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変えるのは入学時期ではなく一斉教育

 休校がさらに延長された今、にわかに9月入学への変更が叫ばれています。休校の分を取り戻そうとあせるよりも、世界標準である9月に年度の始めをずらしてしまおうという案です。
 今年度を来年の9月までの1年半として来年の9月から9月入学を始めるというならまだ理解できます。今年の9月から新年度を始めるというのはあまりに時間がなさすぎます。
 コロナ後の学校においてまず変えるべきはもっと教育の根本的なシステムです。

 オンライン授業などではネット環境や家庭での勉強のしやすさのせいで教育の格差ができてしまうのではないかと言われています。確かにそのとおりですが、では今までは教育格差がなかったのでしょうか。
 実はオンライン授業のようなものが日本以外ではできても日本では難しい決定的な理由があります。
 それは日本の教育が一斉教育である点です。日本の学校はクラスのみんなが同じ時に同じ内容を勉強します。これ、日本で教育を受けた人は何の疑問も感じないかもしれませんが、落ち着いて考えたら変なことなのです。何日か欠席した人も休んだ部分をすっ飛ばしてその日の授業を受けます。何ヶ月も不登校になった人も同じです。さらにいえば、勉強する能力には個人差がありますが、よく分からない人もそんなことはとっくに知っているって人もみんな同じ日に同じ内容を勉強します。
 オンライン授業はどうあっても一人一人への関わりが乏しくなります。今の学校の対面授業では一斉授業ではありますが、苦手な子へのフォローなどができますので、それが難しいオンライン授業では学力の格差が広がってしまうでしょう。また、オンライン環境が整っていない家庭も多いようです。
 6月に学校が再開してもどういう形で授業ができるのか分かりません。学校は密への対策が難しい場所です。休校していた分、大急ぎで授業を進めなければいけません。

 コロナ後の学習は様々な課題を抱えています。その一つの解決策が個別学習であると私は考えます。それぞれがそれぞれのペースで勉強をしていくのです。
 まず、これなら全員が同じ授業スタイルにこだわる必要はありません。みんなが同じ時に同じ内容を勉強しなければいけないという縛りがなくなるので、色んな学習の仕方があっても学校はやっていけます。オンラインで授業を受ける子ども、学校まで来る子ども、色んな授業を受ける子ども達が一つの学校の中にいるようになるのです。苦手な子には丁寧にフォローを受け、できる子はどんどん進んでいきます。もちろん各生徒によって進度の差は生じますが、遅い生徒は応用的な内容を多少省略しても基礎部分を丁寧にやるなどのやり方も考えられるでしょう。


 もちろんこのやり方は簡単ではありません。先生が今より大変になります。ヨーロッパも国によっても違いますが、手厚い国では20人の学級を二人の先生で見ています。40人の学級を一人で見る日本とはざっと4倍のマンパワーの差があります。個別学習への切り替えには教育の人件費を増やすことは必須です。
 みんなで授業を受けないと協調性が養えないという意見もあるでしょう。実際には全ての学習を個別学習で行うわけではありません。教科によっては一斉学習だけの授業もあるでしょう。また、低学年ほど一斉学習の時間が多い方がいいかもしれません。
 勉強が遅れてしまう子どもが出てしまうのではという批判も多いと思いますが、そもそも今の一斉学習では分からない子は分からないまま過ぎていき、学習内容を取りこぼしてしまう子どもも多くいるのが現状なのです。個別学習ならこの部分を手厚くフォローできるはずです。

 一斉学習から個別学習の変更によって不登校問題も大きく改善されていくと考えられます。色んな授業の受け方があるのですから、学校に行かないという選択肢も決して珍しいことではなくなります。久しぶりに学校に行こうと思っても今までは授業の遅れが気になりましたが、個別学習ならそういった心配もありません。

 実際にはいきなり個別とまではいかなくても、密を避ける為の分散授業は結果として今までよりみんなが同じ内容をやらない非一斉学習の要素が強まっていくことでしょう。この機に一斉学習から個別学習へのシフトを少しずつ進めていくというのが私の主張です。
 このコロナ禍の危機の中で学校がまず変わるべきは始業の時期などではありません。みなが同じ時間に同じやり方で同じものを学習するという前提こそ変えるべきなのです。

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