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一耳惚れ

 一目惚れって、一目見て惚れるから「一目惚れ」なんでしょうね。じゃあ、何かの音を、ちょっとだけ聞いて惚れるのは…一耳惚れ?

 もちろん、そんなことを言ってる人に会ったことないし、聞いたこともないから「一耳惚れ」なんて言葉は無いのでしょう。

 でも僕は、ドラムに「一耳惚れ」しました。

 高校の入学式の日、クラス担任から「恋愛や部活などのよそ事をせず、とにかく高校3年間は勉学に励むように‼️」って心構えを聞かされて、その日はそれで終わり。下校しようと校舎を出て、自転車置場へ歩きかけた時に聞こえてきた音…

「タタタタトトトトジャーン‼️」

それが打楽器だということは分かったけど…続いて…

「ドン、タ、ドドン、タン‼️」

リズムを刻む音…

即座に「何だろう?見に行ってみよう‼️」と再び校舎へ入り、音のする部屋へ階段を二足飛び一目散に…
たどり着いたのは「音楽室」。

 音楽室の中にいた音の主は、YAMAHAのロゴが入ったドラムセット。

 生まれて初めて聴く生ドラムの音だ。演奏してる人が上手いとか下手とか、そんなことは全くどうでもよくて…ただただドラムという楽器から出る「音」に惚れてしまった。

 しばらくして、ドラムを叩いていた人が僕に気づいて話しかけてきた。その男の人の名札を見ると、2年生らしかった。

「新入生?」

「はい。ドラムを叩かせてください。」と、僕。

「ここに座ってみ…」。

僕は初めてドラムに「座った」。

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スティックを渡されて「右手でこれ、左手でこれを叩く。左足はここを踏んでおく。右足を踏むと、これが動く。」。その先輩はそう言った。

「ちょっとどいて。見てて。」と再び自分が「座って」リズムを刻み始めた。

「これがエイトビート。」と先輩は言った。

さっき校舎を出た時に聞こえてきた「ドン、タ、ドドン、タン」…

僕は「もう一度叩かせてください‼️」とお願いして、エイトビートに挑戦したが…叩けず…。

僕は先輩に「ドラムをやりたいので、音楽部に入れてください。」と言った。

先輩は「ドラムは間に合ってるからね…。バイオリン🎻に人が要るからバイオリンやってよ。」

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ここで、ドラムへの未練を捨てきれず…でも「はい…。」と答え、それから一年間、僕の音楽部員としてのバイオリンの練習が始まった。

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