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全日本シニア大会

朝5時アラームの音で起きる。
人生で1.2を争うくらい5時にパッと起きれた日だった。
7時間睡眠をとるために前日は10時に寝る体制になった。
試合の前日は眠りにくいのがいつもの僕だ。
眠気が来てベッドに横になったはずなのに、目を瞑ってると明日の試合のことを考えてしまう。
頭の中で何回もあん馬から通しを勝手にしてしまう。
どうやって寝るんだっけ?笑
みたいな心境になったことがある人もいるんじゃないか。
確かに最初は眠れる気がしなかった。
でもあらかじめそうなるのは予想済みである。
だから就寝90分前にお風呂に入る、副交感神経を優位にする。明日の不安箇所やタイムスケジュールなど全て書き出す。深部体温が下がるくらいのタイミングで寝る体制に入り、ホットアイマスクをしてリラックス出来る状態を作った。
これをいつもの生活でやっていたから、こういう時も同じサイクルで行えば、同じような状態になる。人間は習慣の生き物、恒常性が備わっているんだな〜とか感じながら眠りにつくことができた。

起きたらまずはシャワーだ。
お気に入りリストの元気が出る系の曲をシャッフル再生しながらシャワーを浴びる。
ちょっと熱いくらいのシャワーを浴びながら脳をちゃんと起こす。
その次はコーヒーを飲み、前屈。やっぱり朝は身体が固まってるので時間をかけて身体をほぐしていく。
平らな場所だと柔軟が不十分なので、ホテルでは枕を2つ重ねたところに足を置いたり、ストレッチポールをベッドの上に置いて柔軟を行う。
柔軟をしながら会場練習の自分の通しを確認する。
左右開脚と前屈、肩の柔軟をホテルのベッドや自室の狭い通路で終わらしたら大体6時ごろ。いつもやったらまだ寝てるなって思いながら一階へ。
ホテルの前で準備体操や軽く歩きながらストレッチその他諸々を行う。
だいぶ体が起きて、6時半に朝食をとる。
スタッフの人は一番早い朝食時間の人に合わせてご飯を食べる。
もちろん今日一番早いのは僕だ。というか朝食時間が6時半スタートだからホテルで一番早いのだ。
試合の日の朝ごはんは軽くする。エネルギーが足りなくなっても困るけど、ホテルのご飯は基本的に普通に食べたら多い。ちょっと物足りないなって思うくらいがちょうどいい。自室に帰りバナナを1本食べて、スタッフのケア部屋に行く。選手のケアをする用のヘアがあるのだが、その部屋はいつも大きめの部屋を取っている。だから広くて倒立バーの補強や体幹トレーニング等をするスペースがあるのだ。そこで少しトレーニングをして、7時半にホテルを出発する。

出発するときのエレベーターで思わぬ奴と遭遇する。
小畠廉生だ。
廉生とは高校一年の時からの付き合いで、俺の永遠のライバルであり、良き友でもある。いつも試合の毎に勝負をしていて、負けたくないし、お互い高みを目指しあっている関係だ。大学3年くらいまでの6年間くらいは一度も勝てなかったけど、最近では勝つこともあり、いつも僅差の戦いをしている。
そして今回の試合に対する僕の思いを知る1人でもある。

よしき:お!同じホテルやったんか!
廉生:そうやねん、よしきも朝練?
よしき:そう。いつも2部練してるから試合の時もそのリズム崩したくなくてさ。
廉生:わかるわー。まぁそれにしても朝はえぇけどな笑
よしき:まじそれな。
廉生:昨日寝れた?
よしき:まぁ一応ちゃんと寝れたよ。廉生は?
廉生:俺も一応寝れた。あんまり考えんようにしてたわ、寝れなくなるから。
よしき:わかるわー。でも俺やっぱり考えちゃったわ!そしたらドキドキして来てたもん笑
廉生:あるあるやな笑 よしきも勝負の大会やし、そうなるわな。
よしき:そやねん。やるしかないわ

エレベーターに乗ってるほんの1分くらいの会話だった。たったこれだけの会話だけだったが、お互いいい緊張感を持っているのがわかった。

7時40分に体育館が開場する。入り口前には一班の選手たちが待っていた。
鹿屋の後輩たち、チーム愛媛、タートルスポーツ、シダックスなどなどもうそろそろ試合を迎える面々がまだ入ってはいけないのかとそわそわしてる様子だった。

体育館に入ると検温と手指消毒。それが終わるとイヤホンをしてアップに入る。
徳洲会に来てからわかったことだが、僕は練習中とか喋らない方が上手くなるタイプみたいだ。
たとえ体操のことであってもあんまり話したり、話されたりしてる時間が長いと、気が散ってしまうのだ。言語を処理する部分と、感覚をフィードバックする部分で使ってる分野が違う感じ。
特に試合の時は周りが気になりがちである。
僕の中で集中するっていうのは海に潜るイメージである。
深さ10mくらいのところで、自分に焦点を当てて、自分の体の状態や感覚に耳を傾けることで少しずつ潜っていく。
一番深いところに来たら、周りの声は聞こえず(気にならず)自分だけに集中できている感じ。
それが誰かに話しかけられたりすると海面に引っ張り上げられるような感じになる。そしてまた時間と労力をかけて潜っていかなければならない。
だからこそ誰にも邪魔されないように聴覚をシャットダウンするためにイヤホンをする。イメージトレーニングの時は目を瞑ることで視覚もシャットダウンできる。こうして自分だけの空間を作り、集中に入るのが今の自分に適している。
周りから見ればちょっと感じ悪いんだろうな〜とか思いながら助走路を肩を回しながら走る。でも周りのために体操をやってるんじゃないからいいやって思う。
優先順位ははっきりさせなければならないのだ!とか自分を正当化する。
軽く汗をかいたら、肩の柔軟を直樹さんにやってもらってから倒立などの軽い補強を行う。
1部目の練習の時間は全部で1時間20分。その間にトレーニングと種目の基礎練習とやる予定でから急がないと間に合わない。
あん馬の旋回の感じや平行棒のスイングした時の締り具合、鉄棒の下がれてる感じ、うん。今日はいつも通りしっかり体が動いてる。いい感じや!
という感じでメニューが終わりホテルに車で戻る。

ホテルに着いたタイミングで入れ違いで一矢さんと大翔に会った。
この2人はホテルに一度帰る2部練ではなく、少し早めに会場に行き、そのまま試合を迎えるタイムスケジュールで組んでいる。
どちらが正しいとかはない。どちらが自分に合っているかだ。
ホテルでの休憩時間は約1時間10分。ここで僕はスイッチを完全に一度切る。
そんなに集中が持続しないのだ。
リラックスするためにアニメ宇宙兄弟を1.5倍速で1話分見る。そのあと15分の仮眠。音楽を聴かながらシャワーを浴びて、髪をセットして気持ちを入れる。
5分間瞑想を行い、出発。今まで何回も何回もやって来たこの流れ。
やらないと気持ち悪いくらいだ。習慣の力っておそろしい。

2部目の出発の送迎は準平さんがしてくれる。
下に降りると監督(米田功さん)もいた。
どうやら同じ時間で出発みたいだ。徳洲会の練習の時もよく買っている、スタバのおそらくベンティサイズと思われる大きいコーヒーを持っている。
それがすごく様になっている。スタバのベンティがこんなに似合う人はいないんじゃないかというくらい。とかなんとか思いながらすぐに会場に到着。
監督と体育館に向かう。

監督:今日のポイントとなる種目はどこなん?
よしき:最初のあん馬がポイントとなると思います
監督:そーやなー。みんなそこ乗り切れるかどうかが結構鍵になりそうやな
よしき:そこさえ超えたら乗れると思うんですよねー、
監督:じゃあ頑張ろうか!

実を言うと徳洲会でもあまり監督と1対1で話すことは少ない。
監督は忙しい人なので、あまり話す機会がないのだ。
でも不思議なことにこの人の言葉というか考えはすごいなって思うことが度々ある。
やっぱり潜って来てるところや経験値が違うんなーと感じる時がある。

そんなこんなで会場で種目のアップを行い、本会場での直前のアップも終えてユニフォームに着替える。
あー、心臓がバクバク言ってる。いつもはこんなに働いてないのに、めっちゃ頑張って脈打ってるやんけ。
着替えたら、選手席についてジャージを着て体が冷えないようにする。
あー、あと5分後に試合が始まる。なんとかもう少し気持ちを落ち着けないと、、
鼓動が早くなって、頭の余裕がなくなって、自分の動きを認知して動かす能力が低下して、ミスにつながる。緊張するのは当たり前。それだけこの試合にかけて来たんだから。しかし、こうなることも想定済みだろ、鼓動を落ち着かせる練習もして来ただろ!焦るな、ゆっくりと腹式呼吸。感情を整えるにはまずは行動から変える。
よし、落ち着いて来たな。いけるな。

「それでは選手の皆さんは競技を開始してください。」

始まりのアナウンスだ。
さぁ始まる。
俺の人生をかけた戦いが今始まる。

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