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なぜ女子レスリングは強いのか?ー知られざる女子レスリングの歴史 巨人 福田富昭

女子レスリンングをオリンピックの種目にするのに、大きく貢献したのが、「福田富昭」という日本人であったということをご存じであろうか。

そもそも、女子レスリングの歴史はそれほど古くない。世界選手権が初めて開かれたのも、1985年である。参加国は、フランス、ベルギー、日本の3か国のみであった。

日本から出場した選手が、52キロ級大島和子のみである。柔道3段の選手であった。そこから、「福田富昭」という巨人が動き出す。

福田は、ビジネスマンであった。そのため、「製品」の作り方と売り方に非常に長けていた。

まず、強い「選手」を作り出すのに、お金が必要なのは今やスポーツ界では、常識であろう。そのために、女子レスリングをオリンピックの種目にしようと考えた。

オリンピック種目になると、日本スポーツ協会から強化費がもらえ、それによって、その名の通り、強化ができるのである。また、世界レスリング協会にもお金が入り、女子レスリングの普及に使えるのだ。

当時の規則では、オリンピックに種目が採用されるには、20カ国以上で、種目がプレーされてなければいけなかった。

アマチュア・スポーツの世界での「お金」の流れは、非常に単純である。プロリーグを持たないスポーツの国際市場は、完全に各々の国際競技連盟によって独占されている。

すなわち、「世界選手権」を頂点とし、「各々の国の選手権」があるという構造である。

この上に、IOCがオリンピックという装置を使って、君臨している。オリンピックという装置があまりにも、精巧に作られているため、アマチュア・スポーツ界に流れる「お金」のほぼ全てをIOCが独占する。

そして、そのお金は下流に向かって流れていく、国際競技協会、国のスポーツ協会、そして、各々の国競技別スポーツ協会へと。

この「お金」の流れに与かるためには、あらゆる政治力を駆使しなければならない。なぜなら、どの組織も自らの権益を侵されたくないからである。世界レスリング協会も、女子の種目が増えると男子の種目が減るため、難色を示し続けていた。

そこで、「福田富昭」のような、ビジネスマンでありつつ、政治にも長けた人物が必要となるのである。

福田は、日本女子レスリングの地盤を一から作った人物である。まずは、コーチとして働き、選手を発掘し、強化策をプランし、日本レスリング協会に女子レスリングを認めさせた。そして、女子レスリングの世界的普及にも尽力した。また、自費で強化施設も作った。

福田のビジネス面でのもう一つの顔である、競技の売り方であるが、色々なことをやったが、最も有名なのは、浜口京子と「アニマル浜口」であろう。皆様も一度ならずともアニマル浜口が「気合いだ〜」と雄叫びをあげるシーンを見たことがあるであろう。

実は、アニマル浜口はレスリング経験がなかった。ボディービルダーからプロレスラーに転向している。そのため、浜口京子のコーチからは一回外された。しかし、福田がメディアに取り上げてもらうために、コーチに戻したのである(実際のコーチは別にいた。)

福田のビジネス面での貢献は、経済学でいう、「先行者の利益」を日本にもたらした。オリンピックの正式種目にするために動いていたのであるから、世界の女子レスリング界のことを熟知していたのは、当然であろう。

そして、いよいよ2004年のシドニー五輪の正式種目として、女子レスリングが採用され、日本レスリングの花が開いたのである。吉田沙保里、伊調馨のオリンピック3連覇は、福田がもたらした「先行者の利益」の賜物だ。

それから、20年経った今回のパリ五輪では、女子レスリングは、未だ勢いを失っておらず、メダルが期待されている。福田が築いた基礎の上に、新たな世代が活躍している。かつて、選手だったものは、コーチや協会で働いている。

スポーツ界は、他の市場と比べ珍しいぐらい独占が許されている。すなわち、「先行者の利益」は、ほとんど問題視されない。トップに君臨するIOCを見れば、そのことが分かるであろう。

通常、新規参入者によって、「市場メカニズム」が働くのであるが、IOCが承認するのは、世界に1連盟だけと規定されているので、新規参入のチャンスはないのである。

日本が福田富昭」という巨人を授かったことで得た「先行者の利益」は、スポーツがいかようにして発展するか、強くなるのかということを考える上で、示唆に富んでいる。

例えば、今回の五輪のスケート・ボードであるが、金メダルを取った日本人女性の年齢は、14歳と15歳であった。彼女たちは、明らかに「先行者の利益」に与ると私は思う。ちょうど、運動能力が発達していくタイミングに「スケート・ボード」という市場が開いた。

そして、市場が開いたときに始めたのならば、最も選手経験があったではないだろうか。勝手な推測であるが。これは、堀米雄斗選手にも言えるが、3連覇は夢ではないと思う。

ちょうど、シドニー五輪において、吉田沙保里、伊調馨が金メダルを取った時のように。そして、その後に女子レスリング界を支配したように。

以下の書籍を参照した。






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