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「エッセイ」とは何か

文章には様々なスタイルがある。ライターの古賀史健さんは、『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』の中で、とくに本、インタビュー、対談、エッセイの4種類について詳しく解説している。

ぼくは本以外、つまりインタビュー、対談、エッセイは仕事で書いた経験がある。中でもこれまで仕事の主軸にしてきたのが、インタビュー記事だ。

会社員時代にプライベートでインタビュー記事を書きまくってSNSにアップしていたら、「中村さん、うちのメディアでインタビュー記事を書いていただけませんか? もちろん原稿料はお支払いします」と知人の経営者から言われたのがきっかけで、「会社を辞めてフリーランスになろう」と決意したくらいであるから、自分でも自信を持ってやってきたし、周囲からもインタビューライターとして一定の評価をいただけていることを感じている。

※先日書いた「インタビュー記事のアドバイス集」も好評いただいているので、よろしければご覧ください。

インタビュー記事についての古賀さんの言葉にも深く頷いた。インタビューライターとしてこれからも生きていくことは、きっとできると思う。

ただ、その後に書かれていたエッセイの解説部分を読みながら、直観的に「やっぱり」と思ったのである。

「ぼくはエッセイの方が好きだし、向いていそうだ」

以下に、刺さった古賀さんの言葉を一部抜き出してみたい。

エッセイは、「巻き込まれ型の文章」だ。
洗濯物を干していたら、急に雨が降り出した。部屋の掃除をしていたら、引き出しの奥からむかしの手紙が出てきた。同窓会に出席したら、担任だった先生からこんなことを言われた。そうした日常の些細な出来事に期せずして巻き込まれ、そこから生まれる「内面の変化」を軽妙に描いたものが、エッセイだ。
感覚的文章(エッセイ)の根底には、徹底した「観察」がある。
エッセイストだからといって、その人のまわりに特別な事件があふれているわけではない。感受性にすぐれた、観察者——つまりは取材者——としての日常を過ごしているからこそ、彼ら・彼女らはなにかを見つける。とても事件とは呼べない出来事に、ほかの人が見過ごしてしまうような日常の些事に、こころを動かされる。そしてほんの数秒、あるいは一瞬かもしれないこころの揺らぎを逃すことなく、そこに的確なことばを与えていく。彼ら・彼女らにことばを与えられた些事は、多くの読者が日常の中で経験していたはずのことだったりする。だからこそ読者は、そのエッセイに共感する。
エッセイとは決して「自分の思いをつらつらと書き綴ったもの」ではない。むしろ、取材者の基礎なくしてエッセイなど書けないし、すぐれたエッセイの書き手は、ひとりの例外もなくすぐれた取材者だ。
エッセイストたちは、みずからが観察したものを、克明に描写する。「意味」に偏った抽象画ではなく、ただ「わたしの見たもの」を写生する。そのていねいな情景描写が、心象風景とシンクロしていく。たとえるなら、一輪挿しの花を描写するだけで、さみしさが立ちあらわれる。「さみしい」とか「孤独だ」とかの直接的な感情の言葉に頼ることなく、みずからの心象を描いていく。

これらは、ぼくが心のどこかで実感しながらも、まるで言語化できていなかった説明だった。古賀さん、すごい。。(ちなみに、本ではコラムとエッセイの違いも解説されていて、そちらも興味深かったのでぜひ読んでいただきたい。)

今年2月にライティング講座の「ぶんしょう舎」で登壇させていただいた際、ライター齊藤綾乃さんの記事「エチオピアを共に旅したヤギが「晩ご飯」に出てきた」の添削事例を紹介するなかでも、まさに同じ話をした。「直接的な言葉に頼ることなく、表現してみましょう」と。

ぼくはこれまで、「仕事の記事ではないけれど、書かずにいられなかったこと」や「何か発信する価値があるんじゃないかと思ったこと」を、Facebookやブログでたくさん書いてきた。それらの「名前のなかった文章たち」は、きっとほとんどが「エッセイ」だったのだと思う。古賀さんの説明を読みながら、静かに感動していた。

同時に、かつてぼくが書いてSNSで話題になった文章たちも、インタビュー記事ではなく、みなエッセイだったことに気付いた。

最後に古賀さんは言う。

確かな観察眼と、描写力。そして「巻き込まれた自分」までも観察の対象としてしまう、「わたし」との距離感。感情のことばに頼ることなく、手の届く範囲の世界を観察し、変化する自分のこころを観察しよう。すぐれたエッセイとは、虫めがねを片手に書かれるものなのだ。

ぼくは「エッセイ」を、もっと極めたい。そして、自身のバックグラウンドのひとつである「旅」と組み合わせたい。旅に絡んだエッセイストとして活躍したいと、今は思っている。

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