桜の質量

大切な人の体が、病に侵された。
それは二十四歳になってすぐのことで、その病気の治療法なんて一つも見つからない。だって、特殊な病気すぎて前例が今までにないものだったのだから。私の恋人、楢橋朔也とはもう言葉では言い表せぬほどの縁で結ばれていた、ように感じる。朔也とは高校に入学してから出会った。四月九日。桜満開だけど少しだけまだ肌寒さが残る入学式。私は学校に行くまでに経由するとある公園の桜の木の下であの人の姿を見た。多分、このときから恋に落ちていた。我ながらだいぶ単純な人間だと思った。私は運命なんてまるで信じていないけれどこの時ばかりは地球上にいる全ての神様が私の味方をしているのではないかというくらい。彼は運命の人に違いない、だなんて思ったりもして。電流が流れたみたいに全身に熱い血液が駆け巡った。朔也は目鼻立ちがくっきりしていてかなりイケメンだったから、そのときはまさか朔也の想い人になれるなんて思ってもみなかった。朔也が告白してくれたあの日。あれは朔也と出会って初めての私の誕生日だった。今でも先ほどのことのように思い出せる。部活に励んでいく中で忙しいであろう夏休み真っ只中に会ってくれた上に期待なんてしていなかったプレゼントをもらったとき私はこれまでにないくらい舞い上がって嬉しくて泣きそうだった。
でも、プレゼントを渡すという目的を果たしたはずの朔也がいつまでも緊張した面持ちをしていて。
「おれ、…葉月が、好き。彼女になって、ほしいです」
柄にもなく震えた唇と手で。精一杯の気持ちを勇気を出して伝えてくれた。私は舞い上がって返事よりも先に朔也に抱きついた。お互いがお互いのことしか目に映さなかった夏の日。プレゼントで貰った時計は数年たった今でも身につけている。恋人にもらった初めてのプレゼントって他のどんなものよりも特別なものな気がする。未だにその時計を腕につけるとき、あの夏の日の朔也の汗ばんで赤く頬を染めた顔を思いだしては私を温かな気持ちにさせてくれる。月日は過ぎて卒業式。泣き声や笑い声、写真撮ろうだの第二ボタンほしいだの様々な声が飛び交う中、私と朔也は二人きりの教室の壁に背中を預けて身を寄せ合って教室を眺めていた。
「もう卒業とかあっという間だな」
目を細めて微笑む朔也の制服はブレザーどころか袖のボタンまでなくなり締まりのない姿を晒していた。顔が良い分、やっぱり予想通り非常にモテたのだ。
「よくあの場から逃げてこれたよね。ほかの女の子から殺気あふれた目でむしり取られてたじゃん」
「俺は女子の目より奥から見てた葉月の目のほうが怖かったわ」
「…見てないんだけど。嘘言わないでよ」
「はいはい、素直な葉月ちゃんはどこだろねえ」
頬を緩ませてクスクスと笑う朔也の声が耳に響く。その音がくすぐったくて、愛おしかった。朔也の肩に預けていた頭をあげて、どちらともなく目が合えばお互い、唇に触れるだけのキスを落とした。ゆっくり離れると水晶玉のように綺麗で澄んだ瞳が私だけを映していた。
「…第二ボタン、残せなくてごめんな」
「…ふん、別に、気にしてないけど」
「そうなの?俺は結構気にしてたんだけど。一生に一度しかないじゃんこういうイベント」
「…朔也がいればいつでもできるんじゃないの?」
そういって朔也の肩にまた頭を乗せると心地よい温度をした朔也の手が私の頭を撫でる。それもそうだな、と返す朔也の声がやけに優しくて。温もりを感じながら瞳をゆっくり閉じると唇に再度温もりを感じた。シュルシュルと布が擦れる音がして唇が離れたあとそっと目を開くと緑色のネクタイを緩めていた。
「…はい。ボタンの代わり。葉月が持ってて」
慣れた手つきで解いたそれを私のブレザーの上から二重にかける。
私の人生が朔也と出会った桜満開の日、桜色に照り映えるようになった。彼と過ごした高校三年間はいつまでもこの記憶に残り続けるに違いない。
「うん。楽しかったわ。この三年間葉月といれて超幸せだったよ」
「いつもはそんなこと言わないくせに」
「ふへへ。卒業式マジックってやつ?」
そう言って、朔也は笑ってみせた。
楽しかったなんて、幸せだったなんて、過去形で言わないで。高校生活というある種の檻の中で閉じ込められていた私たちが一気に自由になってしまえば、私と朔也のこの関係に今まで通りの名前を付けるのが困難になるのではないか。私はそれが怖くて仕方がなかった。自然と離れていくのか、私よりずっと可愛い人を見つけて姿を消していくのか。はたまた、あの笑顔でまた私を誘ってくれるのか。不安になった気持ちはどうやら目の前の朔也にも伝わっていたらしくて。
強張った頬を解すような手つきでむにゅ、と引っ張った。
「にゃにふんのほ」
「俺さ、たぶんこれから先も葉月がいないとだめかもしんない」
そう言って目の前の男は一旦目を逸らして深呼吸して見せた。
「だから、ずっとそばにいてくれませんか?」
一緒に暮らそうか、?そんな言葉に私が返した答えなどたった一つしか存在しない。

      ♢
その後、私は地面におでこを擦りつける気持ちでお母さんに交渉をしてみたのだけれど、金銭問題や向こうの親にも迷惑がかかるなどとんでもなく反対されたので同居することは断念したのだけれど。
不貞腐れながらそれを伝えたとき朔也は面白可笑しく笑いながらじゃあ大学卒業
してから暮らすしかないなって、そう言って笑った。私は正直驚いた。朔也には、私達が大学を卒業した四年後の未来まで見据えてあるなんて思っても見なかったのだ。そんな素直な気持ちがどうしようもなく嬉しかった。どんな言葉を伝えてもこの喜びには値しない気がした。
目の前にいる大切な存在にちゃんと自分の気持ちを伝えられていたら。この気持ちにも永遠に光を灯し続けていられたのだろうか。

   ◇
二十二歳。あれから四年たった今、私達は予告通り大学を卒業し、同棲たるものを始めた。一人暮らしをしていた私のアパートを引き払って二人で新しい家に越した。だけどお互い一人暮らしをしていた時期も暇な日や休日はほとんどどちらかの家に通っていたためもはや半同棲状態だったのだけれど。洗面所の色違いの歯ブラシ。キッチンを覗けばおそろいのマグカップ。この家にある全部がお揃いですべてが大切だった。積み重なったダンボールをある程度片付けたあと一休みしようと二人で食事の用意を始めた。
「マグカップ、もう長い間使ってるし、傷もめっちゃあるな。…そろそろ買い換えるか」
私は朔也のその言葉に焦った。思い出は捨てたくない、という私の変なこだわりが邪魔をして、どうしても買い換えることに乗り気になれなかった。
「…朔也の言う通りコップは買う」
「うん」
「だけど、それはとっとくから。だから捨てないでよ」
「…う、うん。わかった。捨てない」
あのときの私の気持ちは朔也に伝わっていたのだろうか。どうしても照れくさい、恥ずかしいという感情が日常的に勝っている私はなかなか素直になれなくて面倒くさい女だなと我ながら思わされる。私は自分が思っているより朔也に甘えているようだ。

二十四歳。六月九日。今週の家事担当である私は夕飯の支度をしながら朔也の帰りを待っていた。今日は朔也の好きなロールキャベツを作ってあげた。これが少しでも仲直りのきっかけになってほしくて。
というのも私達は昨日の夜ちょっとした喧嘩をした。ほんとにめちゃくちゃ些細なことで。私が前々から行きたいと朔也に話していたおしゃれなカフェがあった。今度一緒に行こうねなんて話をしていたのにあろうことか朔也は仕事先の人と足を踏み入れてしまったのだ。私は朔也と初めてを味わいたかったのに。
「誘われて断れなかったんだよ。わがまま言うな」
「っつ…。なんであんたは私の気持ち分かってくれないわけ!?」
「…それはっ」
「あんたにとっては小さな約束だったかも知れないけど、私はっ…」
そこからはもう売り言葉に買い言葉。気持ちなんてちゃんと言葉にしないと伝わらないのに。
実は朔也とのこんな風な喧嘩は年に数回起こる。結局翌日には必ず仲直りをしていたのだけれど。私が珍しく素直に謝ったり、朔也が私の好物を作ってくれたり。今回も仲直りするために彼の好物を作ってあげているのだ。
朔也のいつも帰ってくる時間に合わせて家事を進めてBGM代わりにとテレビをつけた。
『次のニュースをお伝えします。神奈川県のーー病院の研究においてマウスを用いて一定の期間に付き一歳ずつ若返るという実験を行っていた際、一般の患者様に使用されている注射器の一つに実験のための試薬品が混在していたことが判りました』
「うわあ、物騒だなあ…」
「若返る」という言葉の定義はなんだろうか。ただ単純に肌年齢や脳年齢が実年齢より若くなるということなのであればその注射を間違えて打たれた人はもはやラッキーなのでは?と思うくらいだ。というかこの病院ここからめっちゃ近い。朔也がよく行く病院だ。朔也は幼い頃から喘息に悩まされており、発作を抑える薬を投与するためによくこの病院を訪れていた。まさかこんな近くで恐ろしい事件があったなんて。他人事じゃないなあなんてぼんやり考える。
『今回、事の発端となったリジュベネーション薬とよばれているものは肌年齢などの
単純な若返りではありません。実験結果によると投薬されたマウスは日が経つにつれ体が小さくなり最終的には生命体ごと跡形もなく消えてなくなってしまったようです』
本当に現実で起こった話なのかと呆れた笑いをこぼしながらも少しばかりの恐怖を覚えた。そんなとき玄関からカチャカチャっと音が聞こえて直感的に朔也の帰りを察知した私は玄関まで飛んでいった。
「…葉月」
「朔也、おかえり」
「…あのっ、おれっ!」
「昨日はごめん!朔也のこと、考えずに自分の言いたいことだけ言って!」
「…」
「さ、くや…?」
「…俺もごめん、ちょっとだけ大人気なかったよな」
そう言って彼は私の頭を優しく撫でた。
「朔也の好きなロールキャベツ作ったから早く一緒に食べよ!」
「…うん!」
どこか安堵したように微笑む朔也は少しだけ私に対してなにか言いたげだった。まあ、仲直りをするときは決まってお互いどこかぎこちないから今回もそういうことだろう。朔也がリビングに荷物を置いて洗面所に手洗いうがいをしに行く。リビングに戻ってきたのがわかると私は準備ができるができるまで待っててと促した。
『徐々に幼くなっていくというのは体だけで精神面はそのままなんですかね?それじゃまるでどこかの名探偵じゃないですか』
ソファに腰を下ろした朔也が画面内のどこかを見つめているようだ。
『そればかりは実験体がマウスなのでなんとも言えません。今回誤って投薬されたのは他ならぬ人間なので今後の経過を見ていくしかありませんよね』
『その方に対してどのような処置がなされるのでしょうか』
『さあ?前例もないことですし、その作用を止めることのできる薬が開発されるのを待つくらいしかありませんねえ。こればかりはほんと不慮の事故としか言いようがありません』
朔也はやっぱりテレビ画面のもっと奥を見つめているかのような遠い目をしてそのニュースを見ていた。
「朔也、できたよ」
「おお!いい匂いする!めっちゃお腹すいたわあ!」
そう言いながらリビングからキッチンまで来たかと思ったら、急に後ろから暖かな温もりを感じた。
「これ、一緒に住んでる特権だろ?」
「…ばか」
       ♢
二人で向かい合って夕食を食べる。嬉しそうにおいしそうに私の作ったロールキャベツを頬張る朔也がニュースの流れるテレビ画面を見てその表情を曇らせたのは嫌でもわかってしまった。どうしてそんな顔をするのか、気になって仕方がない。
「ねえ」
「んぐぅ?」
「何かあったの?そんな顔して」
その瞬間ふっと眉を少し下げて笑った朔也にこれは確実に何かあったのだろうという確信が生まれた。さすがにバレるような嘘つかないで、と言い聞かせるように睨みつけると堪忍したように箸を置いて話し始めた。
「ん~、でも葉月信じてくれるかなあ」
「それはあんたの話を最後まで聞いて決める」
そんな私の言葉に朔也は軽く笑って、と思いきやすぐに真剣な面持ちを醸し出した。そんなに真面目な話なのだろうか。私も彼の話を聞くために箸をおいた。
なんとも言えない空気が流れる中テレビの音だけが静寂を凌いでいた。
『今回の事故によってリジュベネーション薬の開発は一旦中止となるようですね』
『そうなんですかあ。でも何かあってからじゃもう時すでに遅しなんですから。なんてったって細胞ひとつ残らずに消えてしまう可能性が高いわけですし』
―「この薬、打たれた人、可哀そうだよな」
「…そ、そうだね。…ていうか早く話してよ!」
「リジュベネーション薬、打たれたら若返るんだけど若返った分だけ記憶もなくしてしまうってな。…だから、どこかの誰かさんはいつしか桜の下で出会った人と恋に落ちたことも、卒業式にネクタイあげたことも、ロールキャベツで仲直りしたことも徐々に徐々に忘れていく」
「…っはあ?」
「その若返り方は人それぞれ。―俺の場合だと二か月に一歳。どんどん幼くなっていく。今日も自分が何歳なのか混乱した」
「…あんたさっきから何言ってんの?」
「…この薬、打たれたの俺だから」
「…」
「ほんと、笑えちゃうよなぁ」
「…何が笑えんの?」
「え…?」
「なにも面白くない!そんな冗談信じないから!」
私は息も絶え絶えに涙を堪えながらそう言った。
「…」
「なにか言ってよ!」
「異変に気付いたのはこの前料理したときにできた大量の切り傷がきれいさっぱりなくなってたこと。葉月が仕事で遅い日にサプライズで作ろうと思って包丁握ったら悉くケガしちゃったのになくなってたんだ」
確かに彼はついこの間、サプライズのために得意でない料理を無理にやって手に大量の絆創膏を貼っていたのにドヤ顔をしていた。
その惨状は私も覚えているけれどその日の夜ご飯は二人で笑いあって食べた私にとって忘れられない思い出の一つ。
「今日、仕事休んで病院に行ってたんだ。ちょうど二か月前に喘息の薬打ってもらうために病院行ってたから。それで検査してもらったら投薬されてたってわけ」
朔也は続けた。
「痛くも何ともないんだよ。ただ記憶がごちゃ混ぜになって記憶は二十四歳なのに体は二十三歳ってもう笑うしかないよな。だからさ、俺、こんな体じゃ葉月と一緒にいられないと思うんだ」
「…へっ?」
「葉月…別れようっ」
衝撃の事実とかけられた重い言葉が頭に重くのしかかってもう感情をどこにやったらいいのかわからなくなった。ペンキをひっくり返したみたいに頭の中が真っ白になって。気付けば机を激しく叩いて朔也の前に顔を出す。
「ふざけないでよ!なんで勝手にいなくなろうとしてるの?記憶なくしても小さくなってもあんたはあんたでしょっ?あんたはわたしのっっ」

私の、何?こんな時くらいちゃんと言葉にしなきゃ。なんて自分に腹が立つ。
ガタンと向かい側で椅子を引く音が鳴ったと思いきや突然暖かいものに包まれた。
「…ごめん。いまおれ、葉月が一番傷つくこと言ったよな」
「残念ながら言ってます…気づくの遅い」
「うん…ごめんね」

私を抱きしめる彼の腕は分かりやすく震えていて。
私よりも泣きたいのはもっと怖くて受け入れられない他でもない朔也だろうに私は泣くことしかできなかった。それなのに涙一つ流さずに慰めてくれる優しさにまた涙が溢れた。

    ◇
しばらく無言で抱きしめあっていた私達は冷めきった食べかけのロールキャベツを食べる気になんてなれず、二人身を寄せ合ってベットに横になっていた。
「まあまだ、俺も信じきれてないんだけどな。これからどんどん受け入れなきゃだよな」
「そんなことしなくていいから。あんたはずっと二十四歳のままよ。私と一緒に年取っていくの」
「ふはは。葉月らしいな。うん。とりあえず二ヶ月ごとに検診したいって言われてるからまた行ってくるわ」
「…そんなの許さないよ」
「えっ…?」
「行ったところでリジュベネーション薬の投薬をなかったことにできるわけじゃない。…認めたくないけどどうしようもないんでしょ?」
ある種のこの病気に治療法は存在していない。前例のないことなのだから。治療するわけでもないのに検診に呼び出すということは朔也の若返り方をみて今後の研究に利用しようとしていることは見え見えだ。誰もがまるで他人事のように薬と結果に興味津々で。私が命よりも大事な存在を失うかもしれないのに。そんなことを思うと医師とかどこか他人事のようだったニュースキャスターとかに対して腸が煮えくり返るような感情に苛まれる。
「俺さ、自分と同じ思いする人を増やしたくない。だから研究に利用されてようが検診にはいくよ」
「…」
「な?お願い」
「…わかった。そのかわり、余計なことされないかみるから私もついていくからね」
「…ん。ありがとな」
朔也が寄ってきてどちらからともなくハグをして。身長差のせいで私の顔は朔也の心臓辺りにくる。トクン、トクンっと規則正しい音が聞こえることにまだ朔也は生きていることを実感して幸せな気持ちになる。
でもいつかは…とそこで考えるのをやめた。
「葉月、おれさ、全力で抗うから」
「ったりまえでしょそんなこと…」
「このまま消えるなんていやだ。絶対なにがあっても抗うから」
「…消えるなんて許さないよ」
今日は病院に行っていたからまさかその薬を自分が打たれていたなんて知ったらパニックだっただろうし、精神的にも結構きたんじゃないだろうか。
横から規則正しい寝息が聞こえてくるとそのまま私も夢の世界へと落ちていったのであった。

   ◇
あれから二ヶ月。朔也はいろんなところに足を踏み入れるようになった。
家族、昔からの友人、恩師や親戚のもとを駆け巡って。自分の両親以外には「しばらく海外に行く」という理由で会えないことを報告したらしい。私も私で二人の生活を死守するために必死に働いた。朔也のご両親から息子が迷惑を掛けるから、と莫大な金額のお金を用意してもらっていた。何度も断ったのだが「息子のためにしてあげられることはしてやりたい」と言われ、すべてを受け入れた。
連日いろんな人のところを巡っては大量のプレゼントを抱えて帰ってくる朔也に改めて彼の人徳の厚さを実感する。
「みんなに会うとやっぱり寂しくなるよな…」
それを言って私の顔が歪んだのが分かったのかすぐに明るい顔に戻って
「でも忘れてしまったらまた思い出せばいいもんな!そしてまた新しい思い出つくればいいんだ!」
そう言って無理やり笑った朔也に近づいて正面から抱きしめた。
「あんたが忘れても全部全部私が覚えてる。何回だって思い出させてやるから」
「…うん」
そうしてしばらく抱きしめあっていたらいきなり朔也がなにかを思い出して立ち上がった。
「ちょっとここで待ってて!」
そんな事を言って自室に走っていった朔也の後ろ姿を見送って戻ってくるのを待つ。
しばらくして戻ってきた朔也は何やら袋に包まれた箱のようなものを持っていた。
「はづき!誕生日おめでとう!」
その言葉を聞いて私は開いた口がふさがらなかった。だって今日は八月八日。誕生日は十一日。まだあと三日もあるのだ。
「なんでわざわざ今日渡してきたの?」
「あ~、うん。明日でまた二ヶ月経つから…だから二十三歳の俺からプレゼントね」
「…!」
そう。明日で薬が投与されて四ヶ月。二十四歳だった朔也は二歳若返って二十二歳になる。まだ同棲を始めて間もない頃の年だ。
「いや、いやだっ…!あんたが私のこと忘れるなんて嫌だ!」
ああ。こんなときにも、朔也は絶対に弱音を吐かない。
明日になれば二十三歳の朔也はこの世からいなくなる。そんな事実にどうしようもなく涙が止まらない。静かに彼が抱きしめてくれるのに対して私はダムが決壊したように涙を流して。辛いのは朔也本人なはずなのに情けなくなる。
「絶対に私が覚えてるから。忘れてやんないよ、私の記憶力舐めちゃダメ。絶対」
「ふははっ、葉月俺が悪いことしたらすぐ根に持つもんなあ」
嬉しそうに笑った朔也の顔が本当に大好きで愛おしい。
「あ、そういえば早くプレゼントあけて開けてみてよ」
「なに買ったの…?」
「それは開けてからのお楽しみ!」
なんて言っていつの間にか後ろに回った朔也の腕が私のお腹に伸びて後ろに引き寄せられる。くすぐったい気持ちになりながらもガサガサと袋の中を取り出す。
「…これ、手紙…?
「うん、二十三歳の俺は葉月にどんな好きを伝えてたか、明日二十二歳の誕生日?迎える俺に教えてよ。あっでもこの最後一枚のピンク色の手紙は四年後に読んでね。絶対今読んじゃダメだよ」
四年後。二ヶ月で一歳若返る朔也は一年で六歳若くなる。本当なら二十四歳だから四年後はきっと…。
そこで考えるのをやめてまだ袋の中に取り残されていた包みを取りだした。
「…カメラ?」
「そう!すぐに現像できるやつなんだ。葉月よくスマホで俺の変な顔撮るだろ?」
「あんたが変な顔ばっかしてるからね」
「んふふ、ひどっ。とにかくたくさん撮って思い出作ろっか」
昨日の朔也も一年前の朔也もすべての朔也が好き。
お願い、まだ消えないで。消さないで。お願いだから、覚えていて。
   ◇
朝起きると朔也は案の定しっかり隣で寝ていた。
だけど「それ」は嫌でも分かってしまって。昨日の、朔也じゃない。一目見るだけで分かってしまった。毎日一緒にいるから些細なことも気がついてしまって。それがひどく辛くて嫌気がさす。
今の朔也は二十二歳。まだ同棲を始めて間もない頃だ。頬に手を伸ばすと、大丈夫。生きてる。彼はちゃんと、生きている。
記憶をなくしても生きてる。私の届く場所にいる。
見つめて数分。朔也もやっと目を覚ます。
まだ焦点の合っていない中目を擦りながら私を捉えた。そしてふにゃっと笑った。
「おはよお、はづきい」
広げられた朔也の腕に引き寄せられると私を腕の中に閉じ込めた朔也が私の髪に顔を埋める。
「起きたら葉月いるって幸せだ…やっぱ一緒に住み始めると幸せも増えるもんだよな」
ああ、もう朔也のばか。目の前の朔也は二十二歳。ここで泣いたら困らせること間違いなし。だめだだめだ。堪えないと。
大学生活を終えて一緒に住み始めてから間もないころの朔也。もう全部忘れちゃった?二年の間の誕生日プレゼントも愛し合った跡も。そんな考えが頭の中をぐるぐる回ってしんどくなる。でも、宣言通り、何があっても思い出させてやるって決めたから。
「さくや」
「…っ?」
「…今のあんたは、何歳?」
肩を強く掴んで問う。私の顔をじっくりと見つめていた朔也がポツリと呟いた。
「にじゅう、よんさいです…」
「はああああ〜〜〜」
よかった。あってる。ちゃんと、覚えてる。
「ごめん、葉月」
「もういい、思い出したんなら許す」
「ごめん、ほんとにごめん」
あと何回、私はこんな気持ちになるのだろう。いつ忘れられるのかもわからないのに私は隣で笑っていられるのだろうか。私を愛してくれない朔也をもう既に忘れてしまっている。ああ、私は本当に彼を好きなままでいいのだろうか。

月日は経って十二月八日。朔也は明日で二十歳になる。
四月九日に薬が投与された。
六月九日に二十三歳になった。
八月九日に二十二歳。
十月九日の二十一歳。起きてからしばらくは同じ屋根の下に私がいることに驚きを隠せていなかった。それもそのはず
、二十一歳のとき私達は同棲など、していなかったのだから。質問攻めをして一つ一つ丁寧に答えていたら不思議そうに私を見つめていた朔也の瞳に色が戻った。二ヶ月前と同じように今にも泣き出しそうな目で顔をくしゃくしゃにして抱きついてきた朔也に私もしがみついて離さなかった。
記憶がなくなった、という記憶があってもどんな記憶を失ったのかは思い出せなくなっていくらしい。もう既に朔也には二十四歳のときの記憶がほとんどなくなっていた。悔しそうに唇を噛んで泣くのを我慢している朔也を私は包みこむように抱きしめることしかできなかった。私はなんて役立たずなのだろうかとハナから自分を恨んでいった。
本当なら明日は朔也の『二十五歳』の誕生日。だけど明日で朔也は二十歳になる。不幸の中の奇跡と言ってはダメだけど、投与された日にちと誕生日の日にちが一緒。だから、誕生日を盛大に祝ってあげる。
「朔也、誕生日おめでとう、明日だね」
「明日…。うん。あした。二十歳の誕生日ってことになるんだよな」
「ちがう、あんたは明日で二十五歳になるの、忘れちゃ嫌だよ」
「ごめんごめん」
朔也は甘いものが嫌いだから、小さめのショートケーキ二人分。私は甘党だから主役じゃなくても食べちゃっていいでしょ?
部屋を真っ暗にして朔也のショートケーキに三本だけ蝋燭を灯し、その光が朔也の顔をぼんやり照らした。
「ありがとう、葉月。消してもいい?」
「たった三本だけど。ごめんね」
「ううん。めっちゃ嬉しいよ」
朔也は幼くなっていくにつれて小さなことでも幸せそうに笑うようになった。
ふわっと火が消えて電気をつけるとこれからはお楽しみのご賞味の時間。朔也はいちごを最後まで残すタイプだ。だけど私は一番に食べる。二十四歳の朔也に「誰も取んないよ」なんて笑いながら言われたことを思い出して顔が赤くなる。どうやらいちごの食べ順には生まれ順が関係しているらしい。朔也は弟がいて私は兄と姉がいる末っ子。要はいちごを弟妹から取るか兄姉から取られるかの違いだろう。だけど朔也は優しいから甘党の私にいちごを渡してくれるのだ。うん。なんて紳士。そんなことを思って朔也を見つめながらショートケーキを頬張った。
「…さくや」
「んぅ?」
カシャっ
すぐに現像して朔也の表情を見て二人で微笑む。
「ふふっ結構なあほ面してるね」
「不意打ちはずるくないか?」
「不意打ちじゃなかったらあんた決め顔ばっかじゃない!」
「ふふ。あぁ、今年も誕生日葉月と過ごせて俺は幸せな男だなあ」
「…来年も祝ってやるからね」
「来年は十四才…か…」
計算なんてすぐできないくせに。きっとずっと考えているのだろう。自分がいつ跡形もなくこの世から姿を消してしまうのか。
「二十六歳の誕生日も祝うから」
私は強引にそう言った。そうでもしないと泣きそうだったから。
「あ、私から朔也にプレゼントある」
「えっなになに?」
私は小さな箱を取り出して朔也に手渡しした。
「ゆ、びわ…?」
「そう、ペアリング。お高いものではないけど。それ見て思い出してよ。私のこと」
そう言うとすぐに朔也は私を腕の中に収めた。
いつかは私の名前も忘れてしまう日が来てしまうのだろうか。…大丈夫。彼なら、朔也ならきっと。私を忘れたりしない。

   ◇
朔也の誕生日パーティー(仮)から半年がたった今日六月八日。薬を投与されたと打ち明けられて一年がたった日。朔也は今日で十七歳になった。ちょうど、高校二年生のとき。文化祭とかテスト勉強とかなにをするにも一緒にいた。
目が覚めたときの第一声が「学校っ!遅刻するじゃん!…えっ葉月…?おれ、まじの平日に葉月とお泊り会したのかっ?」
「さくや、」
「はづき、なんか、雰囲気大人になったよな…体つきも良くなったし」
「体つきとかいう言い回しキモいからやめてくれない?」
「でも、なんで?はづき校則に違反して髪も染めるような人じゃなかったろ?」
「目を瞑ってみて。なにか思い出せない?」
「え…葉月何いってんの…」
だんだんと分かっていた。朔也が、どんどん記憶をなくしてきていること。思い出すまでにかかる時間が長くなって来ているということも。でも私は思い出すことを朔也のペースに任せていた。
「そんなことより!余裕かましてないで学校行かないと怒られるぞ!?」
「…今日学校ない。大丈夫。今日はおうちデートね」
「わ、わかった」
早く思い出してほしい。そう思うけど強要はしない。ちゃんと朔也なら思い出してくれるから。

そんな朔也が不意に焦りの表情を見せだした。ー私の左手の薬指を見て。
「…なんだこれ…なあ、これ、誰からのだよ!?」
「…おちついて」
「落ち着けるわけないだろ?黙ってないでなんとか言えよ!俺が部活に行ってるときに浮気でもしたのか!?」
「さくや、自分の指も見てよ」
「…あ、」
「わかった?」
「…ごめん、急に思い出した」
「この指輪は誰からの?」
「俺の誕生日に、葉月にもらった…ペアリングです」
「よろしい。満点です」
「俺、葉月に葉月のことで嫉妬してしまったんだな」
忘れてんじゃないよっと念を押しといた。
ごめんなっと頭を撫でられる。私は今八歳年下の男子高校生に頭を撫でられている。
すると不意に唇に温もりを感じた。そっと唇を離すとやっぱり出会ったころの朔也で。悲しいような懐かしいような複雑な気持ちになる。
「縮んだから葉月とちゅーしやすくなったわ」
「言葉に出さないで。照れるから」
私にしてはとても素直な発言だ。
「でも、嫌だなあ。縮んだからハグしても全身思うように包み込めないじゃん」
「はいはいそうですね」
「適当っ!!…てか俺、こんなガキだったんだなあ。ほんとに…悔しいわ」
どんなに抗っても彼は月を重ねるごとに幼くなっている。最近では目に顕著に映る形で。
「…ごめんな。辛い思いばっかさせて」
「思い出したんなら小さくなってもいいから…」
「…ちゃんと思い出すから、泣かないで」
泣いてないって強がろうとしても無理だった。もう気づかないうちに涙を流す能力を手に入れたみたいだ。

  ◇
十月八日。明日で朔也は十五歳になる。まだ、私と出会っていないときの朔也になる。もう朔也の身長は目に見えて縮んだ。顔も幼くなって指につけていたおそろいのリングはサイズが大きくなったためネックレスに通して首からかけている。
二ヶ月前の八月九日、朔也は十六歳になった。だがしかし、私を思い出すのに三日かかったのだ。明日になって私のことを知らない朔也になれば思い出すどころか忘れられてしまうのではないか?そんな不安が頭を駆け巡って離れない。
「はづきっ」
つい考え事をしていたらもうずっとおさない幼い顔立ちの朔也がいた。
「俺さ、明日でもう葉月のこと知らなくなるじゃん?でももしかしたら思い出せるかも知れない。でも時間がかかりすぎたり最悪の場合思い出せなかったりしたときは突き放していいからね」
「っ…は?」
「だって今の俺には十分に葉月を抱きしめることもできないし記憶もなくなっていくだけ!年の差もあまりにありすぎてカップルなのに外では姉弟と間違えられるし!そんなんで葉月は、幸せになんてなれないんだよ…」
語尾に行くにつれて弱っていった朔也の言葉。私はついに頭にきて。
「だれが…っ」
「え?」
「だれがいつ!幸せじゃないなんて言ったの!?」
「だってこの前思い出すのに三日かかっただろっ?もう、葉月も疲れただろ?こんな俺」
「だってだってってあんたはいつもそう!そうやって私の見えない場所で一人消えようとしてるんでしょ!?」
「そんなこと言ってないだろ!」
たしかに二ヶ月前の八月九日、彼は十六歳になって三日記憶を取り戻せなかった。
「はづきのっ、誕生日、祝えなかったじゃねえかっ」
「誕生日なんて祝ってもらわなくてもいい!」
どうせあんたと同じ年じゃないんだからって言葉が喉まで出てきて出せなかった。もうあのころの朔也はいないと自分で認めてしまったようで嫌だったから。
「誕生日祝えなかったことなんて気にしないで。私あんた以外の人と幸せになんてなれないよっ…私はねえ、あんたが二十歳になる前にプレゼントしたペアリングに誓ったの…」
ー死が二人を分かつまで、あなただけを愛すること。
「っ…葉月…」
「だからあんたは私の隣で全力で生きてて。ほんとにお願いだから。私から離れて人生諦めるとかほんと許さないから!」
「…っふ。ほんとにありがとな」
「なあ葉月」
「ん?なに?」
「あ~言うの恥ずかしいわ…」
「ダイジョブダイジョブ。笑わないから言ってごらん」
「…俺たち、世界で一番幸せな恋人だね」

  ◇
十月九日、朔也は十五歳になった。
目が覚めて隣を見るともぬけの殻。やっぱり知らないおばさんが隣に寝てるって思って出て行っちゃったのかな…。良くないことは考えれば考えるほど心が蝕まれていく。そうこう考えていると寝室のドアが開いた。
「はづきおはよう」
「へ…?なまえ、覚えてるの?」
「このメモ置き見たんだ」
『朝起きてお前の隣で寝てる人は葉月』
『お前の大事な人だ』
『何がなんでも思い出せ』
『絶対に彼女を泣かせるな』
十六歳の朔也の字で、十五歳の朔也へと戒めのメッセージがあった。朔也は朝からそれを見て前回より早く思い出したようだ。
「今回は早かったろ?俺も良かったよ、すぐ思い出せて」
流石に十五歳ともなると身長もかなり小さめだし声も高い。だけどそれは紛れもなく、朔也だ。楢橋朔也という人間だ。
「あんた、こんなメモで信じるの?」
「え?」
「誰かが書いたいたずら書きだったかもしれないのに」
「ん〜。でも、」
「?」
「朝起きて、知らない人いてビビったけど、見てたらどこかで懐かしい気持ちになったし絶対にこの人のこと知らないわけないって思ったんだ」
小さな腕で抱きしめてくれる朔也はいつもより暖かかった。
「ずっとそばにいるから、俺が葉月を幸せにするよ…」
「っつ…」
どんな姿になっても何歳になってもあなたは私を愛してくれたよね。存在理由を与えてくれたよね。
きっと私の気持ちはずっと変わらないよ。あなたがこの世から綺麗サッパリ消えてしまったとしても。
   ◇
「今日、散歩行きたい!」
あれからまた時が過ぎて四月八日。
朔也ももう十三歳で明日には十二歳になる。
「あんたほんと散歩するの好きよね」
「だってずっと家いたら俺も葉月ちゃんも腐ってしまうよ!桜も満開だし!」
そのきらきらした朔也の瞳にもう私の同級生の朔也の影はなかった。記憶も思い出すことはなくなって、二ヶ月経つたびにあのメモ書きを見てから微笑んでいつもの笑顔で「おはよお」なんて。「よくわかんないけど葉月ちゃんは大切な人だってメモに書いてあったからさ」と朔也が言うのを聞いたら彼は本当に私を忘れているのだと痛感させられてしまう。年が変わってもやっぱり朔也は朔也だ。だけどそれだけ不安もあった。
今の朔也は私を知らない。本当なら朔也は学校に行って友達とはしゃいで何気ない生活を送っていたのが記憶に新しいはずの子ども。いつ、この子の記憶からいなくなってもいいはずの人間なのだ。
私は勤めていた会社を辞めて自宅でできるような仕事をこなしていた。一秒でも長く一緒にいれば、朔也が思い出せるようになると思ったから。
「ん〜!春の空気ってきもちいね!」
いつも行く広場にたどり着いたあと大きく背伸びをして大きく息を吸う朔也と一緒に座る。桜の通り道が私達を囲んでいる。
ここは高校のときの帰り道でもあって、私と朔也が出会った場所でもある。
あの日の朔也は制服も着こなせていなくてぶかぶか。私よりずっと身長が高くて心地よい低音ボイスを奏でていた。
「大丈夫?体調でも悪い?」
「ううん。昔のあんたのこと考えてたよ」
ふと顔をあげると、ふっくらと頬を持った少年の顔があって。
私のその言葉を聞くなり穏やかな表情になってそっか、なんて呟いた。
「ここの桜が咲くの、なんだかずっと前から楽しみにしてる気がしたんだ」
「…えっ?」
「…葉月っ」
今たしかに、彼は私を呼び捨てで読んだ。あの頃の朔也とおんなじように。
「あぁっ…思い出したの…?」
「まだなんとなく曖昧だけどな…なんならクイズでもする?」
「…じゃあ、あんたのその首に下がってるネックレスに通したリングはなに?」
「これは二十歳になるときに葉月がくれたおそろいのやつ。小さくなるにつれてぶかぶかになったからネックレスにかけてる」
「じゃあ、ここはどこ?」
「俺と、葉月が最初に出会った場所…」
あああっ、よかった、ちゃんと覚えてる。
「俺はずっとずっと、生きてるよ。俺が消えてしまっても葉月が覚えていてくれたら葉月の中で永遠に生き続けるから」
葉月が覚えていてくれたら、生まれ変わっても好きになるよ、だなんて呟きが聞こえた。
    ◇
そんな出来事からあっという間に一年が経って朔也はもう六歳になろうとしていた。今の朔也はもうわたしのことなんて覚えていなくて、この小さな少年に私たちは恋人同士ですなんて言っても困るだけだろうから、叔母ってことにしてなんとか一緒に住む口実を作っている。薬を投与されて明日で三年。私は心に決めていたことがあった。朔也が六歳になったら朔也の両親のもとへ帰してあげようということ。明日になれば朔也は小学校にも満たない子どもになる。
零時を回ったらすぐに朔也の実家を訪れた。心地よさそうに眠る朔也の顔を見ると手にグッと力がこもる。
「朔也も、今日で六歳になりました。ここから先は恋人として横にいた私ではなく、ご両親のもとで過ごしたほうが、きっと彼も安心すると思います」
「…葉月ちゃん…」
ゆっくりと、起こさないように朔也の小さな体をお母さんに預けた。
「…っ…さくや…」
彼を見て涙をこらえるお母さんを私は静かに眺めていた。
「葉月ちゃんも、こっちに住まない?」
「え…?」
「朔也も、そっちのほうが喜ぶと思うの」
「…いえ。もう十分な時間、私は朔也と一緒に過ごしましたから」
「…でも…」
納得してなさそうなお母さんに私は言った。
「…一日だけ会わせてもらう…とか、遠くから様子見せてもらうとかならお願いしたいです」
「っうん。もちろんよ。いつでも会ってやって。朔也はこう見えて、寂しがり屋だから…」

  ◇
そのまましばらくした後、朔也の家を出た。なんとなくタクシーも呼ばずに夜の寒い道を一人で歩く。高校生のときからこの道を朔也と二人で歩いていたから大人になった今もちゃんと覚えてる。ここは桜の道。ここで出会って、ここを通って帰って。でももう朔也の姿は隣にはない。
ずっとずっと春が好きだった。桜が大好きだった。あなたと出会った季節だから。
思い出すだけでドキドキするから。
ああ、春ってこんなに寒かったんだな。桜という花びらはそこにあるのにまるで重さを感じられない。朔也といないと桜に質量も感じられないみたいだ。

   ◇
朔也は二ヶ月に一歳、年と記憶が若返る。
それももう終わりを迎えようとしている。
私は朔也が家からいなくなってすぐに犬を飼った。名前はサクラ。彼と似た名前だし、桜が好きだから。
「ねえサク」
「くうん?」
「お散歩、行こっか」
散歩、という単語を出すと嬉しそうに、キャン!と飛び回る。単純なことでも喜ぶことを欠かさない性格が朔也そのもので運命なんじゃないかって思うくらい。
玄関まで走って離れないようにリードをつけて一緒に家を出る。
サクラはあの桜の道をまっすぐ歩くのが好きだ。嬉しそうにこの道ではしゃぐ。そんな姿も彼そっくりで。あったかい。柔らかい。しばらく歩いていると向かい側から小さな子どもを連れた家族がやってきた。
「わんわんだぁ」
そう言って近づいてきた男の子は母親とサクラを交互に見てそう呟く。
「触っていいよ」
「いいの?」
「大丈夫。噛まないよ」
ゆっくりしゃがんで男の子と同じ身長になってからそう言うと男の子もゆっくり近づいてくる。サクラを驚かせないためか、ゆっくり慎重に手を伸ばす。男の子の手がふ触れるとサクラも嬉しそうに尻尾を振って撫でられている。
「ふふふ、かわいいね!おねえさん、わんわんのおなまえなあに?」
「サクラ、だよ。サクラ」
「ふふ、ぼくもねままからさくってよばれるの!いっしょだねえ」
サクラにそう伝える男の子の瞳はずっと前から変わっていなくて。
「サクも嬉しがってるよ」
「んへへ、うれしいねえ」
「…ボクは今、何歳かな…?」
「さくや?さくやね、さんしゃい!」
その年齢に目を見開く。まだ、まだその日ではない。まだ、十月九日じゃないのに。その日までまだ二週間もあるのに。驚いて母親の方を見ると悲しそうに微笑んだ。そう。間違いなく朔也が小さくなる時間が早まっているのだ。
「おねえさん、どうしたの?」
「え…?」
ずっとサクラを撫でていた男の子が私を見て心配そうに首を傾げる。なんのことかわからぬまま男の子がサクラから離れてゆっくり近づいてくる。暖かくて柔らかい手が頬に触れた。
「どっかいたいの…?」
どうやら私は泣いていたらしい。子ども特有の少し雑な手つきで目を擦られる。でもそれが嬉しくてまた涙が溢れる。
「ぼくねっ、いたいのなくなるおまじないね、しってぅの!」
「…っ、おまじない……?」
「ぅんっ、あのね、いたいのいたいのとんでけー!ってね、かみさまにいうの!そしたら、いたいのなくなぅの!」


得意げに笑う男の子が、愛おしくて。
ふ、と柔らかく微笑むと、驚いた顔をした男の子も、微笑み返してくれた。


「どこいたい?」
「んーん、痛くないよ」
「……ほんと?」
「うん、ありがとう。さっきので飛んでったよ」


そう言うと、嬉しそうに笑う。


「よかったぁ」


にぱっと笑う男の子に、私は手を伸ばしてぎゅうっと思わず抱きしめた。
あったかい。柔らかい。


「ぅ、おねぇしゃ…?」
「……はづき」
「ぅ?」
「はづきって、呼んでほしい」
一度だけ、最後にもう一度だけ。あなたからもう一度。名前を呼んでほしかった。
「はじゅきっはじゅき、いたいのいたいのとんでいけえ」
必死に私の腕の中で私の名前を呼ぶ朔也。小さな手で私の頭をぎこちなく撫でてくれた。髪も顔もめちゃくちゃだったけどそれだけ嬉しくて、それ以上に寂しくて。
「…ボク、ありがとね。っ元気になったよ」
「もういたくない?」
「うん。もう元気いっぱいだよ。ありがとね」
するとずっとそばで待っていたサクラが待ちくたびれたのかリードをくいくいと引いた。
「そろそろばいばいしなきゃだね」
「うぅ…またあえう?」
「うん…きっとまた会えるよ」
優しく微笑んで別れを告げると、男の子はまたしゃがんでサクラをなでる。
「ばあいばぃ、またねサクちゃん」
撫でたあとにお母さんの元へ向かうとお母さんの手を握って片方の手で私に手を振ってきた。
「はじゅきちゃんも、ばいばい!」
「うん、ばいばい」
私が見えなくなるまで何回も振り返って手を振ってくれる朔也に私も永遠に手を振り続けた。やがて消えていった朔也を眺めながらゆっくりと手を下ろした。
「…ばいばい朔也」
どうか最期まで。いっぱい愛されて笑顔のままで。わんわんと吠えるサクラを見て小さく微笑んだ。
「うん、サクラも忘れちゃダメだよ」
彼の匂いも柔らかい手も全部一緒に覚えていよう。

  ◇
それからあっという間に時が経って、四月九日に朔也はその姿を消した。急激に彼の体は急かすように小さくなっていった。私は朔也がいなくなる予定日の付近三日間、私はペット可能のホテルを取って家には帰らなかった。あの家には朔也が生活していた跡がたくさんある。匂い、家具、服も全部全部。朔也を感じてしまうものばかり。あのときは幸せだったけど、今はただただ苦痛でしかない。彼がいなくなるその日に家にいることが辛くてできなかった。


ガチャ、と玄関の扉を開けて、サクラを小さなゲージから家に出させる。
走り回るサクラに落ち着いて、なんて笑いながら、手を洗う。
朝にチェックアウトしたため、今はまだ昼過ぎだ。
サクラにご飯をあげた後、何か作るために台所へ向かったが、何かを食べる気にもなれなかった。

ここで食べなかったら、アイツに怒られるんだろうな。
ちゃんと食べないとって、言われちゃうかな。


言ってほしいよ。
怒って欲しいよ、朔也。



ホテルで3泊したが、その3日間は全く寝れなかった。
寝ようと思っても、頭の中に朔也が浮かんで。
泣いて、考えて、泣いての繰り返しで。
顔もボロボロだし、こんなんで外なんか出たらきっと幽霊扱いされる。

一回寝ようと寝室に向かうと、ふわ、と朔也の香り。
クローゼットの中にある服は、何一つ朔也の元に返すことができなかった。
あの時、朔也のお母さんに約束したのに。
結局、何もかも手放せないままで。

すると、床に一着、落ちていた朔也の服があった。
どうしてだろうと近寄ると、中からサクラの姿が。


「あっ、こらサクラ。だめでしょ」


サクラは、朔也の匂いが好きだ。
特にあの時、小さな朔也に頭を撫でてもらったあとからは、私の目を盗んで朔也の服の上で寝ている時だってある。
屈んで服を取ろうとすると、かたんと何かにぶつかった。

振り向くと、机の下に入れてあるローラー付きの引き出し。
ここの机で、毎日朔也は一日に何があったかを書き留めていた。
その姿ですら、昨日のことのように思い出せる。



___そういえば。



『ピンク色の手紙は四年後に読んでね。絶対今読んじゃダメだよ』


私の誕生日の時、カメラと一緒に貰った手紙の中で、唯一見せてくれなかった手紙。
朔也はここの、2番目の引き出しに入れていた。
正直、見たくなかった。その手紙を見てしまえば朔也がいなくなったって認めてしまうことになるから。
悩んだ末、結局放っておいても気になって寝れないだろうと考え二番目の引き出しを開けることにした。心臓が高鳴る音が聞こえる。一回深呼吸をして引き出しを開けるとそこに入っていたのはあの日にもらった淡いピンク色の封筒だった。
手が、震える。
落ち着くためにもう一回深呼吸をしてゆっくりと封筒を開く。こんなに緊張したのはいつぶりだろう。中を見てみるとそこには一枚の手紙と鍵だった。
「…なに?この鍵」
朔也のくせに粋なことしてくれるねなんて思ったりもして。ゆっくりと震える手で手紙を開いた。
___葉月へ。
朔也の字だ。目頭が急に熱くなって慌てて目に力を込める。
___今泣くの堪えただろ笑
あんた、私のこと監視でもしてんの?
____葉月が実は泣き虫なこと、一番近くで見てきた俺だからちゃんとわかります。だけどそんなあなたの涙を隣で拭えないことを許してほしいです。葉月がこの手紙を見てるってことはもう俺がこの世から消えてるってことだと思います。四年後だから、二十八歳?信じられないよなあ笑
朔也の年齢しか頭になかったから自分が今何歳なのかすっかり抜け落ちていた。もう二十八歳なんて信じられないな、確かに。
_____この四年間、俺は自分の見えていないところでまで数え切れないくらい葉月を泣かせたんだと思う。葉月は俺の後を追おうとしているかも知れないけど。俺はまだ葉月の中で生きていたいからそんなこと考えるのはやめてね。
_____葉月はこの四年どうだった?いっぱい辛い思いさせてごめんな。辛いことだけじゃなかったって思っててほしいけど笑
あっという間だったよ。思い出も増えて、あんたのこともっと好きになった。
____やばい、葉月のこと笑ってられないくらい泣けてきた
この四年、彼は絶対に私の前で涙を流さなかった。だけど手紙は涙が滲みすぎていて。どんだけ泣いたのって感じ。
____俺、葉月と出会えて幸せだったよ
『あ……!えっと、同じ高校の制服、だよな?』
『……!』
ひと目で恋に落ちたアイツと目が合っただけでびっくりしたのに、急に話しかけられて私は心臓が止まりそうになったんだ。
『よかったら一緒に行かない…?道どこかわからなくなって』
『……ん。いいよ』
『ほんと!!?よかったぁ〜!俺5分くらいここで誰か通らないかなって待ってたんだけど、誰も同じ制服の人来なくて焦ってたんだよ』
『…来なかったらどうしてたの』
『……え、言われてみればそうだわ』
___ほんとはあのとき、葉月以外にも同じ高校の人いたって分かってた。たぶん一目惚れってやつだよな。俺、葉月が運命の人だって直感からそう言われた。一瞬見ただけで仲良くなりたいって思った。
ふふ、あんたも結局一緒なんだね。
___なんか恥ずかしくなってきたからあとは
もう一つの方に書きますね。鍵は一個上の引き出しのやつね。またね。葉月。_
手紙はここで終わっていた。もう涙で前が見えないくらい泣いて、朔也の涙と私の涙まで重なってもう文字が消えかかっていた。鍵を一個手にとって引き出しに差す。かちゃっと回って引き出しが開いた。その中には一つの小さな箱と四つ折りの紙。
ああ、もう。箱の形でなにか分かってしまいそうだった。
___葉月へ。
俺がいなくなったら葉月には自由になってほしい。素敵な人と恋に落ちて結婚して子どもが生まれて。あなたの幸せだけを俺は願っています。葉月が幸せになれたらもう俺は記憶の中ですら生きていけないけど、あなたが幸せなら俺も幸せです。どうか俺以外の人と幸せに。…なんてそんなの全部嘘。一生俺に縛られててほしい。俺以外を愛さないでほしい。俺以外に愛されないでほしい。俺だけをずっと想って、俺だけを愛してほしい。
___この箱の、中身に誓って。
「……っ……ぅ、ぁぁ…………っ」


箱の中身は、指輪だった。


ふざけないでよ。
最後に、こんなもの渡してこないでよ。

もう、離れさせる気ないじゃん。ばか。



__愛してる、葉月。



「……っ、わたしも……っぅ、わたしも……っあいしてる……っ……!!」



ありがとうとさようなら。それから愛してる。今なら言えるよ。

『次のニュースをお伝えします』
聞き覚えのあるニュースキャスターの声にピクリと耳を傾けた。あの日と同じ番組だった。
『神奈川県〇〇病院の研究によって行われていた研究で、ある程度の期間が経てば若返る、という薬が誤って一般の患者様に投与されたという事件から四年。新たな事実が判明しました』
その一言に下げきっていた顔を一気に上げる。
『最初に実験で使われたマウスが一旦は消えていなくなったのですが、先日、年月分年を取った状態で発見されたことがわかりました』
「…っえ?」
『DNA検査をしてみた結果、完全に一致したようです』
____ということはつまり?
そこまで聞いてサクラを連れて玄関を飛び出した。
「サクラ!散歩行くよ!」

「っは、はぁっ、はぁっ」


朔也の家、学校、病院。
どこを訪れても、朔也の姿はなかった。
一緒に走っていたサクラも、すでに疲れているようで座ったまま歩こうとしない。


さっきのニュースは、夢だったのかな。


そうだよね。

そんな奇跡、起こるはずがないのに。



「……帰ろっか、サクラ」


このままでは、サクラの方が心配だ。
しゃがんでサクラの体を撫でながらそう言うと、くんくんと鼻を動かしたサクラが、わんっわんっと大きく吠えながら、私の体を横切って走っていく。


「っえ、ねえ!サクラ!!!」


いきなりどうしたんだ。
もう足も疲れた。そろそろ私も限界だ。
ご飯もろくに食べてないし、睡眠も十分に取れていない。
どうしたらあんなに走れるんだよ、あの子本当にすごい。

足がもつれながら駆け足で追いかけていると、いつもの散歩コースの桜の道だった。
サクラを探していると、目の前でしっぽを振りながら一人の男に頭を撫でてもらっているサクラが居た。
「…あんなとこに………って…」
ピタリと足が止まる。動けない。息ができない。だって、だって嘘だ。じわ、と視界が滲んで何も見えない。



わんっ

サクラが私に向かって吠えたのがわかる。
すると、男の人がゆっくりと私を捉えて。


目が、あった。



初めて出会った時と、同じだ。





「……葉月…………!!!」



その声に、迷いもせずに私は一直線に走り出した。
足が痛い。崩れて倒れそう。

でも、そんなのどうでもよかった。

あっちからも走ってくるのが分かって、その隣でサクラが嬉しそうに一緒に走ってくる。


足に力が入らなくて、地面にひっかかってがくんと倒れそうになる。
必死に伸ばした手を掴まれて、身体を抱き寄せられた。



「……っぅ、ぁああ……っ……」


あったかい。

4年間の中で、いちばん。




”会いたかった”




そう言って、ぎゅう、と抱きしめてくれる力が懐かしくて。
必死に、消えないように。


もう二度と、離さないと誓って。


強く強く、抱き締め返した。






四月九日に、貴方と出会って。


貴方と、たくさんの時を過ごした。

もう二度と、同じ後悔しないように。



「…ただいま、葉月」


私の涙を両手で優しく拭う朔也の手が、私よりもはるかに大きくて、ゴツゴツしてて
私を見つめる朔也の瞳が、あの頃と同じ色で。

そんな朔也に、ふわりと微笑み返した。





「おかえり、朔也」


初めて出会ったときと同じように、あの桜の下でまた、二人はもう一度出会った。
はらり、と桜の花びらが方に落ちたのを感じた。やっぱりあなたといるときの桜は暖かくてしっかり重い。桜の質量は、あなたの存在を示す、羅針盤なのかもしれない。

___病めるときも、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、お互いを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、死が二人を分かつまで真心を尽くすことを誓って。二人はお互いの体温を確かめ合うように唇を重ねた。


あとがき

読了お疲れさまでした。長々としたこの小説を読んでくれてありがとうございます。読者さん愛してます。ちんたら書いてしまって申し訳ありませんでした。
本当は朔也くんが一歳若返るごとに書ければ良かったんでしょうけど私にはそれほどの忍耐力と才能がありませんでした。お許しください。
私が一番気になっていた「ショートケーキのいちご問題」のことについて言及したいと思います。これはこの前なんかTwitterかなにかで見つけました。生まれ順が下になればなるほどいちごを早い段階で食べるそうです。私は三人きょうだいの一人目なのですが記憶をさかのぼっても苺を弟妹から取ったとか、そんなことはなかったように感じます。弟は苺が嫌いらしいので自動的に回ってきます。妹とはかなりの年の差があるので私が一つ大人になって譲るのです。うん。なんて平和な家。そんな説は関係ないだろうと考えこんでいた矢先、この前末っ子の友達が苺をしっかり最初に苺食べてました。これに関してはほんと人によりけりなんですね。皆さんはいつ食べますか?
私は「末っ子」というポジションにこの上ない憧れを抱いていますので私からいちごを取りたい方はぜひとも私の姉兄になってください。
さてこの辺で小説について触れときます。この後、結局二人はどうなるのか気にしてくれる方も数名いらっしゃると思いますが、なんせこれは引退作(になる予定)なのでこれで終わりです。いないと思いますがこれの続きを楽しみにしてくれてた方はごめんなさい。
まあ私としてはこのあと二人は結婚して幸せな人生を歩みます。いや、歩ませます。断っておきますがこの小説は理想像でも実体験でもなくただ単に恋人同士の二人を客観視しただけの作品です。数学の授業中、一般項が負である等差数列の問題を見ていたら思いつきました。私にはこんな糖度の高い恋愛はできません。でも
案外当事者になったらできちゃったりするもんなんですね笑
でも糖度の高い恋愛はできないけど、結婚式の誓いの言葉はめっちゃ好きです。
この言葉を誓えるくらい愛せる人のところにお嫁に行けたらとても幸せです。

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