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「チケット購入ミス」から生まれた、パリでの奇跡的な出会い

パリの宿のラウンジで、ぼくはパソコンを前にうなだれていた。オペラ・ガルニエ(パリ・オペラ座)の見学チケットを、日時指定を間違えて購入してしまったのだ。翌日の11月14日10時半で買うべきところを、15日10時半で買ってしまった。

でも15日は、午前の鉄道でルーアンへ移動する日なので、見学は難しい。おまけにキャンセルのできないチケットだった。

結局14日10時半のチケットを買い直し、間違えた分は諦めるしかない。チケット代は15ユーロだから、約2400円。痛手だけど仕方ない。。。

だけど14日の朝、「せめてどなたか、旅行者でも在住者でもいいからパリにいらっしゃる日本人に差し上げたい」と思い、ダメ元だけどX(Twitter)で聞いてみた。

そしたら夜になり、「普段はそんなにXを開かないんだけど、たまたま開いたらあなたの投稿が出てきて」と、奇跡的に15日にオペラ・ガルニエに行ってくださる方が現れた。

パリを拠点にご活躍されている、ソプラノ歌手の松井菜穂子さんだった。ご連絡いただくまで存じ上げなかったのだが、あとですごい方だと知る。

松井菜穂子さんのオフィシャルサイトより

「チケットはおいくら?」と聞かれて、「ぼくの過失なので、無料で結構です」と言ったのだが、「それじゃ悪いわ。でもあなたに送金する良い方法がわからない」と。ぼくもわからなかった。海外から日本の銀行口座に送金すれば、大きな手数料がかかってしまう。

そんなとき、地図を見てみたら、オペラ・ガルニエと、15日朝にぼくが向かうパリのサン・ラザール駅は、わずか徒歩10分の距離だった。10時10分にオペラ座前で待ち合わせすれば、一瞬だけお会いして、10時40分の鉄道に間に合いそうだ。

そういうわけで無事、松井さんにご挨拶できた。当初諦めていたチケットの代金まで支払ってくださっただけでなく、なんとプレゼントまでいただいてしまった。

「あなたのフランス人との交流のエピソードも読みましたけど、とても良かったわ」

松井さんはソプラノ歌手として、ウィーンの楽友協会でもコンサートを行ったほどの方。ぼくも学生時代に楽友協会やパリのシャンゼリゼ劇場で演奏した経験があるので、ほんの5分程度だったけど、音楽の話で盛り上がった。来年4月には東京・大手町でのソロコンサートを予定しているとのこと。

「あなたともっとお話したかった」
「また来週パリに戻ってくるので、もしお時間が合えばぜひ!」

2024年4月のコンサートチラシ

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そして翌週、ノルマンディー地方の周遊を終えて再びパリに戻ってきたぼくは、本当に松井さんと再会した。一緒にマルモッタン・モネ美術館で絵画鑑賞し、その後人気のお店でおいしいランチをご馳走してくださった。

パリの「Le Bois」にてランチ

松井さんのこれまでの人生についても伺えた。とくにソプラノ歌手として中国でご活躍されていた時期のお話や、パリに移住した経緯などについて。2010年には「日中友好に貢献した60人の日本人」のひとりとして中国政府から表彰を受けたそう。改めてすごい方と知り合ったものだ。貴重なお話を聞かせていただいた。

チケットを買い間違えたときは、「うわー!やってしまった。。。キャンセルもできない。。。」と絶望していたのだけど、むしろそのハプニングが、不思議なご縁を引き寄せてくれた。

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