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✳︎堕天使 ニース✳︎(16)

✳︎心が温かくなる堕天使と少年の物語です✳︎

16ページ✳︎

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黙りこんでじっと空を見ているティモシーが気になったニースは声をかけた。
「おい、ティモシー!気分でも悪いのか?」

慌て声のニースに肩を揺さぶられ、ハッとすると、心配そうに顔を覗き込むニースがいた。

「なっ!何でもねーよ!」と、
軽く答えたが、心配そうに声を掛けてくれたニースの言葉がとても心地よく、温かな物に包まれたそんな気分だった。

ニースの方は、強張った表情で黙りこんでいたティモシーの事は気になったが、その理由には触れず話を逸らした。

「なぁ、おいらはまだ地上の事を知らない、この辺の案内をしてくれないか?」

ティモシーはそう言われ、得意気に大きく羽を広げると、ふわりと羽ばたき
「着いてこいよ!」と、満面の笑みで高くまで飛び上がった。

急に飛び立ったティモシーを追う様に、慌ててニースも飛び立った。
さっきまでの緊張を忘れた様に、楽しそうに羽をなびかせて前を飛んでいるティモシーの後ろを追いながら、ニースは後ろめたさをを感じ自分が嫌な奴に思えてきた。

ティモシーは、自分といる今を楽しんでいる。
それが伝わってくる。
だが、自分は今を楽しむより、時間のないルイの為にティモシーと仲良くなって図書館の事を聞き出したいのだ。

悪魔図書館の事を聞き出すという事は…。

堕天使となり、一人ぽっちになったティモシーが、悪魔族とはいえ、頼りにしてきた仲間を裏切らせる事になる。
それに、もし見つかれば、自分だけではなく、ティモシーにも危険が及ぶかもしれない。

だが、一刻も早くルイを助ける方法を見つけたい、その為には悪魔図書館にどうしても入らなければ…

焦りと動揺の気持ちが交差し合いながら、
今は、ルイを助ける手段を探す事しか頭にない本心を持つ、後ろめたさを引きずりながら後をついて飛んだ。

どれくらい飛んだのか、下に広がる景色と風の香りが変わったのに気が付き、ニースはルイの事が気になってきた。

「ティモシー、そんなに遠い所なのか?」

「もう、すぐそこだ。どうせ、おいらは達は自由なんだし急ぐ事はないだろう」
ティモシーは、笑いながら振り返りニースに言った。

「そっ、そうだな。だけど、今日はルイが入院したばかりの日だから気になってな…」
「ふーん」

ティモシーはニースから目を逸らし、少し淋しそうに前を向いた。
「ほら、見えてきたぞ!あそこだ!」

ティモシーが指差す先に見えたのは、大きなレンガ造りの古い建物だった。
ツタが屋根の方まで這い上がり、人気のない古い建物…

(もしかして!)

ニースは弾む様な期待の声でティモシーに訊ねた。
「ティモシー!もしかして、あの建物は悪魔図書館か?」

ティモシーは目を丸くして即答で返した。
「ちっ、違うよ!お前を連れて行くなんて、そんな恐ろしい事出来る訳無いだろ!」
ティモシーの慌てて返した言葉に、「そうだよな、」と、ニースの表情と声は少し落ち、レンガの建物の方を見た。

その様子に、ティモシーは不機嫌に訊いた。
「図書館じゃなかったから、中に入る気が無くなったか?」

ハッとしたニースは、「そんなんじゃないよ、行こうぜティモシー」
と、今度はニースが先に飛び立ち、ティモシーが後を追いかけ、競い合う様に頑丈そうな扉をすり抜けて飛び込んだ。

(16ページ)
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✳︎ここまでお読み頂きありがとうございます✳︎
堕天使ニースは、2014年頃に執筆をしたものです^^。
noteで読みやすいように、少しづつ校正を加えながら、
アップしていこうと思っています。

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✳︎宜しくお願いします(*^^*)
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