」というものばかりで、内容も抽象的で特定出来ず、共通点として考えられるのはゆっくりボイスの使用ぐらいでした。

当初は動画のクオリティが~という話もありましたが、ゆっくり動画を見ている人はヘビーユーザーのファンで視聴維持率も高く、高評価率も高いため、表面上の数値とかエンゲージメントで言えば、実写系のYoutuberにも勝るとも劣らない数値を叩き出しているのです。

ゆっくり動画の視聴者はとても素晴らしいです(大事なことなので)

なかには収益化ももどった事例もある。その方法は?

中には…というかここ半年ぐらいでほぼすべてのクリエイターさんが何らかの方法で広告は戻っています。

単純に再審査を2,3回して戻った人もいれば、5月頭に初審査をして2回落ちて7月に通過した私のような人もいたり。
色んな方法を試して背景を動かしたり、生声を入れたりという試行錯誤をしたけど、どれも気休め程度しか効果がないと思ってます。

そもそもAIは日々進化するものなので、場当たり的に「これさえすればオッケー!」みたいな対策をしてもギリギリのラインは潰されるのが世の常ですし、違法アップロード動画を検挙率も遥かに向上していますから、あまり一つの手法を妄信的にやらないほうが良いと思います。

ゆっくりの収益化を通す上でまず試して欲しいものは2つあります。

1つはTeamYoutubeというTwitterにあるYoutubeの運営アカウント英語でリプライを送って、何が問題なのか、収益化が通らない、広告が剥奪されてしまったというツイートを投げかけることです。
中にはこれで戻った人もいますが、向こうもテンプレ対応で何もしてくれないことも多いので、過度な期待は禁物です。

もう一つはファンと交流することです。

Youtubeは低品質でスパム的に量産される動画を恐れているわけです。
そんなチャンネルの場合はまず視聴者に対してコメントのいいね返しやコメント返しをできないはずです。

コメントへの対応、コミュニティに投稿、あと丁寧に概要欄の文章を書いたりするなど、人間がちゃんと運営している感を出しておきましょう。

とはいえ…これをすれば100%すぐに戻るというわけでもないです。
でも、日々進化するAIを対策するのではなく、AIを開発している人間の思考、そしてそれを取り仕切るYoutubeの思想などに対して先回して行動することが大切です。

現在でもゆっくり茶番やゆっくり実況など動きが比較的多い人の動画で剥奪が起きたりしていますが、これはもう防げない事故です。
リスク対策としてサブチャンネルを育てておくことも大切です。

これからゆっくりをはじめる人にアドバイス

もしゆっくり動画をこれから作ろう、始めようと考えている方はこれだけは守っておいたほうが安心してスタートダッシュできます。

いろんなゆっくり動画を見ること

ゆっくり動画を見ている人はかなりの割合で、また別のゆっくり動画を見ています。
ということは必然的に「こっちは見やすい、面白いけどこっちはつまらない」という比較をされてしまうわけです。

他のチャンネルと比べても見劣りしないような一定のクオリティに上げるため、どのような掛け合いが面白いのか、どう解説すればいいかなど研究することが大切です。
クオリティさえ上げれば自ずと一定層の視聴者は巻き込むことが出来ます。

なにか一つオリジナリティを入れてみること

さっきの話に通じることですが、ゆっくり動画は良くも悪くも他の動画と似たような作りになります。

これは他のゆっくり動画視聴者を巻き込みやすいというメリットがある反面「差別化がしづらい」というデメリットも抱えています。
ここで個性やオリジナリティを出さないとAIに広告剥奪されるリスクがアップしたり、差別化出来ずに記憶に残りづらくなるわけです。

もし広告剥奪されたり、チャンネルがBANされても「まぁここが消えても他のがあるから良いか」と視聴者に思われてしまうようでは意味はありません。
「○○といえばこのチャンネルだよね」「このチャンネルじゃないとダメだ」と思われるようにファンを増やすことが大切です。

収益化がなかなか通らなくても良い覚悟をすること

これはゆっくり動画の宿命のようなものだと思います。。。

ゆっくり動画を作っている人の中には「ゆっくり動画は悪くない、Youtubeの判断がおかしい」というクリエイターさんもいます。
確かにゆっくり動画は10年以上歴史のある日本の文化であり、何も悪いことはしていませんが、こちらが動画を投稿しているのは海外のYoutubeというサービスであり、現状広告剥奪で狙われやすくなっているのも事実です。

そういった事実に声を上げることは大切ですが、事実は事実で受け止めなければなりません。
ゆっくり動画は実写系など他の動画に比べて収益化は通りづらいです。

「ゆっくり動画が好きだから始めたい!」という人は収益化がなかなか通らなくても動画を投稿し続けられると思いますが、ビジネス目的で始めてしまうと

・キャラの設定を覚えないといけない
・動画の制作に無駄に時間がかかる
・収益化が通りにくい

という地獄が待っています。

実際、ゆっくりクリエイターの8割ぐらいは「ゆっくり動画が好きだから」という動機で始めていて、残りの2割は自分の好きなことの表現方法としてゆっくり動画を使用している感じでした。
クリエイターの皆さんはホントにゆっくりが好きなんですよね。

とりあえず万全な体制を整えたい人は「サブチャンネルを育てよう、スポンサーを探そう、横のつながりを持とう」という感じです。

ゆっくりクリエイターへのメッセージ

これを見ている人の中には収益化がなかなか通らなかったり、剥奪されて困っているクリエイターさんも多いと思います。

うちのチャンネルでもいろんな対策を施したり、先程説明した対策をしていますが、広告審査AIというのは常に中身も傾向も変わっていくので、何をやれば大丈夫かという明確な答えは日々変わります。

今、進行形で問題が起きている人は先ほど紹介したような対策をまずしてみてください

そして現在ディスコードでゆっくりクリエイター向けのクローズドなコミュニティを運営しています。60名ぐらい参加していて中には有名な人もちらほらいます。

そこでは今後のゆっくり動画の方向性についての話し合いや、剥奪された事例の情報共有
広告剥奪に備えた視聴者を惹きつける動画を作る改善案、チャンネルを伸ばしていくためにはどうすればいいかなどディープな話し合いをしています。

もし参加したいゆっくりクリエイターさんは私のTwitterにDMをください。
一応事前に、どのような作品を投稿しているか審査を行いますが、Youtubeの審査よりかは遥かに甘いと思いますw

非営利のコミュニティを作った目的というのは、広告剥奪されてほぼすべての人が泣き寝入り動画を上げて投稿を休む事が多かったからです。

実写系のYoutuberならコラボしている人の横つながりが見えましたが、ゆっくりクリエイター同士ではなかなかそれが見えず、投稿者が匿名だったため繋がりが希薄に感じました。

助け合える環境に無いと孤独を感じますし、広告が剥奪されると全部否定されたようなネガティブな気持ちになってしまいますが、切磋琢磨する仲間がいれば、同じ境遇の人同士で前向きにどうすればいいか考えることが出来ます。

今は日本独自のアングラ文化のイメージがあるゆっくりですが、小学生でもゆっくり実況を見る子供はたくさんいます。
投稿を止めてしまう前に持ち直して、ゆっくり界隈をどんどん盛り上げて育てて欲しい、そして今の小さい子が見ても大丈夫なような健全で面白いコミュニティを作り

「自分もゆっくり動画を作ってみたい!」というクリエイターを増やし、色んなジャンルの動画が増え、視聴者もどんどん増えていって

海外の人たちに「日本にはゆっくりという面白い文化がある」「ゆっくり動画が面白くて可愛い」そう言ってもらえるような環境をつくりたいと思ってます。

界隈を盛り上げることが、視聴者を増やすことだけでなく、広告審査の基準にもいい影響を与えると信じて動画を作っています。

文句だけ言っても状況は好転するとは限りません。
僕はそう考えて行動しています。

これからゆっくり動画を作ってくれるクリエイターさんに伝わると信じています。

追記:2020年10月9日

クローズドコミュニティの参加条件などをまとめたnoteを執筆したので、参加を希望される方は今一度こちらに目を通して頂けると幸いです!


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