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【創作経済】ハンドメイドジュエリー屋ノブさん(アルゼンチン/ブエノスアイレス)

アルゼンチンのブエノスアイレスで日曜日だけ開かれる「サンテルモ日曜市」は、たくさんの路上ワーカーたちがお店を出し、地元の人と観光客で賑わっている。
僕も観光客としてフラフラ歩いていると、日本語の会話が聞こえてきた。日本人のお客さんと店員が日本語で話している。いちど通り過ぎたが、やはりナニカ気になったのでUターンして話しかけてみることにした。
その日本人は初対面なのに壁をつくらないオープンマインドなノブさんだった。気さくな人で、僕の不躾な質問にもなんでも素直に答えてくれる。優しい人間性に僕はホレた。

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ノブさんは6年前からジュエリー制作を独学でスタートし、いまではそれで生活できるまでに成長した。貯金もいくらかある。路上出勤時間は10時から18時。出勤場所は平日だと人通りの多い繁華街、週末だとサンテルモ日曜市。
路上ワークをはじめた頃は、場所取りもなかなか上手くいかなかった。でもいまでは、周りの路上ワーカーたちと仲良く挨拶を交わし、同業他路上ワーカーたちが教えを請いに来るほどだ。独学で学んだスペイン語で、商売も会話にも困らない。
「サラリーマンについてはどう思う?」
「感謝しかないな。毎日同じ時間に起きて働いて。それで税金払ってくれてるからキレイな街があんねやろ? スゴイことやで」
「サラリーマン経験はある?」
「あるけど性格に合わずに辞めたわ」
「将来の不安とかないんですか?」
「ないと言えばと嘘になるけど、なんとかなるやろうし、なんとかするさ」軽やかに答えてくれたが、この言葉に僕は不思議な説得力を感じていた。

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いろんな苦境を乗り越えてきたからこその言葉。言葉に説得力がともなった人間力を感じた。ノブさんに限らず、僕が出会った路上ワーカーたちはみんなタクマシイ人間力を持っていて、僕はその美しさにいつもホレボレしてしまう。喜んでもらえると思って、そんな話も彼にしてみたが、ノブさんは「あ、そう?」と、軽く受け流した。大きな人だった。


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「路上ワークの幸福論」(CCCメディアハウス)

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