アイドリッシュセブン モブ妄想 Re:vale_結婚式

真っ白なウエディングドレスに包まれて、別人みたいに綺麗になった自分を見る。
こんな日が来るとは思わなかったな。柔らかなドレスは、彼が一生懸命選んでくれた、私に1番似合うドレスだ。彼はとてもいい人で、付き合って5年が経つ。アイドルが好きな私にも理解があって、流す曲も全部私に任せてくれた。
『t(w)o…』
Re:valeの曲は、いつも私の背中を押してくれる。あの時からずっと。

初めて彼らを知ったのは、友達からの噂だった。
「凄くかっこいい他校の男子生徒が、2人組でアイドルしてるんだって!まだメジャーデビューはしてないらしいんだけど、今度ライブハウス行ってみない?」
押しの強い彼女に流されて行った先で、出会った衝撃は今でも忘れられない。その容姿の美しさはもちろんだったが、何より私の気持ちをなぞるような曲に、すっかり心を奪われてしまった。友達はその後すぐに彼氏が出来て通うのをやめたけれど、私はずっと通っていた。彼らの音楽に触れたくて、彼らの熱を感じたくて。
ユキさんは男でさえ見蕩れるような、あまりの美しさからトラブルの絶えない人だったけど音楽に対してだけは真摯で、私はその姿が何より好きだった。バンさんは穏やかで優しくて、どこがいつも1歩引いてるようで、けれど音を奏でる時だけは自らを曝け出すような強さがあった。2人が混じりあって完成した曲は私をいつも揺さぶり、その時迷っていた進路について決めたのも、彼らのライブの最中だった。それくらい、私にとって彼らの音には意味があったのだ。
だから報せを聞いた時、何よりもまず、嘘だ、と思った。事故。意識不明。死んだ。様態は分からない。情報が交差する中、ただただ無事を祈る他なかった。私は無力だった。
そして数ヶ月後、Re:vale復活の報せを聞いた時は飛んで喜んだ。ずっとなんの音沙汰もなかったから、きっともう駄目だろう。そう諦めかけていたから、嬉しくて嬉しくて堪らなくて。でもそこにいたのは、私の知ってるRe:valeではなかった。知らないRe:valeが、そこにはいた。

受け止められない事実に、しばらくは彼らを見るのも苦痛だったけれど、あの時インディーズだった2人は、メジャーデビューし着々と名を広めていった。モモという男は、バンさんとは似ても似つかない。けれど彼は、Re:valeを、ユキさんを、一生懸命引き上げてくれた。何も出来なかった私とは違って。

彼らがテレビに出ることが増え、それでも意固地なっていた私に、弟は言った。

「千さんが作った曲は昔と変わらないはずだよ」

その通りだと思った。彼らの曲で、初めて聴いたのは『SILVER SKY』。千さんの曲は弟が言っていた通り変わらず、その冷たくも見える見た目からは想像もつかない程あつくて力強かった。そしてそれに魂を宿らせるモモの歌声。百は、紛れもなく、私の知ってるRe:valeで、私の知らないRe:valeだった。

t(w)o…は、大切な人との未来を思う曲。2人の始まりの曲。Re:vale2人だからこそ、完成した曲。きっとあの頃のRe:valeには歌えない曲だろう。
今日という日を飾る、1曲目はこれしかないとプロポーズされた時からずっと思っていた。私のワガママを彼は笑って受け入れてくれて、やっぱり、この人となら私は笑っていられるなと思えた。

「姉ちゃん、そろそろ時間だよ」

身椅麗にした弟が照れくさそうにドアを開けて私を見ている。

恥ずかしいだろうに、バージンロードを歩くことを了承してくれた可愛い弟は、私が無理矢理連れていったライブハウスの帰りと、同じような顔をしていた。

「ありがとう、今行くよ」

大好きな人達に囲まれながら、あの時と同じように2人の声に背中を押されて、私は未来へと1歩を踏み出した。

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