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『フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと』

『フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと』という名前のインディゲームがあります。ゲームという形式ではありますが、基本的に一本道のシナリオを追うという、限りなく小説や映画に近いADVと表現すればよいでしょうか。

この作品、業界内での評判が非常に高く幾つもの賞を受賞しています。wikipediaにノミネートと受賞の一覧がありますので興味があれば見てみてください。

この受賞、ノミネート一覧を見るとわかりますが、最も評価されているのがナラティブ(ストーリーのプレゼンテーション)なんですよね。というより、上で書いたように、基本的にこのゲームは決められたストーリーの追体験が全てなので、まあそこしかないだろうなという感じです。

「フィンチ家」のストーリーというのはごくシンプルで、呪われた一族が次々に死んでゆくシーンを一人一人体験してゆくというものです。ラブクラフト風の化け物に食べられたり、崖から落ちたり、電車に轢かれたり、溺れたり、まあありとあらゆる死を体験できます。

ここだけ説明するとひどく悪趣味な作品に思えます。しかしこのストーリーの展開の仕方と演出が極めて美しく、BGMや効果音、そしてプレイヤーの操作がうまく組み合わさっており、その悲惨な内容にもかかわらず、血生臭さや露悪趣味を全く感じさせません。

記事を漁っていると、この作品の開発にあたり、制作陣はガルシア・マルケスの『百年の孤独』を参考にしたとありました。

この淡々とした、それでも濃密なストーリー、全体としての起承転結を拒否し、ただ奇妙で断片的なエピソードのみを語る表現技法は、確かにガルシア・マルケスや他のラテンアメリカ文学の雰囲気を感じさせます。

優れたゲームかと言われれば難しいのですが、美しい芸術作品であることは確かです。


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