車窓に反対風景がかさなり流れていく
車窓に反対風景がかさなり流れていく
破綻のない創造物としてあらわれる眼前世界の
過ぎさる空の青釉が垂れつたう吊輪を握り
あいまいな水脈深部にしずむ玻璃の矢印
退色する景色に反射する隣に立つものたちの
二重うつしの暗部が突きつけるものは何か
隠蔽される海栗の衝動 触れる前から疼く毒針
矢印に沿い並んでいるのに何かが麻痺し
線路の繼目に横揺れする車体
記憶に残らないわずかな時の境目で
ノイズに攪乱されたちまち復元される幻像
この車輛はほんとうに走っているのか
天気雨が遮光窓を叩き
引き裂かれる天井から迫りだす銀索条の乱脈
機械音を響かせ罅入る眼球は
溶解する床板の泥濘に鈍く散らばり
立ち眩み夢みる私の
防腐液臭のする内奥を
顕微鏡で覗かれる凌辱は改竄の代償
棘より細い管が挿入する色鮮やかな印象は
無影灯の煌く寝台列車に拘束される悦楽と毀壞
生存証明の抛物線を映しだす車窓に消現する
円柱をみたすゲルに繁茂する
鋭い円錐を突きだす星型結晶は
私の何なのか
紆曲する流體を刺す電極が嗾ける
製造番号が輝く何ものかが整然と取りつけられ
硝子管と硅片で作製される
擬似ものの私と馴致される世界認識
分岐機に振られる躯體が
植民地鐵道を直進する
停車駅はいくつあるのか
混みあい肩を押し
指に触れ棘を刺しあうものたちの
不鮮明な覗窓に焼きつく貌は皆私に似ている
そして吊革と反対の掌に透明な矢印を握っている
【22D24AN】「煌びやかな悖理」よりⅢ
*画像はStable Diffusionにて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。
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