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ハローワークの職業紹介サービス運営コストを推計した
前口上
ジョブメドレーは医療ヘルスケア領域のダイレクトリクルーティングサービスである
日本国内に求人サイト・人材紹介はさまざまなサービスがあるが、もっとも普及している職業紹介サービスはおそらくハローワークである
ハローワークの利用は無料だが、運営の原資は国の予算 (税金) や雇用保険料から成り立っている
ハローワークの "職業紹介" 機能だけを抜き出して、民間の人材サービス・職業紹介事業と比較できないか、と考え調査しはじめた
が、奥が深く、明確な数字が出せない….。さまざまな公開資料を調べ、粗いが推計値を出した
せっかくなので公開し、より詳しい方に教えていただくための参考資料とする
ディスクレイマー
・本 note はあくまで個人の趣味による調査の途中経過です
・ハローワークの運営にかかる行政コストはさまざまな費目で点在しており、公開されている情報のみから推計をしていますが、的外れである可能性もあります
・誤りや考慮漏れあればご指摘ください
![](https://assets.st-note.com/img/1649694150843-fIRY5ZAKVt.png)
そもそもハローワークとは
![](https://assets.st-note.com/img/1649694038196-HmhBtUf9TX.png?width=1200)
ハローワークの役割については下記の1枚がわかりやすい。主な業務は「職業紹介」「雇用保険」「雇用対策」の 3つである。この note では「職業紹介」について調べる。
![](https://assets.st-note.com/img/1649691776870-aZucjIRBDG.png?width=1200)
ハローワーク職業紹介 規模調査
どのぐらい求人があるのか / どのぐらい求職者がいるのか
有効求人数・有効求職者数どちらも200万ぐらい
リーマンショック、コロナ禍で影響を受けている
![](https://assets.st-note.com/img/1649691981902-HDXbnEMbXG.png?width=1200)
どのぐらい就職を決めているのか
就職件数 (実数) は2011〜2012年あたりがピーク
2021年は年間で 125.9万件 = 約10.5万件/月 の就職を決めている
![](https://assets.st-note.com/img/1649692013559-aAj2lobF7X.png?width=1200)
情報元
(ぜんぜん OGP 画像出ない…)
用語の定義
新規求職申込件数
期間中に新たに受け付けた求職申込みの件数をいう。
月間有効求職者数
前月から繰越された有効求職者数(前月末日現在において、求職票の有効期限が翌月以降にまたがっている就職未決定の求職者をいう。)と当月の「新規求職申込件数」の合計数をいう。
新規求人数
期間中に新たに受け付けた求人数(採用予定人員)をいう。
月間有効求人数
前月から繰越された有効求人数(前月末日現在において、求人票の有効期限が翌月以降にまたがっている未充足の求人数をいう。)と当月の「新規求人数」の合計数をいう。
就職件数
有効求職者が就職したことを確認した件数をいう。
ハローワーク職業紹介 コスト調査
運営コストが明確にわかる資料が見つからない
Works University 労働政策講義 2020 - 11. 公共職業安定所 に下記のような記載がある。
![](https://assets.st-note.com/img/1649692679709-7Wfwu2YJ50.png?width=1200)
ハローワークの運営にかかる費用の詳細は公開されていない
少なくとも850億円は予算が充てられているらしい
厚生労働省の予算案を見てみる。
雇用関連のパートに記載多めだが、このページ以外にもハローワークに関する記載がある。
![](https://assets.st-note.com/img/1649693401836-9NwkE4mYrt.png?width=1200)
上記は一般会計だが、特別会計にもハローワーク予算ある。
ハローワークシステム運営費 (約680億円/年) はここから出されているらしい ref. ハローワークシステム運営費 - JUDGIT!(ジャジット)
が、令和4年度厚生労働省所管 特別会計歳入歳出予定額各目明細書 を見ても、システム運営費は 170億ぐらいしかないように見える....
よくわからない....。が、見つけられただけでも、ハローワーク全体2,700億円/年以上、職業紹介だけに絞っても少なくとも数百億円はかかっている。
推計1. 人員数+システム運営費からざっくり試算
はっきりとした情報がないので公開情報から推計するしかない。
前述の 公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績 にある数値から雑に計算してみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1649694524160-kXEgbcj4AX.png?width=1200)
拠点が全国544ヵ所
各都市の交通の便が良い立地に、広いスペースを確保しているので、地代家賃が大きくかかっていそう
だが、各拠点にかかる想定費用を調べ尽くすのは困難。行政施設の中に含まれていたりする
いったんこれは保留
職員数が 10,148人 + 相談員数(非常勤) 22,439人 が在籍
日経ビジネス記事より、仮に常勤職員の年収を約666万円、非常勤 200万円とすると、人件費が 1,124億円 /年
ただし、この職員数は "職業紹介" 以外に携わる方も含むため実態より多い
この "実態より多い人件費" は、さっき保留した "全拠点の地代家賃" と同じぐらいでは? とめちゃくちゃ雑な仮定をする
これに加えて、システム運営費に直近 約680億円/年 かかっている
合計すると 約1,804億円/年
1,804億円 ÷ 就職件数が2021年 約125.9万件 = 1決定あたり約14.3万円
となる
推計2. 旧:三和総合研究所のコスト分析を踏襲
さすがにざっくりすぎるので、別角度でも調査。
公共職業安定所 - Wikipedia の「過去の民営化議論」に下記記載がある。
ちなみに2004年時の三和総合研究所の推計によれば、職安におけるコストは就職1件当たり約6万円、都市部は約7〜11万円であり、この時期実施された長期失業者就職支援の一部民間委託による成功報酬は60万円だった。
年は異なるが「労働市場サービス産業の活性化のための提言」の中の下記を指しているものと思われる。ちなみに、旧:三和総合研究所は、現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング。
![](https://assets.st-note.com/img/1649744884906-VNGDKMRW1o.png?width=1200)
元資料の「別冊資料編」をたどると、コスト分析の推計方法が記載されていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1649745104020-ldd0MWxrID.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1649745087882-Ip0jINdJ62.png?width=1200)
当コスト分析の推計方法要約
公共職業安定所 (ハローワーク) の中でも、職業紹介に従事している職員数を『労働省職員録』から抽出し、役職に応じた想定年収を乗じ、『賃金労働時間制度等総合調査』から労務コストも加算し、人件費を算出
1で得られた人件費に、売上高・人件費比率を乗じて総コストを算出
売上高・人件費比率は、総務庁『産業連関表』(1995年) より、労働者派遣サービスにおける常用雇用者の賃金と生産額の比率を計算して適用
2で得られた総コストを就職件数で除した
就職件数は、当時は『労働市場年報』だが、現在は前述の 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) に引き継がれている
この手法の問題点
ただ、この推計手法にも問題があるように見える。
2万人以上いる非正規職員の人件費が含まれていない
この調査時点 (2002年) では非正規職員が多くなかったから?
図表3-2 を見る限り、労務コストが計算に入ってない?
役職別人数 x 想定年収 = 人件費 としているような…
賃金労働時間制度等総合調査(現行調査名:就労条件総合調査) には労働費用総額に占める現金給与以外の労働費用は 約18% なので、その分をのせるべき
人件費以外のコストを『産業連関表』の「労働者派遣サービス」における常用雇用者の賃金と生産額の比率から算出しているが、職業紹介と派遣は別物では...?
ただ図表3-2の数字を見る限り、全コストに対する人件費割合を 46.8% としていて職業紹介としては少なめ
しかし、これは 1 と 2 が入ってない人件費なので、これを含めると逆に人件費率が高くなりすぎる予感
最新数値で集計しなおした
上記の問題点を適正なものに変えつつ、最新の数字を用いて集計しなおした。
正規の職員数は 2021年4月1日時点 の数字に
役職者の割合は変わらないものとする
集計元である 労働行政関係職員録 令和元年版 購入したが、数えるの大変なので....
非正規の職員数 (≒ 相談員) も追加
相談員のうち何割が職業紹介業務に従事しているかは不明
だが、公共職業安定所の職業紹介等に関する行政評価・監視 -一般職業紹介業務を中心として- <結果に基づく勧告> の 3. 職業相談員等の非常勤職員の配置及び公募の適正化 によると、ほぼすべてが職業相談部門および求人部門に在籍しているように記載されている
ので、仮に 90% が職業相談関係部門に在籍しているものとした
年収はそのままとする
非正規の想定年収は推計1 と同じとした
労務コスト +18% をのせる
全コストに占める人件費割合は 55% とした
結果、合計で約1,718億円/年 となった。推計1 とほぼ同じ結果に。
1,718億円 ÷ 就職件数が2021年 約125.9万件 = 1決定あたり約13.6万円
![](https://assets.st-note.com/img/1649748910975-zonIDmtWfE.png?width=1200)
2022年4月時点 調査まとめ
・ハローワークの職業紹介による、就職決定件数は 2021年間で 125.9万件
・ハローワークの職業紹介機能にかかっている運営コストは、かなり粗い推計では 1,718〜1,804億円/年
・就職決定1件あたりにかかっている想定費用は 約13.6〜14.3万円
- ちなみに ジョブメドレーは最安4万円 からご利用いただけます
Appendix. 周囲からもらったフィードバック
もともとの三和総合研究所のコスト分析での想定年収が高すぎるのでは?
国家公務員の給与 内閣官房内閣人事局 の「行政職俸給表(一)」に係員・係長のモデル給与がある
ハローワーク予算について直接聞きたければ 開示請求 すればよいのでは
ハローワークは地方版もあるのでそれも含めるべきでは?
地方版ハローワークについて
![](https://assets.st-note.com/img/1649749446267-tDUm8TZE3O.png?width=1200)
2021年3末時点で 全国に905ヵ所あり、9,759件の就職決定
1ヵ所につき年10件?
費用は各地方自治体についているのだろうか (未調査)
毎年の就職件数は 職業紹介事業の事業報告の集計結果 でも確認できる
![](https://assets.st-note.com/img/1649749538493-wMazDmcTWY.png?width=1200)
Appendix. 参考文献
文中に出てこないが参考にしたもの。
各都道府県にある労働局およびハローワークの所在地、電話番号、職員の肩書き、氏名フルネームが掲載されている
こんなんあるのか....
最新の厚生労働省の組織図、各階案内、各フロア平面図、各課座席表、直通電話番号、内線番号、職員の肩書、氏名フルネームなどが掲載されている
こんなんあるのか....
半年に1回アップデートされて販売されている