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3月8日(2014)いつもと同じ幸せな開幕の日のはずだった

あの日のわたしたち 〜浦和レッズ30年〜

2014年3月8日。

Jリーグが始まってから毎年同じように続く、サッカーのある街の開幕の日の風景。

朝日を浴びるピッチの芝を整備するグラウンドキーパー、スタジアムに観客を迎える準備をするスタッフ、入念な打合せをするスチュワード、一人先にロッカールームで選手たちのユニフォームやスパイクを用意するマネジャー。そして心躍らせスタジアムに向かうサポーター。春の穏やかな空の下、様々な人たちを撮影させて頂いた。

ウォーミングアップが始まると、いつものように旗が振られ、コールが響き渡った。

選手入場でいちばん後ろにいる槙野智章は、緊張するフェアプレーキッズの男の子の肩に手をやり、優しく話しかけながらトルシエ階段を昇ってゆく。
レッズのGKとして初めて埼玉スタジアムのゴールマウスに立つ西川周作の背中は凛としていた。

豊田陽平のヘッドで鳥栖に先制を許すが、その後は攻め続けるレッズ。シュートのたびに歓声とため息が入り混じる。

原口元気が、興梠慎三が、李忠成が次々とゴールに迫るが、反撃及ばす0-1のまま、すっかり日が暮れたスタジアムに試合終了のホイッスルが鳴った。

前年から準備を重ね続いた撮影もこの日で一息つく予定だった。尽力してくれたスタッフに御礼を言って帰途についた。

そしてグラウンドでは気づけなかった出来事を深夜に知り、暗い闇の底に落ちてゆくような気持ちになった。果たして自分はそこにいたとして、それを止めることができたのだろうか。

のちに知り合ったサポーターは、あの日がレッズ初観戦だったそうだ。ずっと応援し続けてきた人も、初めて訪れた人も、その日の試合を楽しむ権利は平等にある。


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