WiFi6(E)で知っておけば簡単に速度と安定度が上がる知識
WiFi6で速度を速くするためのキーワードをまとめてみました。
■はじめに
WiFi6の魅力はなんといっても繋がりやすさと有線LANと変わらない速度にあります。(2402と書かれているアクセスポイントで実測ほぼ1Gbps出ます!)
WiFi6はこれまでのWiFiと互換性があり今までの機器も基本的にはそのまま使えます。
しかし、売られている製品をみるとWiFi特有の用語も多く何が性能に影響しているのかわかりにくい印象を受けるのでそれを解説したいと思います。
なお、国内で売っている技適の通った無線アクセスポイントは電波法で決まった無線の強さが仕様統一されていて、最大値に設定されているのでどれを選んでも無線の強さは変わりません。
■アンテナ数が多いと速い
アンテナの表記は2x2や4x4といった表記がされます。
2.4Gと5Gで別々です。
MIMOと呼ばれる技術でアンテナの数だけ同時に通信できるので速度が上がります。
MIMOは複数の端末で同時に通信することはできないので同時接続台数が増えると待ち時間が増え速度が落ちます。
そこで同時通信効率を上げるMU-MIMOと呼ばれる技術もありこちらは帯域を共有して複数端末と同時に通信ができるので同時接続台数が増えても速度低下が起きにくくなります。
しかし、機器が対応している必要があるのとMU-MIMOを使うとアンテナが一本制御用に取られてしまいアンテナの数が一個へるので対応機器がない場合はオフにする選択肢もあります。(WiFi5以前の端末が多い場合)
■5GHz帯を使う
無線には2.4GHz帯と5GHz帯があります。
2.4GHz帯はどのデバイスでも基本的には使えます。
しかし電子レンジやBLUETOOTH、他の無線アクセスポイントなどによって干渉しやすい欠点があり通信品質が劣化して速度が落ちやすい。
通信速度の上限も高くはありません。なので速度が重要でないスマートスピーカーや各種センサー、カメラなど設置場所の融通がきかない機器に使うのが良いと思います。
パソコン、スマホやスマートテレビなど大容量通信を扱う場合は5GHzにするのが最適です。
5GHz帯は高速に通信できますがいくつか特徴があります。
5GHz帯は遮蔽物によって電波が弱くなりやすいですがそこはデメリットであると同時にメリットになっていて電波干渉を受けにくいです。
メッシュ機能や中継機能でカバーできます。(部屋の壁一枚くらいならそれほど減衰しない)
アクセスポイントによっては2.4GHzと5GHzを同じSSIDに見せる機能(バンドステアリング)があったりしますが特性が違うので基本的には分けたほうが良いでしょう。
分けずに利用していた場合で速度が遅い場合は2.4GHzでつながっていた場合も多いと思います。
それに端末が対応していないと通信が不安定になったりもします。新しく買ったWiFi6対応ルータが通信が切れやすいなど問題が出ている場合はOFFにすると改善するかもしれません。
■チャンネルを理解する
5GHzにはW52 / W53 / W56 / W58 と呼ばれる4種類のチャンネルがあります。
W52は5Gを使える製品であれば間違いなく使えるが、W53、W56は対応していない製品も多いです。(amazon製品はW56が見えない端末が多い)
W53とW56デメリットとしては気象レーダーがその帯域を使っていてそちらを優先するため外部から電波をキャッチしたときに通信断が起きてしまう仕様(DFS)となっています。
DFSは信号を受けるとそのチャンネルは30分間利用不能になります。W52はDFSが必要ないので切断されることはないです。
他の注意点としてはW52/W53は法律上屋外で使えない(W52は無線免許があれば使えます)。
W58は日本では車載ETCが帯域を利用していて一般には開放されていないので使えません。利用禁止です。技適が通っていない海外製品ではこの帯域を利用しています(中国はW56が禁止でW58が使える、アメリカでは4つのチャンネルが使える)
5GHzは2.4GHzと比べ法律で縛られている制約が多いので利用者が注意をする必要がある。(問題のある機器を販売しても業者は罪に問われないがそれを利用者が使うと罰せられる。消費者は技適マークを見て買えば基本的には回避できます)
通信断の原因となるDFSの頻度については以下のブログが参考になりました
基本的には複数枚の壁で信号がかなり減衰するので隣の家のAPの干渉はすくないのでW52を使えば良いと思います。
集合住宅で壁が薄い場合など干渉の影響を受ける場合もあるとおもいますのでその場合はチャンネルを変える必要があると思います。
メッシュや中継機を利用するときに中継用の帯域にW56を利用するとW52の速度が落ちないので中継用の帯域として利用すると良いと思います。
(WiFi6Eの場合は6Gを中継用の帯域とすると対応端末がなくてもメッシュが帯域を有効利用してくれます。6GはDFSが存在しないので通信が中断されることもないで中継用帯域としては優秀です。)
■帯域幅は160MHzを使う
帯域幅はチャンネルを束ねて速度をあげます。
W52+W53 / W56をまるごと一つの帯域として扱うことができます
速度の目安としては
アンテナ2x2 80MHz(1201Mbps)で実測大体250-600MBpsくらい。
アンテナ2x2 160MHz(2402Mbps)で実測大体500-1200MBpsくらい。
アンテナ4x4の場合は2x2の倍の速度のイメージで良いと思います。(4x4はクライアントがなかなかサポートしないと思いますが)
クライアント側で有名なIntel AX200はアンテナは2x2 帯域160MHz(2402Mbps)です。
以下の画像はIntel AX200のgoogle speedtestの速度です。(APは2.5GbE接続です)
4x4の160MHz(4804Mbps)で通信する場合は有線側のポートに2.5GbEが必要になります。
インターネットも2Gbps程度の回線があるとバランスが取れますね。
2x2の160MHz(2402Mbps)で通信する場合は実測1Gbpsなので1GbEで足ります。(1.2Gbpsくらいでますが誤差でしょう)
高速化目的でWiFi6にする場合は160MHz幅が使えると目的を達成しやすいです。(企業など負荷分散目的で同じフロアに多数アクセスポイントを設置する場合は160MHz幅は混信の原因になると思われるので利用しないほうがよいです)
■メッシュ機能を使って5GHzの範囲を広くする
メッシュ機能に対応したアクセスポイントにすることによって機材を買い足すことで電波の飛ばない場所をカバーすることができる。
中継機能との違いをいくつかまとめると
中継はSSIDが同じ場合には遠いアクセスポイントを掴んでしまう場合がありSSIDを場所によって変える運用をするがメッシュの場合はそれが起こりにくいのでSSIDをまとめられる。(ローミング機能)
SSID変更やMACアドレスフィルタリングなどの無線の設定を個別の機器で行う必要がなく親機の設定を行えばすべて自動で同期される。
中継はメーカ問わず使えるがメッシュ機能は同一メーカでないとできない。(オープンな規格としてEasyMeshなどはあるがそれに対応していないとできない)
以前はメッシュ機能はメッシュ専用の製品を選ぶ必要があり同じ機種でないと増設できなかったりしたが
最近では同一メーカーの無線アクセスポイントを買い足すとメッシュ対応にできる機種が増えているので対応品を買っておくとあとから電波が届きにくい場所があっても買い替えではなく買い足しで対応できるので選ぶポイントにしておくとよいでしょう。
メッシュは機種によりますが有線LANを使ったメッシュ(有線バックホールと呼ばれています)がありこの場合、親機との中継による転送は起こらないので速度低下が起きません。有線LANがある部屋(家の端など)には有線LANで設置し、ない部屋(家の真ん中の部屋)は無線LANで中継で対応します。設定も特になく有線LANに線を挿すか挿さないかだけで自動的に判断されます。
メッシュの機能で設置の柔軟性を上げるために欲しい機能をまとめると以下三点は重視したほうがいいですね。
有線バックホール機能
買い足しによる増設
ブリッジモード(アクセスポイントモード)でのメッシュ対応
一般的な家なら二台あればほとんどカバーできますし(1階と2階に設置)、さらに3,4台に増やせれば特殊な場所でも(三階や地下室、ガレージ、風呂場など)どこでもつながる様になると思います。
■トライバンド対応は必要なのか?
トライバンドは同時に三つの電波を飛ばす機能です。
具体的には2.4GHz 一つと 5GHzを二つです。
クライアントと中継で同じ帯域を使うと通信を時間で分割する必要があるので単純に速度が半分になります。
中継に使う通信とクライアントの通信を帯域を分けることで同時に通信できるようになるのでトライバンドは中継時には威力を発揮します。
メッシュや中継をしないのであればトライバンドは必須ではありません。
逆にメッシュで速度低下が嫌ならトライバンド対応は必須でしょう。
トライバンドのものは上位モデルで比較的値段が高いです。
(WiFi6Eになり状況が少し変わりTPLINKの物が6Gに対応したトライバンドの物が安くなってます。WiFi6Eのものはトライバンドが標準です。)
メッシュ機能は有線もサポートしてる場合が多いと思うので壁にLANポートがあるなら無線でのメッシュは使わずに有線のメッシュで運用すると速度が安定しますね。その場合はデュアルバンドで十分です。
トライバンドが必要かどうかは宅内に有線LANの配線が少なく無線だけで対応する必要があり、さらに速度が必要な場合には必要だと思います。
ムダに高い買い物をする必要はありません。
■2021年現在、WIFI6は買い替え時か?
WiFi5(802.11ac)以前なら絶対に買い替え時です。WiFiはWiFi5から劇的に速くなっています。
WiFi5から買い換える場合は160MHz対応を意識すると速くなると思います。
そしてWiFi6には次の規格WiFi6Eが制定されていてクライアント側のモジュールは既に売られています。WiFi6Eの特徴は6GHz帯を使えるようになりますが、6GHz帯は法律を改正しなければならないので日本ではWIFI6Eは対応する製品が当面出ないです。(日本では中継回線として放送事業者が使っているので時間がかかりそうです。)
※追記:2022/9/2に電波法が改正され日本で6GHz帯が使えるようになりました。
そして6Gが使えるようになっても対応する機器がそれほどないのと既存の機器は6GHz帯を使えないので2.4G/5G対応の機器を使えるようにするために2.4/5/6Gのトライバンド、もしくはクアッドバンドになると思いますので初期は値段も相当高くなると思います。
(注記:WiFi6EになりTPLINKのトライバンドのメッシュが大分値段がこなれてきました)
6GHz帯が使えるWiFi6Eのモジュールとして売られている INTEL AX210ですが技適は通っているようです。
個人的な見解としては6GHzはWiFi7へ向けての布石なのでWIFI6Eは特に普及はせず次期アップグレードパスとしてWiFi7になると思います。
WIFI7は2024年~とのことなので普及はおそらく2025、2026年頃になると思います。
WiFi7は30Gbpsの規格ですので有線やインターネット側が10Gbps以上でないと恩恵は受けないと思われます。
■2022年9月現在、WiFi6Eは買い替え時か?
2022/9/2の電波法改正で6GHz帯が使えるようになりました。
これからWi-Fi6Eの製品が出てきます。
Wi-Fi6Eが普及するかといえばおそらく普及しないですね。
ルータは必要ないと思います。
ただし端末側はWi-Fi6Eの選択ができるならしておいたほうが外出先で使えるときもあるでしょうし、Wi-Fi7が出た時に端末が6GHz帯が使えるのでスムーズに移行できると思います。
そして6GHz帯対応のルーターを購入する時期はWi-Fi7が出た時に自宅の有線LANやインターネット回線が10Gbpsになった時に考えれば良いです。
6GHz帯を入れたほうが良い条件は集合住宅で壁が薄く隣人の5GHz帯ですら干渉してしまう劣悪な環境になりますが、結局端末がほぼ無いので端末が出てきてからでも良いのではないかと思います。
もう一つ6Gの有用な使い方は無線メッシュのバックホールでクライアントは5Gを使いメッシュ間通信は6Gを使うと効率よく使えます。メッシュ子機を置く場所にLANがない場合にはとても有用になるでしょう。
■2023年11月現在、WiFi6E/7は買い替え時か?
WiFi6Eは価格がこなれてきたので購入しても良いと思います。
ですが、6Gは対応デバイスがもう少し増えてこないとなかなか普及が厳しいですね。
無線メッシュ目的で買うのは有りでしょう。
WiFi7に関しては新しく記事を書きました。
WiFi6は急速に普及してすでにシェアを50%超えているので新製品の端末はWiFi6対応になってますね。
■有線LANの強化
WiFi6は4804MHz対応にした場合、最高速度が実測2Gbps近くでるので有線LANもそれに合わせて強化する必要があります。
逆に有線LANを強化する予定がない場合はWiFi6は2402MHz対応品にすれば良いのでシンプルです。
強化方法として2.5GbEと10GbEがありますがどちらを選べばよいかといえばWiFi6だけに特化すれば2.5GbEで十分ということになります。
しかしSFP+の10GbEで機器を揃えると値段も2.5GbEとそれほど変わらないので既設配線やインターネット、WiFi6への接続は2.5GbEを使い、NASを使う作業部屋はSFP+の10GbEを使うなど混在させることも可能なので柔軟に対応することも可能です。
■調査用ツール
WIFIの調査用のツールって160MHzに対応していないツールがほとんどなのですが対応しているツールを見つけたのでリンクを張っておきます
■android用
このツールはWIFI6に対応していないWIFI5のスマホでもWIFI6の状況を調べることができます
■windows用
■インターネット回線が遅い?
最近WIFIが最近遅くなったから買い換えようとしている場合はちょっと原因が違っているかもしれません。
前に比べて遅くなった理由には2つあると思っていて
隣の家や家族がWiFiのアクセスポイントを増設して干渉を受けている
インターネットプロバイタが会員数増加の影響で遅くなった
前に比べて遅くなることは基本的にはないのでこれら理由を疑ったほうがよいです。
アクセスポイントが干渉している場合はチャンネルの重なりを調べる。
重なっていればチャンネルをずらす、または原因となっている装置を取り除く。他人の家の電波が原因のときは解決は難しいかも。
プロバイタが原因の場合は
フレッツ系ならIPoE(IPv4 over IPv6)を使う、または対応ルータに買い換える。
nuro光やau光に乗り換える
など選択肢があります。
有線で繋げられる場合は有線で繋げば原因はすぐわかると思います。
(ちなみに私はフレッツを使っていましたが10Mbps切る様になってひどいときは1Mbpsとかで厳しかったのでIPoEを使おうとしたが別料金で契約が必要だったのでnuroに乗り換えました)
よくケーブルが悪いから速度が遅いなどCAT7やCAT8※などを紹介する記事がありますが、ケーブルが悪い時は速度が遅くなるよりもまともに通信そのものができなかったりします。(パケットロスやレイテンシが増える影響がでる)
先に有線のボトルネックを解消してからWiFi6を導入すると不満が解消できます。(1Gbps出る回線なら2x2 160MHz 2402Mbpsのスペックをオススメします)
※CAT7やCAT8にした場合余計に酷くなる場合もあります。ケーブルを替えるならCAT6Aを強くオススメします。
■オススメはないのか?
無線環境はプロバイタ/ルータとセットで考える必要があるので難しいですね。
自分はNURO光を使っているのでルータが変えられないから普通に使うと二重ルーターになってしまうのでブリッジモードでメッシュが使えるアクセスポイントを選んでます。
ルータ機能を重視すると選択肢がかなり減ってきますね
フレッツのIPoE(IPv4 over IPv6)とかに対応するとさらに選択肢が減ります。
プロバイタとの接続は他のルータに任せてブリッジモードのメッシュとして割り切ると選択肢が増えます。
僕は問題の切り分けのためにルーターとWIFIは分けたほうがいいと思っています。
ブリッジモードの欠点は細かい設定(ペアレンタルコントロールとか)ができなくなったりします。
そういう欠点が嫌な場合や機器を一元管理したい場合などTPLinkのDecoX20がよさそうですかね。
フレッツ光のルータ(DS-Lite)として使い、速度も500Mbpsの転送速度でよい(子機は250Mbpsくらい)ならTPLinkのDecoX20が価格的にもバランス取れてて良いのかなとおもいます。(フレッツはIPoEにしても分岐が多いのでインターネットの最高速度はそれほど期待出来ない思う)
TPLinkはメッシュで完結している製品は良いと思いますが単品のモデルは癖があるイメージです。
柔軟に設置できない場合が多いので購入前確認しておくべきでしょう。
(特に有線バックホールとブリッジモード)
次にASUSは割とオススメでAI-MESHも良いとは思いますがルーターとして使うのはDS-LITE,MAP-EなどのIPv4トンネルが使えないのがデメリットになります。
IPv4を考えるならブリッジモードを使うなどメッシュを組む場合には設定や使い方を自分で考える必要がありますね。
ただしnuroなどルータを変えられない場合にはこちらの方が都合が良さそうです。
有線LANのメッシュにも対応しているのでデュアルバンドでも問題ないと思います。
自作慣れしている人は柔軟なASUS製品を使うのも良いと思います。場所によって最適な製品を選べるのでその場合は最高速度を追求できるでしょう。
やろうと思えば有線のない部屋に2.5GbEの口を用意出来るわけですし。
ASUSは古い製品のアップデートもやっているので国産に比べて長持ちするイメージがあります。過去の製品もメッシュ対応になってますし。
現在使っているルータがWiFi5より古く特にこだわりが無ければTPLINKがお手軽でいいと思います。
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