ひとり問う 3・ex

 最後に書き殴った自分の欲望を本当に自分の欲望か真剣に考えた。
 答えはノーだ。
 3年前の冬、僕はフラれた。
 かわいい女の子だった。それ以上に優しい子だった。きっと、この子に僕の傷はかなり治してもらった。
 少年時代、母と死別してから汚い大人たちに上っ面の言葉を投げられた僕は自分を深いところに閉じ込めた。
「佳なら大丈夫だよ。佳は心配ない。しっかりしてるから。」
 そんなわけない。毎日、枕を濡らしてた。
 母は死ぬ1ヶ月前から何も食べれなくなったのに、出来損ないの俺がなんでのうのうと飯を食えるんだ。
 母は子供を愛していたのに親孝行されることなく死んだ。
 母から奪うだけ奪った存在が俺だ。
 俺が死んで、お袋が生きるべきだった。
 ーーそんなことばかり、考えてた。
 周りの大人は無責任に「お前が一番しっかりしてる」と言った。ふざけるな。
 ある日、前述の女の子に母のことを聞かれた。
「子供の頃に死んじゃってさ」
 今は気にしてないよ、という風に体裁を整えて。
「かわいそう」
 真剣な目だった。心の底からの同情。胸に詰まるものがあった。途端に僕は理解したんだ。
 あの時に欲しかったものはこれだったんだ。
 もしも、願いが叶うならば。
 また、少しだけ人生の道を絡めてくれないものだろうか。より面白くなった俺を見せるから。


 なんてね。

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