ホラー小説のようなもの

ホラーと言っておきながら全然怖くないです。
途中から間空きすぎてダルくなるかもしれないです。申し訳ない。



ぴちゃん、と後ろから水音のようなものがする。
自分が居る場所は水が滴るような場所ではなく、ただの自室の中なのだが。
謎の音と一人きりの状態に、背筋がゾクリとするが、いやいやと首を振り、
どうせなにもないだろうと後ろを振り向く。

すると。

「…え?」

自分の声が震えるのがわかる。

びっしょりと濡れた黒い髪と何も写していない黒い瞳。
自室で、誰も居ないはずの空間で、長い黒髪の女が、後ろに…?

「ひぃっ…な、なんだ…!?」

必死に後ろに下がり、ソレから距離を取ろうとするが、後ろはテーブル。
逃げ場は、無い。

「ひぃ、や、やめてくれ!俺が何したっていうんだ!!」

腕で顔を隠し、ソレを見ないように防御する。
ソレは、何かを唸り、呟き、息を吸い込む音がする。

『タ…スケ…テ』

男とも女とも分からない声が、しかしはっきりと耳に届く。

今、こいつは、助けて、と言わなかったか?
もしかしたら、俺に危害を与える、という訳ではなく、

「助けてほしい、だけなのか…?」

困惑しながらも、ゆっくりと腕をどける。
目の前には、依然髪の長い女。
だが、先程感じていた恐怖も薄れていた。
ただ、何かを助けてほしくて、俺の前に現れたのなら。

「お、俺に何か出来るか…?」

少し、おどおどとしながらも、声を掛ける。
自分にできることなら、と。

『タス…ケテクレ…ル…ノ…?』

女は、ゆっくりと、しかしはっきりとそう声を出す。
それに、俺はゆっくりと頷く。
しかし、「俺に出来ることなら」と言おうとした途端、

『ジャア、アナタノ"カラダ"チョウダイ!!!!!』

女は嬉しそうに笑い、髪を広げ、両手を広げ、俺に覆いかぶさってくる。


ぐちょ、ぬちょ、とどんどん女の体から滴ってきた水が自分の体に纏わり付いてくる。

否、それは水ではない。泥のようなものだ。しかし、泥よりも真っ黒で真っ暗。
どんどんとその粘着質のある液体にカラダを飲み込まれていく。

「あアっ!!!た、たすけっ!!」
『アナタノカラダ、モラウネ』
「いやダ!ヤめろぉっ!!」

話しながらも、ソレに飲み込まれていくのがわかる。

だんだん飲まれていく。

だんだン

だんダン

ダんダン

キエテイク。








『ありがとう、これで私は人間として生きられるわ!!』











がちゃり、と扉を開く。
息子のいる部屋から、何かの音が聞こえた気がしたのだ。
…それと、嫌な予感。
何かが失われたような、感覚。

「ちょっと、大丈夫?」
「なにが?」

部屋を覗くと、机に向かう見知った姿。
その姿にホッとしながら、ふと、違和感を感じる。










「…あら?あなた、なんでそんなに濡れてるの?」


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