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エネチェンジの不正会計問題と今後の展開予想

ストップ安真っ最中のエネチェンジ社について、現状と今後の予想について書く。

エネチェンジは結局何したの?

端的に言うと粉飾決算となる。ざっくり言えば、EV充電器を別途設立したSPCに売り付け、その取引を売上計上していたものの、実はそのSPCの資金はエネチェンジCEOが投資家に貸付した資金が元手であり、更にはその貸付資金はエネチェンジの株式を担保にして借りたものということで、監査法人が連結対象にせよ、というジャッジを下したと言う流れである。

元々、20億程度の売上高を計上していたが、それが連結対象となることで、売上高が丸ごとなくなった形である。循環取引に近い形の不正会計と考えることができる。

詳しくは第三者報告書を読んでほしい。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2467609/00.pdf


株価はどこまで下がる?

明日以降も株価は下がるだろうがどこまで下がるかはぶっちゃけわからん。ただし幾つかの主要因はあるので書いていく。

需給の問題

わかりやすく粉飾決算をかましてきたので、既存ホルダーの投げ売りは続くと考えられる。また、それに加えて、CEOが借入時に担保に出したエネチェンジ株式の担保処分ということで、強制売却も出てくるはずだ。おそらく500万株が貸し出されているはずなので、(既にいくらか売り出されたかもしれないが)現時点で上がる要因は見つけられない。

理論株価

株価は理論だけでは決まらないものの、一応理論株価を考えてみる。エネチェンジはEV充電事業だけでなく、電気料金比較サイトのエネチェンジ(プラットフォーム事業)や電気事業者へ展開しているデータ事業の二つの事業も存在している。

2023年12月期の決算資料のデータを用いると、プラットフォーム事業は4.2億円、データ事業は1.5億円で合計約5.7億円となる。これらの価値をベースにPERをTOPIX平均の15倍とすると、企業価値は単純に85億円になる。

エネチェンジの発行株式数は、34,844,540(株)なので、株価にすると、243円になる。現時点での株価は342円(PTSではもっと下がっているが)なので、更に下がると思われる。

ただし、元凶のEV事業の価値は上記理論株価には含まれておらず、それを考慮すると、企業価値は半分以下になる可能性もあり、半分以下の40億円とすると、理論株価は170円程度となることから、まだまだ下げ止まらないような気がしている。100円切ったら買いかもね。

今後の展開

銀行からの貸し剥がし、監査法人の契約不能

第三者委員会の見解によれば、明確な法令違反はないと言う結論に至ったものの、モラルの低さが随所に見られ、今だに監査法人と揉めているところを見るに、現状のままでは倒産を免れないとは思われる。

そうすると、これまでの貸付金を銀行は求めるだろうし、既存の監査法人はここまで揉めて再契約というわけもなく(数倍で吹っ掛ける可能性はあるが)順当に上場廃止→倒産になるのではないか。

善管注意義務違反による株主代表訴訟

更には、明確に経営者の善管注意義務違反でもあるので、既存株主からの訴訟も出るだろう。その係争や賠償金の手当ということから、創業株主も更なる株の手放しをしないといけなくなる可能性は高い。

おそらく倒産はしない

ここまで書いた内容を見ると倒産待った無しという感じだが、実は倒産するとは思っていない。

なぜならば、全国でここまでEV充電インフラを設置した企業だからである。仮にエネチェンジが倒産すると、全く機能しない充電器がそのまま残置されることになる。

しかも、この充電設備は殆ど全てが国の補助金により設置したものである。そういう意味では、そのまま国が見過ごすとは到底思えず、その意味では後述するホワイトナイトを見繕うのではないかと想像している。具体的には下記の企業を秘密裏に呼び出して、お前ら買収しない?ってヒアリングが始まっていると思われる。

ホワイトナイトは現れるか

筆者の予想ではあるが、7月上旬までのタイミングで誰かしらがホワイトナイトとして手を挙げるのではないかと予想する。

ENEOS

一番ありそうなのがENEOSだ。同社はガソリンスタンドにEV充電設備の設置を推進しているし、他にもNECからEV充電設備を買い取るなど、EV充電事業を推進している。

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20220606_01_01_2006437.pdf

しかも、ENEOSのEV充電アプリは実はエネチェンジの基盤を活用して提供している。その意味では、ソフトウェアエンジニアなどの開発リソースの確保という買収メリットもあるのでENEOSがオーナーとなる可能性は非常に高い。

同社はJREという再エネ企業をジャンピングキャッチしているのだから、100億円未満となるであろうエネチェンジ社などすぐ買えるのではないかと思っている。

総合商社(丸紅、伊藤忠あたり)

こういう時に目ざとくショッピングする総合商社も有力候補だ。彼らもEVビジネスの拡大を各社狙っており、目的地充電のナンバーワン企業を安く変えるのであれば、是非買いたいと思うだろう。

ただし、ENEOSよりは可能性が低い理由は、彼らはENEOSほど法外な価格で買うことはない、しっかりフェアバリューを見極める会社なので、ガチンコで入札になると、ENEOSに負けるのではないかと思っている。

インフラ各社(東京電力・東京ガス)

これらインフラ企業も有力候補だ。特に東電は子会社にeモビリティパワーという充電インフラ企業を有している。ここは経路充電に特化した会社であり、エネチェンジよろしく大赤字を垂れ流す会社だが、エネチェンジと業務提携しており、決済システムを連携している。そういう意味では、エネチェンジを取り込んで、経路・目的地をカバーする戦略にすることは十分にありうる。

他にも東京ガスなどがEV充電ビジネスをしているので、そっちの可能性ももちろんある。


EV充電インフラの今後

ここまで殴り書きをしてきたが、結論としてはエネチェンジは潰れないまでも株主は大きく変わる(創業株主は撤退)と予想される。

国も検討会にて指針を整理し、2030年までに30万基のEV充電インフラの整備を進めると宣言した矢先の出来事なので、本件は大層迷惑な話だと思う。

新興マーケットあるあるではあるが、基本的にモラルのない企業が多く、その意味ではテラチャージ社もそのうちやらかしそうな気がするので、これまでの大きな企業がEV充電インフラの設置を主導してほしい(その企業自体というよりはEV充電企業の大株主になって)と個人的に思うところである。

真面目な話をすると、ガソリンスタンドが年々減っていく中では地方ほど家で充電できるEVの利便性は相対的に上がると思っており、その意味では脱炭素の意義以上にEV充電インフラの拡充は住民の移動手段の確保ということがとても大事になってくると予想されるからだ。




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