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「円安ニッポン」の中で、僕たちはどう生きるか。

インドネシア人の経営者の友人と先日ご飯を食べていた時、「日本、本当にヤバくないですか?」と言われました。

彼曰く、コロナ禍の2年間、世界中の国が国境を閉ざしていた。その2年の間に各国の政府が、成長のためにどんな施策を打ってきたかの結果が、いざ国をオープンにした今、国ごとに比較、相対化され表面化している。そして、その一端が「急激な円安」という結果であり、益々日本の国力が弱くなり、貧しい国になっていっていると。

確かに、1月に1ドル=115円だった為替相場が、直近150円台まで急速に円安が進みました。(アメリカのインフレがピークアウトしたのではという見方もあり、執筆時点の2022年11月17日段階では139円)

急激に進んだ「円安」の背景には、アメリカなどのインフレの加速、物価が急上昇し、日本にもその影響が及んできています。

食材費や電気代など生活コストがぐんぐん上がり、特に輸入されたものを買おうとするとびっくりするほど高い。僕たちの事業の面でも、サーバー代の値上がりが予想されたり、力を入れているグローバル採用の予算を多めに見積もる必要が生じたりと、様々な影響が出ています。

世界を見渡すと、ウクライナ危機や台湾問題、アメリカ社会の分断など様々な問題が噴出していて、「これから一体、世界は、日本はどうなってしまうのだろう」と漠然とした不安に押しつぶされそうになります。

しかしながら、この不安は今に始まったことではありません。

円安が進むずっと前から、僕たちは「失われた30年」の時代を過ごし、その間に世界における日本のプレゼンスは低下。1994年には17.8%だった主要国における名目GDP国別割合は、2004年には10.9%に、2020年には6.0%まで低下。今後2050年にかけて3.2%まで低下してしまうという試算があるそうです(World Bank、OECDの長期GDP予測に基づき経済産業省が作成した資料より)。 

かつて「経済大国」と呼ばれた存在感は残念ながら影をひそめ、じわじわと国力が下がり、「経済小国」になっていきます。それに伴い、安全保障の面でも、防衛力が縮小し、安全が脅かされた場合にも充分な対抗策を持ち得なくなる可能性が高まります。国力は、国民が豊かな生活を享受できるためだけではなく、国民の安全を守るためにも必須です。

一方で、日本には素晴らしい面がたくさんあります。こういう“非常時”にこそ、知恵の絞りどころではないかと思ったりもします

冒頭に紹介した知人からは「日本人はもっと政府に対して怒ったほうがいい」とも言われました。

たしかに政府に対して言いたいことは、僕にもたくさんあります。例えば、既に3兆円を超える莫大なガソリン補助金予算の原資は借金です。現在の国民の負担を補助するのには致し方ない面もあろうかと思いますが、サスティナブル(継続可能)な解決策ではありません。しかも、この借金を払うのは、僕たちの子供達、次世代の人たちです。この莫大な投資を、もし未来を担う子供達の教育などに使うことができれば、どれだけ未来にとっていいのだろうと。

一方で、ある程度年齢を重ね、多くの素晴らしい政治家や官僚の方々とお会いし、活躍されているのを拝見していると、様々なステークホルダーがいてリソースが限られる中、すべての人を満足させることは不可能であり、何をやっても非難される現状において、政府が実際にやることの困難さもよく理解できます。

なので、我々は批判するだけでなく、「では今、何をすべきか」を一緒に考え、自分達ができる行動をひとつずつ起こしていくことが大事なんだろうなあ、建設的なんだろうなあと思います。

先ほど「失われた30年」という表現を使いましたが、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事が「これは失った30年なんだ。この失った30年は、我々経営者の責任であり、真摯に受け止め反省し改善していかなければならない。」とおっしゃっていた言葉に深く共感しました。

 “受け身”ではなく“主体”“当事者”として、課題に向き合い、たとえ始めは小さなアクションでも、具体的にアクションしていくことが大切だと考えています。

では、具体的にどんなアクションなのか? 

まず、社会全体の視点でいうと、やはり官民一体となって「新しい成長産業」を生み育てていくことでしょう。

この国が今必要としていることは「お金や人の流動性を高めること」だと思います。停滞した、成長率が低い産業から、成長率が高い産業へと、お金や人が動いていくことにより、マクロとして全体的な成長率があがっていくこと。

優秀な人材を送り出していく労働流動性の活性化も重要です。政府が現在強く打ち出しているスタートアップ支援には大賛成です。

それに、円安はデメリットばかりではありません。視点を変えると、実はそこに「勝利のシナリオ」が潜んでいます。

実際、日本電産や三菱商事など海外でモノ・サービスを売っている企業は軒並み増収増益を発表しています。業績アップが続けばいずれ賃金アップにもつながり、長年苦しめられてきたデフレスパイラルから脱却できる可能性も見えてきます

国内生産への転換に舵を切る企業も今後でてくると思います。国内で安く作って、海外で高く売る。かつてソニーがトランジスタラジオを、キッコーマンが醤油を世界に売り込んだように、付加価値の高いプロダクトで外貨を稼いで豊かになる。まさに高度経済成長期で国力を伸ばしたモデルの21世紀版に、挑戦できるチャンスが広がっています

うまくいけば、インフレ経済で成長する「正のスパイラル」に乗ることができますし、インフレは負債を実質的に減らす効果もあるので、将来世代の負担を軽くするメリットも。

また、各国で政治の不安定さが高まる中、相対的に日本における政治の安定さは際立っており、安心してビジネスができる国、安心して安全に生活できる国になってきています。

最近も、国境がオープンになり非常に多くの機関投資家や経営者が、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどから押し寄せてきています。彼らが一様に口にするのは「日本という国の魅力」です。

この「勝利のシナリオ」への流れをつくるためにも、日本のプレーヤーである僕たち一人ひとりが、グローバルで通用するプロダクト、サービスを作り、生産性を磨く努力を一層する必要があります。

僕たちマネーフォワードがやるべきことは、シンプルです。社会全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、僕たちが掲げる「Society Forward」、そしてグローバル化です。

個人・企業がもっとイノベーティブな挑戦ができるように、不便や困り事を解消するサービスをつくり、届けていく。今までやってきたことをさらに激しく、加速していく。組織や事業のグローバル化をより推進していくこと。

来年に控えるインボイス制度においても、対応がかなり大変なことが予想されますが、少しでもスムーズに進むよう、インボイス制度に対応した「マネーフォワード クラウド」をはじめ、より良いサービスを開発し、届けていきたいと思います。

また、最近好評いただいているのは、地銀さま向けに提供しているDX支援サービス「Mikatano(ミカタノ)」シリーズ。IT化が遅れがちな地方中小企業の方でも使いやすいUX(ユーザー体験)にこだわって、すでに20行以上に導入いただいています。先日も四国銀行の山元文明頭取とお話しする機会があり、「とても助かっている」というお言葉をいただき、本当に嬉しくなりました。

現状は足元、国内のマーケットへのフォーカスが第一ではありますが、いずれは、SaaS、フィンテック業界のソニー、キッコーマンとなれるように、海外への展開もしていきたいと考えています。ハードでの海外進出の成功事例はあれど、ソフトはまだまだ少なく、難しいチャレンジという事は十二分に認識しています。

しかし、日本にも、米Indeedを買収して海外売上を急伸させたリクルートさんや、アメリカ企業を始め多くの海外企業を買収しながら海外売上高が半分を占める東京海上さん、M3さんといった素晴らしい先輩企業があられます。こういった先輩企業に学びながら、僕自身もより積極的に海外へ出向いて、グローバルビジネスのアンテナを磨こうと、出張計画を増やしているところです。

というように、僕たちの目の前には「今こそやるべきことリスト」が満載です。

世の中の空気が不安に満ちるときほど、「やるしかない」と燃えるのは、起業家の性かもしれません

ふりかえれば僕が起業したのも、2010年前後の日本が重苦しい雰囲気につつまれ、ものすごい閉塞感を感じている時でした。この閉塞感をなんとか打ち破れないか、と一念発起したことが起業のきっかけとなりました。

危機の時にこそ、新しいチャレンジができる強く志が高い人材がでてくるはず。ピンチをチャンスに変えようと踏ん張れる人が一人でも増えたらいいなと願いつつ、僕たちは僕たちのやるべきことに集中して進めていきたいとおもいます。


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