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鹿児島の旅 【Day6】

10:30にチェックアウトし、車で「仙巌園」に向かう。

実は前夜、長島町でお世話になった料理人のカイユーヤくんからこんな連絡をいただいた。

「明日は鹿児島市内で何されるんですか? 仙巌園ってところに行こうと思うんですけど、もし時間合えば一緒に行きませんか。一応ガイドとかしてたのでひと通り案内できます!」

彼もちょうど市内に出てきているらしい。仙厳園近くの洋館を改装したスタバは先日行ったのだけど、仙厳園そのものは見ていなく、かつどんな場所なのかもわかっていなかった。そう伝えると、

「仙巌園は島津家の別邸で、当時の別荘みたいなものです。植物園にもなっていてものすごく綺麗です。となりには集成館という薩摩の歴史と明治から昭和にかけての工業の歴史が詰まった施設があります」

と教えてくれた。

これで思い出したのは、長島滞在2日目の夕方の出来事だ。外出から戻り、カイくんの家の2階で休んでいると、夕食の準備をしていた彼が、Podcastで「コテンラジオ」という歴史をおもしろく学べる人気のラジオ番組を聴き始めた。スピーカーから流れていたので、ぼくの部屋にも聞こえてきた。

コテンラジオの存在は知っていたものの、実際に聴いたのはこれが初めてだった。ぼくの好きな吉田松陰の獄中でのエピソードが取り上げられていた。司馬遼太郎の『世に棲む日日』で読んでこの話を知っていたこともあって、とても楽しかった。

下の階に降りたとき、「コテンラジオおもしろいね。カイくんは歴史が好きなの?」と尋ねると、「ですです」と言うので、そこから少し話が盛り上がった。ぼくを仙巌園に誘ってくれたのは、きっとあの会話もあったからだと思う。

仙巌園に着いて、カイくんを待つまでの間、隣にあった「薩摩切子」のショップと工房を見学した。職人さんたちの技に見入ってしまった。

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しばらくしてカイくんが到着。彼はこの場所が大好きだそうで、年パスを購入していた。

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見事な解説で「集成館」を案内してくれるカイくん。ひとりでさらっと見ると20〜30分くらいで見終わりそうなところだが、1時間半近くかけて丁寧に説明してくれた。ぼくは幕末の薩摩の歴史に疎かったので、とてもおもしろかった。とくに、この集成館をつくった島津斉彬に興味を持った。

江戸末期、アヘン戦争で中国が負け、植民地化政策を進める西欧列強が日本にやってくるのも時間の問題と思われていた。これに強い危機感を抱いた島津斉彬は、西欧の科学技術を導入して、日本を西欧列強のような国に生まれ変わらせたいと考えた。その後、薩摩藩主となった斉彬が、この場所に「集成館」という工場群を築き、製鉄・造砲・造船・紡績・ガラス・印刷・写真・食品加工等、多岐にわたる事業を展開する。これが日本の近代化に大きく貢献した。ちなみに薩摩切子もまた、斉彬が集成館で始めたものだった。

島津斉彬、西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀をはじめ、多くの傑人が薩摩から出ている。その背景が、集成館を見学しながら少しわかった気がした。薩摩人はおもしろい。司馬遼太郎の小説で、幕末の歴史を勉強したい。

カイくんと別れ、再び霧島市へ。妙見温泉の「田島本館」にチェックインした。

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これもまた奇遇なのだが、年始に兄に「鹿児島へ行く」と言うと、「確か有川さんが霧島にいるはずだよ。連絡してみたら?」と言われた。

「有川さん」とは、作家の有川真由美さんのことだ。『いつも機嫌がいい人の小さな習慣』『一緒にいると楽しい人、疲れる人』など、著書累計100万部を超えるベストセラー作家である。

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5年前の台湾自転車旅の際、編集者の兄が台湾留学経験のある有川さんを紹介してくれ、現地の方とつないでいただくなど、たいへんお世話になった。

ぼくが高雄の高校でスピーチすることになったのも、有川さんの知人の高校教員の方が高雄で招待してくださったからだ。その話は以前、「朝日新聞デジタル&TRAVEL」での連載で書いた。

久しぶりに有川さんにご連絡してみると、「ぜひ夕食をご一緒しましょう」と言ってくださった。この「田島本館」の社長や支配人がお知り合いとのことで、宿の予約までしてくださり、ここで会うことになった。なんと温泉付きの客室!

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それまでの時間、周辺観光を兼ねて6kmほどランニング。犬飼の滝や和気神社、熊襲の穴を見てきた。里山の中を走るのは気持ちよかった。

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温泉も最高で、きず湯、胃腸湯、神経痛湯などの浴槽があった。神経痛やリウマチに効くと評判の湯だそう。個人的にはきず湯がとても気に入った。手先までジンジンしてきて不思議な感じがした。創業は100年以上前で歴史もある。

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そして夜、有川さんと再会。作家になられた経緯など、貴重なお話を今このタイミングで聞けて、本当に勉強になった。

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話が盛り上がってくると、オーナーの田島建夫社長が顔を出された。この田島社長、実は観光業界ではとても有名な方で、テレ朝「激レアさんを連れてきた。」やテレ東「カンブリア宮殿」にも出演している。

彼はこの霧島の地に、「天空の森」という究極のリゾートを作った。東京ドーム13個分の広大な敷地に、点在するヴィラはわずか5棟。1棟1泊30万円〜という日本屈指の高級宿だ。いつか泊まって温泉に入りたい。

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この田島社長、お話を聞いているだけでバイタリティーが伝わってくるし、オーラも感じられた。JR九州の「ななつ星」の誕生にも大きく関わっていらっしゃる。物事を見る視点が常人とは違っていた。長期的視野に立ち、目先の利益にとらわれず、遥かに先を見ている。有川さんだけでなく田島社長にもお会いできて、運がいい。

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今朝の便で東京に戻ってきた。一週間の滞在で、鹿児島に人のつながりができた。今回の旅はこれで終わり。また遊びに来たい。お世話になった方々、ありがとうございました!

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