野性的デザイン力


洗面台の歯ブラシ置きがいつもと違う。
長い間壊れかけていた歯ブラシ置きが無くなっている。

ムムッ!これはー!!

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なんと独創的なのでしょう。
この組み合わせ感が絶妙。
透き通った青いグラスとグラスを支える電源コードの違和感がたまらん。

歯ブラシをグラスにしまうことは普通のことかと思いますがここで注目すべきはグラスの周りに巻き付けてあるコードの方です

細長く倒れやすいグラスを電源コードでガッチリ補強。しかも電源コードは本来の役目を失うことなく補強という仕事もこなし一人二役こなしている。
そして何より青いグラスとビニール製の電源コードの何とも言えない違和感がイイ。この違和感を「イイ」と共感できる人がどれだけいるのか不安になりますが、僕は割とこういうの好きです。

確かにスマートじゃないしシンプルな歯ブラシ置きを買ってきて置いた方が見た目もスッキリすると思います。普通はそうなるでしょう。でも僕はこの独創的な発想を重要視したいのです。そう思うのは僕だけなのか。


この設えは妻の仕業です。
因みに妻は陶芸家でちょっと変わった陶器を作っています。
岡美希ホームページ → http://www.mikioka.com

妻だから身内だから贔屓目で見ているから僕の目には良く写っている、ということもあるのかもしれませんが、妻とはかれこれ8年一緒におりますが妻の独創的な発想力にはしばしば驚かされてきました。これまでその独創的な功績を記録していなかったこと、ここでご紹介できないことに悔やまれますが、上のグラスの写真を撮った時に家の中を見回してそれらしい妻の作品、行為を二つ見つけましたのでご紹介します。


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鳥のオブジェがとても独創的ですが、オブジェではなくオブジェの手に掛けられた髪留めの輪ゴム。こんな使い方アリ?
輪ゴムをかけたりせずオブジェはオブジェとして鑑賞するために目立つところに置いて眺めて楽しむと思うのですが。使えると思ったらオブジェだろうが何だろうが用途を変えてしまう発想力というか脱固定観念というかその感覚が素晴らしい。


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そしてまた洗面台ですがタオルを掛ける場所にメガネが掛けてありました。ん〜これはちょっと弱いなあ。他にもっと独創的なものがあれば良かったのですが今回はこれくらいしか見つけられませんでした。。。


僕はこれらのアイデアや発想がデザイン的だなあと思えるのです。もしくはクリエイティブとも言えるかもしれません。そもそもデザインって何なのか?という問いはあまりにも大きな問いなので僕では正確な言葉で語そうにありませんのでここでは控えますが、この妻の行為(作品とも呼びたい)は端的に言うと「自分なりの考えで問題を解決した」のです。歯ブラシを置く場所に困ったから自分なりの発想で歯ブラシの置き場を作ったのです。


デザインのひとつのミッションとして問題の解決は非常に重要なことです。クライアントから「この商品を売り出したいから広告を作って欲しい」と依頼される。クライアント自らでは消費者への訴求力に欠けるので広告のプロにお任せする。消費者への訴求力に欠ける部分が【問題】で広告を作ったあと商品が売れると【解決】となる。

結局デザインを語り始めておりますが、、、今回の妻の行為はクライアントも自分でデザイナーも自分で行った行為ですが問題は解決されております。しかし問題が解決されたからデザインだということではなくて、問題解決の方法が非常にユニークである点が今回僕の最も言いたいことです。

ユニークであるということはそのユニークな作品や行為を見た第三者は作者の世界に引き込まれ自分には想像もできなかった視点を見せてくれます。そこには沢山の気付きや感動といったリアクションが待ち受けており世界の広さや多様性など様々な可能性を教えてくれるものだと思うのです。


僕は妻を始め二人の子供からさえもそのユニークな世界観を日々見せてもらっていて、中々飲み込めないことも多々ありますがなるほど!と唸ることもしばしば。結婚して子供が出来て独身の時から思い返すとだいぶ価値観や世界観が変わったと思います。

そんななるほど!な経験をさせてもらった僕でもついつい歯ブラシ置きを買ってしまいがちな思考回路です。お金を掛けずに身の回りのあるもので持ち前のセンスと倹約根性で即座に対応してしまう妻のその感性は同じクリエイターとしてとても羨ましいですね。これは持って生まれたセンスと彼女の歩んできた環境(海外で滞在しながら作陶してきた活動など)によるものでしょう。そして人と違うその独創性こそが彼女の作品を作品たらしめる要因になっているのだと思います。

この投稿の題名に野生的としたのは誰かに教えてもらって備わったものではなく彼女が潜在的に持っているものだからです。


新型コロナウイルスでひっくり返ってしまった人類。
例えば妻のような野性的な感性でもって様々な問題に立ち向かうとどうなるだろうかと想像してみる。普段の生活の中でもいい。そんな感性で過ごせたらどんなクリエイションが待っているのだろう。


歯を磨きながらそんなことに思いを巡らす梅雨の夜です。




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