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欠けた太陽が炙りつづける街の中心を覆う黑體に

欠けた太陽があぶりつづける街の中心を覆う黑體に
打ちこまれる杭に荒荒しく結びつけられる鎖が
視線よりはやく一直線に牽かれ張りつめ
歪む扉の隙間から噴きだす断末の叫喚

弾き飛ばされる
左右のあわない靴や施錠のはずれる旅行鞄
波うつ壁を乱打する
逃げだすことのできないものたちのにび色した残響

無残な靜寂を砕き再び牽かれる鐵鎖の
鋭角の轟音が身體を貫き
なんど試しても円の終端が閉じなくなった
私の両脚器コンパスの重ならない円周

定點から脱落し構造物の裂開に漏洩する心は
螺状の水階段を反時計回りに流れくだり
隠れる横穴のない暗渠に溺れ
渦巻くことをやめた淀みに沈殿し

蛇行する配管に黑緋の帶を刻む回転警告灯
開けるたび増える内扉の暗晦あんかい
桎梏を引きずり何度も同じ踊り場を廻る
轆轤ろくろ挽きされるものたちの影が揺らぐ

険隘な廻廊四壁にはりつく膿疱半球の
透きとおる溶液にいだかれる
翅原基を欠く
おおきな澄んだ目をした蛹體の

くね曲がる先端に
正確に鉤爪を擊ちこむ
赤錆びた枷鎖は
黑體の深底に没する墓壙の殉葬品

その地下都市の祝典に舞う呪符
時が来れば海峡を越える渡蝶の翅をうばい
世代を跨ぎ累重する負債に
騒然とするものたちの昏冥の微睡まどろ

管路を這い鐵索に牽かれる児どもたちが
黑い太陽のしたで斑に爛れ
掠れた聲で訊ねる

        私たちの腕はかえしてくれますか
伸びきった鎖は爆音をたてさらに強く牽かれ
閉じない円を描く私の両脚は螺旋よじれる

【22D04AN】「煌びやかな悖理はいり」よりⅠ
*画像は「Dream by WOMBO」にて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。

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