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たらしめたり、たらしめられたり

カレーは面白い。

玉石混交で多種多様で千差万別で森羅万象。

みんなちがって、みんないい。

という金子みすゞイズムを地で行くというか、体現している。

品出しも面倒くさがって段ボールのまま陳列しているスーパーの1食55円のカレー、1食3,300円の高級レトルトカレー、母が冷蔵庫の奥底で眠る芽が生えたじゃがいもを使って作るカレー、アンパンマンカレー、カシミールカレー、松屋のカレー、サウナ屋のカレー。

例を挙げればキリがない。


この世には、カレーという名称によってその曖昧な存在が確立された魑魅魍魎が跳梁跋扈しているのだ。

これらは正直別々の食べ物なんじゃないかと思うほどに味は違うし、人が掛ける値段もかかっている手間も違う。

だけどどれもカレーだ。

一体何がカレーをカレーたらしめているのだろう。

カレーは(Curry)の語源としては、各種スパイスで具材を煮込んだ汁状のもの、即ちインドのタミール語のソースの意のカリ(Kari)から転じたという説や「香り高いもの」、「美味しいもの」という意味で使われるヒンズー語の「ターカリー」(Turcarri)から「ターリ」(Turri)に転じ、英名になったという説やその他の説があります。いずれにしても、インドを中心とした熱帯、亜熱帯地方でのスパイシーな料理を総称して英語で《カレー》と呼ぶようになったものです。

カレーとは?/全日本カレー工業協同組合 http://www.curry.or.jp/whats/

とのこと。

分からない。

ちなみに、カレーはインドで生まれ、なんやかんやでイギリス植民地時代に日本へ伝わってきたらしい。

ますます分からない。

ちなみにインドにはカレーという食べ物は存在しないらしい。

ますます、ますます分からない。

では私達が思うカレーの味とは何の味だろう。

私は一時期、スパイスからカレーを作るのに夢中になっていたことがあるのだが、

一時期私は、スパイスからカレーを作るのに夢中になっていたことがあるのだが、

(どちらの方が良い主語の使い方か分からなかったのでどちらも書いてみた。好きな方で読んでください。)

「普段5、6種類のスパイスでカレーを作っているが、一体カレーの味は何種類のスパイスで成り立っているのだろう」

と何気なく思いつき、試してみたことがある。

その時使ったのはクミンとターメリック。

その2種だけで作った茶色い汁状のものを食べてみると、「カレーっぽい味」なのだ。

そう、「カレーっぽい味」だった。

欲を言えば、というか絶対に、コリアンダーやカルダモンの爽やかさだとか、シナモンの香ばしさが欲しいと思った。

だがしかし、その「カレーっぽい味」の茶色い汁状のものがカレーではないかと言えば、そうではない。

カレーなのだ。

とは言ってみたものの、勿論その茶色い汁状のものにはトマトや玉ねぎ、鶏肉にヨーグルト等が入っているため、具材ありきの話だ。まあなんでもいいや。

思うに、誰かがそれを何かだと言い張れば、それは何かになるのだ。

結局有耶無耶じゃん。と思わなくもないが、そういう話なのだ。

これは何もカレーに限った話ではない。

例えば私の家の近所に「ちびひろ公園」と呼ばれている公園がある。

公園というのは名ばかりで、公団の中にある240坪程度の運動場だ。

だけど私が小学生の頃には既にそう呼ばれていたし、今もそう呼ばれているのだから、そこは「ちびひろ公園」なのだ。

一度正式名称が気になって、調べてみたことがあるのだが、特に正式名称は定められていなかった。

原生林の上にある空白部分が"ちびひろ公園"だ。



このように、団地内に設置されている案内板(地図の様なもの)では、そもそも空白になっている。

UR都市機構の物件情報に記載されている地図。こちらでは遊び場と表記。


強いて言うなら、「遊び場」なのだろう。

ではこの「遊び場」を最初に「ちびひろ公園」と呼び始めたのは誰なのか?

まずはこの公団S団地(仮名)が完成した頃に遡ってみよう。

S団地が完成したのは西暦1974年(昭和49年)。

ちょうど第一次オイルショックの真っ只中だ。

戸数としては2,904戸で、現存する県内の公団としては2番目に大きな団地となる。(1番の方は1990年完成なので、当時は恐らく県内で1番大きい団地だった。はず。)

区内の人口推計(wikipediaより引用)を見ても

・1965年 148,017
・1970年 207,899
・1975年 275,268

となっているため、当時の賑わいは想像に難くない。

しかし、

祗園精舎の鐘の声─ 。

とはよく言ったもので、現在は例によって少子高齢化の煽りを受け、住人は高齢者が多くを占めるようになっている。

そして、不幸があったのかどこかへ引っ越したのか、少しずつ団地の窓から夜の灯りが減っていく状況だ。

そんなS団地には完成当時から、つまり50年間住み続けている方も少なくない。

そしてそんなS団地の生き字引に、尋ねて分かったこと。

その「遊び場」は、
50年前から「ちびひろ公園」
だったのだ!

今回話を聞いたのは、完成当時(完成前からとのことなので実際はもう少し前)からS団地に住み続けているFさんで、現在81歳。当時20代後半だったFさんは、奥さんと子供2人の4人家族でS団地に越してきたそう。

Fさんは当時の団地の様子や29年前の震災の頃について語ってくれた。

しかしFさんはそもそも件の「遊び場」が「ちびひろ公園」と呼ばれていることを知らなかった。

そして「そういうことなら」と、今は東京で衣類関係の仕事をされている長男、Aさん(現在54歳)に電話を繋いでくれた。

以下電話の内容


・AさんがS団地に住んで小学校に通っていた頃、そこは「ちびっこ広場」と呼ばれていた。

・誰が名付けたのかは分からない。

・当時も「ちびっこ広場」が正式名称として定められていたわけではない。

結局、誰がそこを「ちびっこ広場」と名付けたのかを知ることはできなかった。

だが寧ろ略称の差異はあるにせよ、誰が名付けたのかも分からないのにも関わらず、その「遊び場」は確かに50年前から「ちびひろ公園」として存在し続けているのだ。

「ちびひろ公園」と呼ばれているから、「ちびひろ公園」と呼ばれているのだ。

一度話を戻そうと思う。

カレーという曖昧な存在と、誰が名付けたのか分からないのに、確かに存在している公園の愛称。

「これら」を「これら」たらしめたり、「それら」が「それら」たらしめられているもの。

この(その)根底には「名付ける」という行為がある。

例えば

「貴方は雪を知っていますか?氷と雪の違いは分かりますか?」

こう尋ねられたとして、科学的知識を用いて説明するか、オノマトペを用いて説明するかの違いはあれど、大抵の日本人は簡単に答えることができる。

「では雪に関する語彙にはどんなものがありますか?」

粉雪、吹雪、新雪、初雪、雪月花、雪原、雪隠、雪女、雪だるま。

パッと思い浮かべるだけでも、これだけの雪に関する語彙が思い浮かぶ。

対して、

質問1

「これは何ですか?」

「ثلج」

質問2

「ではこれは何ですか?」

「ثلج」

このように、とある2つの質問をすると、どちらにも同じ答えが返ってくる言語がある。

質問1では雪を見せながら、質問2では氷を見せながら尋ねているとする。

しかし、どちらも返ってくる答えは「ثلج(サルジュ)」になる。

雪の降らない地域の言語、アラビア語では「雪」と「氷」どちらも「ثلج(サルジュ)」と呼ばれているのだ。

雪の降らない地域には、雪という言葉は存在しないのだ。

もうひとつ例を付け加えておこう。

コロナウイルス(COVID19)が流行し始めたちょうど4年前の今頃、私の友人が「絶対にコロナにならない方法」を思い付いたと言った。

勿論そんな都合の良いものは存在していないし単なる冗談で、手洗いうがい、マスクをするのが最も理想的な「コロナになりにくい方法」なのだが、この拙文に於いての例としてはこの上なく適切な気もするため、一応書いておく。

それは「どれだけ体調が悪くなろうが、命の危機を感じようが、検査を受けないこと」だった。

つまり彼は「貴方はコロナウイルスに感染している人物です。」と言われない限り、自分はコロナウイルスに感染している人物ではないという滅茶苦茶な理論を掲げることで、コロナウイルスに感染しないことに成功したのだ。(結局彼はその年の夏に、コロナウイルスの影響と思しき高熱に悩まされることとなったのだが)

「カレー、ちびひろ公園、雪、感染者」

これらは、これらをこれらたらしめているのだ。

そしてこれらは、これらによってこれらたらしめられている。

茶色い汁状のものをカレーと呼ぶ。だからカレーはカレーである。

なんでもない遊び場をちびっこ広場と呼ぶ。だからちびっこ広場はちびっこ広場である。

空から降ってくる氷を雪と呼ぶ。だから雪は雪である。

コロナウイルスに感染している人を感染者と呼ぶ。だから感染者は感染者である。


たとえ誰が名付けたか分からなくても、過程が強引でも、名付けられたものは名付けられたものになるし、名付けられていないものは名付けられたものにならないのだ。

そしてその最たるものが私たち人間の名前だ。

これを書いている私にも、これを読んでいる貴方にも、貴方の両親にも名前はあるし、その名前で呼ばれている。

デカルトが「我思う、故に我在り。」と言ったように、「名付けられている、故に名付けられている。」のだ。

私たちは「人間」という生物だ。

そしてそれ以前に「生物」だ。

更にそれ以前に、酸素65.0%、炭素18.0%、水素10.0%、窒素3.0%、カルシウム1.5%、リン1.0%、硫黄0.25%、カリウム0.2%、ナトリウム0.15%、塩素0.15%、マグネシウム0.05%の集合体に過ぎないのだ。

だけどそれでは余りにも味気ない。

だから貴方という元素の集合体は、「生物」になり、「人間」になり、「貴方の名前」を名付けることで、貴方になるのだ。

いつかカレーという言葉が無くなって、スパイスの煮込みなんて名前に変わるかもしれない。

50年後のちびひろ公園は別の名前で呼ばれているかもしれない。

地球温暖化で雪が降らなくなって、雪という言葉が無くなるかもしれない。

貴方の好きな人は貴方の名前を知らないかもしれない。

飼っているペットは、私達の名前なんて覚えていなくて、人間という生物に過ぎないと思っているかもしれない。

いつか私達の名前は忘れられ、私達が存在したことも忘れられていくかもしれない。

だけど私達は名付けることができる。

何かを名付けることで、その何かを残すことができる。

貴方は何を名付けたい?



本題


ということで色々長々と書きましたが、これは全部適当なのでどうでも良いです。

上でも書いてた通りスパイスからカレー作ってたんですが、めんどくなって最近はカレーフレークを使ってます。

ということでおすすめのカレーレシピ(3人前)

☆横濱船来亭 BLACK 辛口 90g
・玉ねぎ 1.5玉
・鶏もも 2枚(300gくらい)
☆ケチャップ 大さじ1杯
☆ウスターソース 大さじ1杯
・水 150ml
・牛乳 200ml
・バター 30g


1.鍋にバター30gを引いて熱し、玉ねぎ(細切り)を茶色になるまで炒めたら鶏肉を投入。
2.鶏ももの表面にある程度火が入ったら水と牛乳を投入。アクを取りながら20分煮込む。
3.☆を投入してかき混ぜ、ある程度混ざったら10分間煮込む。

完成

美味しいのでぜひ❤️

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