見出し画像

うつろな緑 脅かす黄 青の孤独

うつろな緑 脅かす黄 青の孤独
境界のない窓枠からなだれこむ彩色の濁流
掴むもののない部屋で
軸を欠き乱顛らんてんする身體が
顔料の汚泥となり窓外へ流失し
ながれ着いた地下倉庫を手探りで
たどれない記憶の泥沼のいたるところに
ふいに湧きだす眩しい眼が私を引きもどし
乱雑に陥没した部屋にびしょ濡れの私が倒れていて
急いでふくと襤褸布ウエスに粘りつく原色が
下顎を塗り消し
混濁する私が
腫れた頬骨をおさえると
貌の輪郭に絡まる蔓がほどけ
曇った硝子のそとの隣家の円窓に吊るされる
毛編の手袋ミトン
奥からとりだせない南風の
濃淡のない異鄕の香り
その窓際で濁色した埃くさい診療録カルテを誦んじる
白衣の男と赤目の哭女は私だ
手紙のはいった封筒はほうじ茶色だ
洋墨インク壺からあげるペン先から滴り
清流を彩る分光スペクトル
そこに潜んでいるのか真空色する黑よ
素描線のかすれる自画の瞳孔に黑をいれる

【22O30AN】 「裏返しのタブロ」よりⅡ
*画像はImage Creatorにて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?