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緊急事態宣言(非ロックダウン宣言)はアンダーコントロールという危険な賭け

 今日からついに緊急事態宣言が発令されました。昨日は安倍総理が会見し、その中の質疑応答でイタリア人記者の質問への回答で安倍総理が「責任を取ればいいというわけではない」と責任逃れともとれる発言をしたことが大きな話題となりました。

 しかし、大事なのは安倍総理の回答の方ではなく、イタリア人記者の質問の方です。彼は日本がロックダウンをしないことについて一か八かの賭けだと思うが失敗だったらどう責任を取るのかと尋ねたのです。この質問にこそ今回の日本の緊急事態宣言の真の意味があります。

 今、100年前のスペイン風邪の猛威を記した『史上最悪のインフルエンザ』という本を読んでいるのですが、この本を読むことによって少し感染症に対する考え方が分かってきました。
 スペイン風邪はどれくらいの期間で収束したか。実はその期間はかなり短く、どの町もだいたい2ヶ月くらいで落ち着いています。その2ヶ月の間に人々は何をしたのか。効果的なことは何もできなかったのです。スペイン風邪は多くの人に感染し、その何割かの命を奪い、多くの人が罹ることによって収束に向かっていったのです。

 初期での封じ込めができない場合、感染症の収束には多くの人が罹るということが必要なようです。かといってスペイン風邪のように急速に感染が広がってしまえば医療崩壊が起きて多くの人が死んでしまいます。なので、感染を緩やかにすることが感染症の収束には重要なのです。テレビに出ている感染症の専門家達が「感染を止める」と言わず「感染のピークを遅らせる」と言っていたのはこのことだったのです。
 欧米の国々は既に急速な感染が起きている為にこれからの感染をかなり抑え込まねばならずロックダウンという都市封鎖に踏み込みました。

 さて、ではわが日本はどうでしょうか?
 なぜだか分かりませんが、日本は欧米に比べて感染のスピードが遅いのです。安倍総理や専門家が言うギリギリ持ちこたえている状態です。 
 ここで日本は他のどこの国もしていない作戦に出ました。それはロックダウンをせずにやれる範囲で感染を遅らせるということです。もし、これがうまくいけばロックダウンによる経済的な損失やそれによる爆発的な失業者の増加を出さずに感染を収束させることができます。
 しかし、これは世界の他のどの国もしていない作戦です。もし失敗すれば今ロックダウンするより大きな損害が起きるかもしれません。だからイタリア人記者は一か八かの賭けだが責任は取れるのかと聞いたのです。
 緊急事態宣言はその意味とは裏腹にロックダウンをしないという消極的な、それでいて大博打な宣言だったのです。

 おそらく安倍総理は感染をある程度コントロールできていると考えているのでしょう。彼得意のアンダーコントロールです。
 もし安倍総理やその周囲の専門家が考えているように感染がアンダーコントロールにあるのなら、経済的なダメージをなるべく抑えた上で感染をなるべく安全に収束させるという離れ業ができることでしょう。実際、約2週間前までは日本は他の国に比べてかなり感染を抑えらえています。

 私達は自分達が実はアンダーコントロールのギャンブルの真っ只中にいるということを意識すべきです。
 大事なことは安倍総理が責任がどうこう言ったことではありません。私達が今日から一か八かの大博打をしていることこそが昨日の会見の最も大事なポイントだったのです。

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