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ハローワークの職業紹介サービス運営コストを推計した

前口上

  • ジョブメドレーは医療ヘルスケア領域のダイレクトリクルーティングサービスである

  • 日本国内に求人サイト・人材紹介はさまざまなサービスがあるが、もっとも普及している職業紹介サービスはおそらくハローワークである

  • ハローワークの利用は無料だが、運営の原資は国の予算 (税金) や雇用保険料から成り立っている

  • ハローワークの "職業紹介" 機能だけを抜き出して、民間の人材サービス・職業紹介事業と比較できないか、と考え調査しはじめた

  • が、奥が深く、明確な数字が出せない….。さまざまな公開資料を調べ、粗いが推計値を出した

  • せっかくなので公開し、より詳しい方に教えていただくための参考資料とする

ディスクレイマー

・本 note はあくまで個人の趣味による調査の途中経過です
・ハローワークの運営にかかる行政コストはさまざまな費目で点在しており、公開されている情報のみから推計をしていますが、的外れである可能性もあります
・誤りや考慮漏れあればご指摘ください

そもそもハローワークとは

ハローワーク |厚生労働省


ハローワークの役割については下記の1枚がわかりやすい。主な業務は「職業紹介」「雇用保険」「雇用対策」の 3つである。この note では「職業紹介」について調べる。

公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績(令和3年11月) より


ハローワーク職業紹介 規模調査

どのぐらい求人があるのか / どのぐらい求職者がいるのか

  • 有効求人数・有効求職者数どちらも200万ぐらい

  • リーマンショック、コロナ禍で影響を受けている

どのぐらい就職を決めているのか

  • 就職件数 (実数) は2011〜2012年あたりがピーク

  • 2021年は年間で 125.9万件 = 約10.5万件/月 の就職を決めている

情報元

(ぜんぜん OGP 画像出ない…)

用語の定義

新規求職申込件数
期間中に新たに受け付けた求職申込みの件数をいう。

月間有効求職者数
前月から繰越された有効求職者数(前月末日現在において、求職票の有効期限が翌月以降にまたがっている就職未決定の求職者をいう。)と当月の「新規求職申込件数」の合計数をいう。

新規求人数
期間中に新たに受け付けた求人数(採用予定人員)をいう。

月間有効求人数
前月から繰越された有効求人数(前月末日現在において、求人票の有効期限が翌月以降にまたがっている未充足の求人数をいう。)と当月の「新規求人数」の合計数をいう。

就職件数
有効求職者が就職したことを確認した件数をいう。

一般職業紹介状況(職業安定業務統計):集計結果(用語の解説)


ハローワーク職業紹介 コスト調査

運営コストが明確にわかる資料が見つからない

Works University 労働政策講義 2020 - 11. 公共職業安定所 に下記のような記載がある。

  • ハローワークの運営にかかる費用の詳細は公開されていない

  • 少なくとも850億円は予算が充てられているらしい


厚生労働省の予算案を見てみる。

雇用関連のパートに記載多めだが、このページ以外にもハローワークに関する記載がある。

令和4年度厚生労働省予算案の概要 より

上記は一般会計だが、特別会計にもハローワーク予算ある。

よくわからない....。が、見つけられただけでも、ハローワーク全体2,700億円/年以上、職業紹介だけに絞っても少なくとも数百億円はかかっている。


推計1. 人員数+システム運営費からざっくり試算

はっきりとした情報がないので公開情報から推計するしかない。

前述の 公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績 にある数値から雑に計算してみる。


推計2. 旧:三和総合研究所のコスト分析を踏襲

さすがにざっくりすぎるので、別角度でも調査。

公共職業安定所 - Wikipedia の「過去の民営化議論」に下記記載がある。

ちなみに2004年時の三和総合研究所の推計によれば、職安におけるコストは就職1件当たり約6万円、都市部は約7〜11万円であり、この時期実施された長期失業者就職支援の一部民間委託による成功報酬は60万円だった。

公共職業安定所 - Wikipedia

年は異なるが「労働市場サービス産業の活性化のための提言」の中の下記を指しているものと思われる。ちなみに、旧:三和総合研究所は、現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング。

労働市場サービス産業の活性化のための提言 の概要 P.3

元資料の「別冊資料編」をたどると、コスト分析の推計方法が記載されていた。

労働市場サービス産業の活性化のための提言 別冊資料編 P.29-30


当コスト分析の推計方法要約

  1. 公共職業安定所 (ハローワーク) の中でも、職業紹介に従事している職員数を『労働省職員録』から抽出し、役職に応じた想定年収を乗じ、『賃金労働時間制度等総合調査』から労務コストも加算し、人件費を算出

  2. 1で得られた人件費に、売上高・人件費比率を乗じて総コストを算出

    • 売上高・人件費比率は、総務庁『産業連関表』(1995年) より、労働者派遣サービスにおける常用雇用者の賃金と生産額の比率を計算して適用

  3. 2で得られた総コストを就職件数で除した


この手法の問題点

ただ、この推計手法にも問題があるように見える。

  1. 2万人以上いる非正規職員の人件費が含まれていない

    • この調査時点 (2002年) では非正規職員が多くなかったから?

  2. 図表3-2 を見る限り、労務コストが計算に入ってない?

  3. 人件費以外のコストを『産業連関表』の「労働者派遣サービス」における常用雇用者の賃金と生産額の比率から算出しているが、職業紹介と派遣は別物では...?

    • ただ図表3-2の数字を見る限り、全コストに対する人件費割合を 46.8% としていて職業紹介としては少なめ

    • しかし、これは 1 と 2 が入ってない人件費なので、これを含めると逆に人件費率が高くなりすぎる予感


最新数値で集計しなおした

上記の問題点を適正なものに変えつつ、最新の数字を用いて集計しなおした。


結果、合計で約1,718億円/年 となった。推計1 とほぼ同じ結果に。

  • 1,718億円 ÷ 就職件数が2021年 約125.9万件 = 1決定あたり約13.6万円


2022年4月時点 調査まとめ

・ハローワークの職業紹介による、就職決定件数は 2021年間で 125.9万件
・ハローワークの職業紹介機能にかかっている運営コストは、かなり粗い推計では 1,718〜1,804億円/年
・就職決定1件あたりにかかっている想定費用は 約13.6〜14.3万円
 
ちなみに ジョブメドレーは最安4万円 からご利用いただけます


Appendix. 周囲からもらったフィードバック

  • もともとの三和総合研究所のコスト分析での想定年収が高すぎるのでは?

  • ハローワーク予算について直接聞きたければ 開示請求 すればよいのでは

  • ハローワークは地方版もあるのでそれも含めるべきでは?

地方版ハローワークについて

雇用に関する国と地方公共団体との 連携状況等について P.28
  • 2021年3末時点で 全国に905ヵ所あり、9,759件の就職決定

    • 1ヵ所につき年10件?

  • 費用は各地方自治体についているのだろうか (未調査)

  • 毎年の就職件数は 職業紹介事業の事業報告の集計結果 でも確認できる

Appendix. 参考文献

文中に出てこないが参考にしたもの。

  • 各都道府県にある労働局およびハローワークの所在地、電話番号、職員の肩書き、氏名フルネームが掲載されている

    • こんなんあるのか....

  • 最新の厚生労働省の組織図、各階案内、各フロア平面図、各課座席表、直通電話番号、内線番号、職員の肩書、氏名フルネームなどが掲載されている

    • こんなんあるのか....

    • 半年に1回アップデートされて販売されている