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LANケーブル一本で通信も電気も送れるPoE(Power Over Ethernet)の知識


■はじめに

PoEはLANケーブルに電気を流すことができLANケーブルだけ配線すれば電源の取り回しの悪い環境でも通信機器を使うこと出来ます。

主に屋外に設置するのに力を発揮すると思いますが屋内であっても場所によってはコンセントが取りにくい場所やACアダプタが嵩張るからLANケーブルだけにしたいといった用途に使えると思います。

PoEに対応している機器としては主にIP電話やIPカメラが主流だと思いますが対応機器以外でもラズベリーパイなどのUSB機器や12V電源を必要とする無線LANアクセスポイントなどもPoEから電気を取り出すことができるアダプターを使うことで使うことが出来ます。

とPoEはいいことばかりで簡単に扱えそうに書きましたが知らないと機器が破損したりする罠ポイントがあるのでそういったことを解説したいと思います。

■規格の種類

PoEで普及している規格がいくつかあります。これを調べずに使うと機器が使えなかったり、壊れたりするので気をつけましょう。

●PoE(802.3af)

  • 48Vの電圧で最大15.4Wの電力供給。

  • 電力供給開始前にネゴシエーションが必要。ネゴシエーションしない場合は電力供給されないので非対応機器を使っても安全。

  • 機器は基本的に48Vから降圧して使う。直流なのでケーブルを伝っていくうちに電圧が下がるので機器側で降圧して必要な電圧に調整するので電圧低下の影響を受けにくい。

  • CAT5e以上であれば問題なく使えます。

  • 4対の線のうち2対を送電に使います。

●PoE+(IEEE 802.3at)

  • PoE+はPoEより大きな電力を扱えます。

  • PoE機器と互換性があります。

  • Type1(=PoE)とType2があります。

  • Type1は最大15.4W、Type2は最大30Wです

●PoE++(IEEE 802.3bt)

  • PoE++はPoE+より大きな電力を扱えます。

  • PoE/PoE+機器と互換性があります。

  • Type1(=PoE)とType2(=PoE+)、Type3、Type4があります。

  • Type3は最大45W、Type4は最大90Wです

  • 4対の線のうち4対を送電に使います。

●12V/24Vパッシブ

これは非標準であり規格化されていません。
主に12V / 24V 2A程度の電流を流します。
ネゴシエーションをしません。いきなり電気を流します。
対応しない機器に使うと壊れます。

ACアダプタから12 / 24Vをそのまま流すのでケーブルが長い場合に電圧が低下する場合があり、その場合は機器が不安定になります。

PoEを謳っていてもこのタイプの場合があり、このタイプはPoE対応スイッチでは動かないので注意が必要です。

このタイプは専用のインジェクターが必要になります。
単一の機器で距離が短い場合(20m程度)には良いですが複数機器設置する場合にはスイッチが使えないので基本的に使わないほうが良いでしょう。

■どんな用途に使えるか

◆通信と給電を同時にできるPoE対応機器

  • IPカメラ(監視カメラ)

  • IP電話

  • 無線LANアクセスポイント

  • ミニPC

◆12VのACアダプタを必要とする機器(PoEスプリッタで対応可能)

  • 無線LANのアクセスポイント

  • スイッチングハブ

  • オーディオ機器

  • ミニPC

◆USB給電を必要とする機器(PoEスプリッタで可能)

  • USB給電対応のカメラ

  • ラズベリーパイ

ちなみにラズベリーパイは別途PoE HATというオプション品を取り付けるとスプリッタがなくてもPoE対応になります。

ラズパイにFreePBXを入れるとIP電話網がつくれます。


■LANケーブル

通常のCAT5e以上のケーブルであれば問題なく扱えます。
100円ショップで売っているような安いケーブルは銅皮膜のアルミケーブルです。(CCAケーブルと言います)
CCAケーブルをPoEに使うと問題が発生します。
電気抵抗が大きいので電圧が下がり発熱します。
PoE++あたりの大電流を流すと燃えるかもしれませんね。
通信障害の事例もあるようです。


■PoE対応スイッチ

スイッチングハブがPoEインジェクターに対応している製品。
スイッチングハブのPoE対応ポートに挿したLANケーブルから電力が供給されるため非常に手軽に扱える。
VLAN対応の機種もあり、ネットワークを屋外と屋内で切り分けたり出来ます。
2.5GbE対応のPoEスイッチも出てきました。


■PoEインジェクター

LANケーブルに電気を注入するアダプター
PoE規格対応なら48Vに対応した製品を選ぶこと。

■PoEスプリッター

PoE対応のLANケーブルから電気と通信を分離してDC電源として使える。
通信部分は100Mbpsのものが多いが1000Mbps対応のものもある。
電源部分は48Vから12Vへ降圧して2A程度の電流を扱える(製品によって異なるので仕様を確認すること)
48Vから5Vへ降圧してUSB機器で使えるものもある。
基本的に防水対応がされてないので屋外設置の場合は防水対応をしないと回路がショートします。

2.5GbEのスプリッタは発売していないようですが1000Mbpsのもので2.5GbEに接続ができました。
ただケーブルによっては1000Mbps接続になりました。(PoEによってノイズが乗るのかもしれない)

■DC12V (1000Mbps)

■DC5V (100Mbps)

■USB Micro-B (100Mbps)

■USB Type-C (100Mbps)


■2.5GbE+PoEで問題なかったLANケーブル


■PoE分配機

一本の線から分岐させる分配器です。二分岐の場合は電力は一本あたりの消費電力は半分になります(30W入力15Wx2出力)
12V1A程度の消費電力なら分岐できると思います。
距離を延長する目的にも使われます。

■リピーター

以前使ってましたがリピータはネットワークの調子が悪くなることが多い気がします。電気取り出すために使ったほうがいいと思います。

■スイッチ

amazonには売ってなかったがaliexpressには売っているようです。

■屋外設置

PoEはLANケーブル一本で通信と給電ができるため屋外に設置する場合に便利ではあるが屋外は雨が降るため防水対応が必須である。

防水対応の機器であればそのまま設置することもできるがそうでない場合はウオルボックスと呼ばれる屋外対応の箱を設置するのも手だ。

筆者は特に防水でないPoEインジェクター機能を持ったスイッチを未来工業のウオルボックスに入れて雨をしのいでいる。


2.4G対応の無線LANアクセスポイントも屋外で使いたいなら入れることはできるが5GになってくるとW53 は屋外禁止、W52は登録局登録の許可が必要なので注意がいる。

ラズベリーパイやUSB給電が必要なセンサー類をしまうのにも適している。


ウオルボックスの設置には結束バンドが使いやすいと思います。
ただ結束バンドは劣化しやすいです。


■Aliexpressで見かけたPoE周辺機器

PoE+⇨USB-PD30W(5V / 9V / 12V)出力
PoE+⇨SWITCH Tenda TEG1105PD

















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