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「断られない提案」をする2つの前提

このnoteの概要

こんにちは、村井庸介です。
就職・転職における内定取り消し、自宅待機が増え今後のキャリアについて悩む方の話を聞く中、僕が世の中に貢献出来ることは何かと考え、働き方・キャリアについて、出版した2冊の著書をもとに、このnoteを始めました

前回までは、GISOVという提案の「型」を使った、僕の若かりし頃の事例を営業、管理部門など様々な立場からお伝えしてきました。
今回からは、「GISOV」を使って提案をする際に注意すべきポイントを、具体的に挙げていきます。

「相手が却下する理由」をつぶしておけば、提案は承認される


提案は、承認されてこそ意味があります。

却下されるとは、「その提案を受け入れても、メリットがないよね」と相手が判断するということです。そして、価値がないと受け止められ、実行に移すことができなくなった瞬間に、その提案はただの机上の空論となります。

では、限りなく100%に近い確率で提案を承認してもらうためにはどうしたらいいでしょうか?

答えは、「相手が却下する理由」をなくすことです。
「なんだ」と思われるかもしれません。まさに「卵が先か、ニワトリが先か」のような話です。

しかし、「どうやったら承認してもらえるか」を考えるよりも、「却下されるとしたら理由は何か。どうやったらその理由をつぶすことができるか」と考えるほうが、提案をブラッシュアップする方策が具体的になるのです。

では、どうやったら「相手が却下する理由」を正確に予測することができるでしょうか。ポイントは2つです。

①相手のことを徹底的に知ること
②「相手によくなってもらいたい」という動機を忘れないこと

①相手のことを徹底的に知る

まず、提案するにあたって、相手のことを徹底的に調べるのは基本中の基本です。GISOVのうち、ゴールとイシューでは、相手が直面している問題の本質をつかむことが重要です。

これまでお話ししてきたように、当事者(提案の相手)のゴール設定自体がずれていることは、意外によくあります。それによって、イシューのとらえ方も間違ってしまうのです。

そもそも中長期で実現したい「大きなゴール」は何なのか。そして目の前のイシューを「大きなゴール」と照らし合わせながら、いま取り組むべき「小さなゴール」を設定し直すことで、問題解決に近づくことは多いのです。

言い換えれば、相手が抱えている問題の本質は何で、どうなったら解決といえるのか、何があるから困っているのか(あるいは困っていると思い込んでいるのか)を、冷静に、客観的に見極めるということです。

そのためには、相手が置かれている状況、業界全体の動向、従業員の心理などに関する正確な情報を、できるだけたくさん集める必要があります。

相手への直接のヒアリングは、多くの場合、行うでしょう。その際には、相手の主観に飲み込まれないように、努めて冷静に聞きます。

相手はそれぞれの立場で、目先にある問題をなんとかしたいと躍起になっています。そこで自分は、「ちょっと引いた視点」で、客観的に聞くことを心がけるわけです。「ちょっと引いた視点」とは、野村総研で先輩からよく言われた、「お客さんが言っていることを信用するな」という言葉に表れています。

「相手がゴールだと思っていることは本当か?」
「そのイシューは本当に最優先か?」

という「疑い」を持って聞き、その上で自分なりの「本当はこうじゃないか?」という仮説を立てるのです。

ただし、「疑う」といっても、相手を頭から信用しないという意味ではもちろんありません。問題の当事者の視点は、視野が近視眼的になるのが当たり前。だからこそ、その視点だけでは見えないアイデアを柔軟に生み出すために、こちらは意識して「冷静な視点・立場」を保つのです。

さらに当然ですが、客観的な情報収集もします。相手の会社のウェブサイトで、概要や沿革を知るのはもちろん、会社のミッションやビジョンといった、目指している方向性も確認します。上場会社であれば財務情報をすべて見ます。知らない業界であれば、関連する書籍や雑誌を買ってきて全体像をつかみます。

大事なポイントは、そもそもなぜこの会社が成り立っているのか。この産業はどういう環境に置かれていて、その中でこの会社はどういう立ち位置なのか。そういう環境を把握することです。場合によっては競合する会社についての情報も集めます。

相手の情報を正しく集め、自分のことのように理解する。そうしてはじめて、相手が抱えている問題の重要性や緊急度が浮かびあがってきます。

すると、「的外れな提案」をすることがなくなりますから、「却下される理由」を減らすことになるのです。いわば、「かゆいところに手が届く提案」ができるわけです。

②「相手によくなってもらいたい」という動機

そもそも提案が承認されることの喜びとは、「相手の問題が解消できて」「いまよりもよくなり」、結果「ありがとうと言われる」ことであるはずです。これは、すべての仕事の喜びでもあるでしょう。

単純に便利なフレームワークとして「GISOV」を使うことも可能です。しかし、それだけでは往々にして「相手によくなってもらいたい」という「提案(仕事)の本質」が置き去りにされてしまうのです。仕事とは、誰かが編み出したフレームワークに事実をあてはめるというような、合理的な側面だけで完結するものではありません。「よくなってもらいたい」「喜んでもらいたい」という提案者の「想い」が相手に伝わったときに、はじめて提案に命が吹き込まれます。それがバリューにもなるのです。

仕事においては、提案は多くの場合、ものごとの始まりです。提案後に始まる「業務」とか「プロジェクト」といった新しい仕事の起点なのです。その段階で必要になるのが、「これならやれるね」「結果が出そうだね」という成功イメージです。そのイメージが、相手の組織の中で空気のように浸透していなければなりません。

成功イメージが共有できないまま、新しい仕事を「あてがわれる」ことを想像してみるとわかりやすいでしょう。トップや上司がいつの間にか決めた新規のプロジェクトをやらされる。ただでさえ忙しいのに、急に新しい仕事が増える。「なんだよ」「面倒だな」と感じてしまうのは、「なぜそれをするのか」「成功するとどんないいことがあるのか」がわからないからです。

次の言葉も、野村総研の先輩から聞いたものです。

「プロジェクトが成功する要因は、キックオフのときに、成功できると思っている人たちが集まっていることだ」

そもそも企画の中身がどうこう以前に、いちばん大事なことは、メンバーが「成功する、やれる」と信じていることだというのです。おそらくこの言葉に根拠はないでしょう。先輩方の経験則から生まれた言葉だと思いますが、自身の経験を振り返っても間違いなくその傾向があります。

つまり、提案の段階で、相手の組織全体にそういう空気感をつくってあげることが重要なのです。

そのためには、提案者自身が「こうすれば、必ずよくなる」という確信を持っていなければなりません。そして、想定できるリスクと対処策は、あらかじめすべて明らかにしておかなくてはなりません。

障害を一つひとつ挙げて、「こうなった場合には、こうすれば解決できます」と、実現の可能性、成功の「絵姿」を具体的に見せるのです。

その上で相手に「それならできそうだね」と信じてもらうためには、確信をストレートに伝えるのがいちばんの近道です。
それが「却下する理由」をつぶすということです。「よし、やってみるか!」と相手の腰を上げさせ一歩を踏み出させる。

いったん動き出せば、勢いがついて勝手に回り始めます。

提案とは、動かない車輪を転がす最初の一押しです。それは人間の心を動かすことでもあります。そのときに、唯一の強力な武器が「想い」なのです。

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