愚かな王と化け物


軍隊っぽいお話です。


かたん、という音で目が覚める。
とはいえ、自分は荒事に関わり、生きている人間。わざとらしく気配を放つ何者かに、警戒をしながらベッドサイドテーブルの通信機へと手を伸ばす。
しかし、次に聞こえてきたのは、がたん、という先程よりも大きな音と、真っ黒な姿のナニカが自分の部屋の真ん中に降り立つ所だった。

誰だ!?侵入者か!?見張りは、何をしているのだ??

困惑し、必死に頭を回すが、寝起き故になかなか回らない。
兎も角、誰かに侵入者について、伝えなければ。
そう考え直し、改めて通信機にゆっくりと手を伸ばす。が。
触れる直前に思い出す。
その通信機は、故障中だったのだ。
今日ぶつけて壊し、明日修理してもらおうと考えていた所だった。
迂闊だった。ボタンを押しても何も反応を返さない事は、ぶつけた時に確認したはずなのに。
無駄な行動で黒い影の接近を許してしまった事に、舌打ちが出そうになるが、心の中で悪態を付くことでどうにか抑え込む。
仕方がない、もうこうなったらどうにでもなれ、と自暴自棄になり、上半身を起こす。普段では考えられない行動だ。

いつもなら、誰かがすぐに飛んでくるから。

イライラとする頭が色々な愚痴を飛ばす。

何故私がこんな目に合わねばならぬのか。
アイツラは何をしている?
私が何をしたと言うんだ!?

しかし、その考えはまっすぐと影を見たことにより、消え、恐怖が勝る。
わなわなと震える唇と、漏れ出そうになる悲鳴を、口を抑えることで押し殺す。

目の前の影は、ゆらり、ゆらりと揺れる。
手に持っているシルエットから、武器はナイフ。しかし、何故だろうか。

勝てる気がしないのだ。

確かに、こちらは武器がない状態、という事も関係している。
しかし、それよりも。
目の前の影に攻撃をしようとしても、勝てない。
根拠はない。だが、自分のこの恐怖心がそう訴える。

アレは化け物だ!
アレに逆らってはいけない!
アレに殺される!
アレは人間じゃない!

「おや、」

そこで、誰かの声が耳に届く。
男性特有の低い声。
しかし、愉悦が混じっているのか、少し高めだ。

「私が、」

影がニヤリと笑う。口元がグニャリと歪むのが見えた。
それに、ベッドの上にも関わらず、後退りをしようとして、壁にぶつかる。
駄目だ。駄目だ!アレから逃げないと!化け物から…

「バケモノ、だってぇ?」

語尾をわざとらしく間延びさせながら、影が腕を振るう。
それに合わせて、影の持っていたナイフがまっすぐとこちらに飛んできて、私の顔の横に突き刺さる。

「っ、」

その事に声が出せないでいると、影はケラケラと、場違いなほどに楽しそうに笑う。
否、楽しいのだ。
影は、化け物は、私を嬲るのが、私の怯えた表情が。

理解しても、もう遅い。理解しても、どうにもならない。

「…つまらないな」
「これだったら訓練用のカカシに剣振り回したほうが楽しい」

突然、冷めた口調で、先程よりも低い声が聞こえる。

「というわけだ」

さよなら!
口元の歪む男の影を最後に、私の意識は、命は消えた。


「仕事、終わったぞ」

「ん?おう、一切問題ない」

「ああ、流石の手腕だ、お前に任せてよかった」

「うむ、今から帰る」








軍人さん的なお話が好きなので、こういうネタが割と浮かんでますが、文章に起こすのは苦手です。
コレから分かる通り、途中から背景文を書くの飽きてます。
ネタは湧くんですがねぇ…
書けなくなったら適当にネタまとめてきな感じで出すかもしれません。

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