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GEAIM:第13回 nemuke - RTS の世界大会に 3 年連続日本代表として出場

公開日:2011-05-18 12:30:00

GEAIM ピープル第 13 回には、RTS プレーヤー nemuke さんが登場です。『World Cyber Games 2008』Age of Empires 3部門、『Internatinal E-Sports Festival』の 2009年、2010 年に日本代表として出場した経歴を持っています。どのようにして RTS と出会い、現在に至るのかお聞きしてみました。

0. 簡単な自己紹介

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インタビューのご指名をいただきありがとうございます。FPS の有名プレイヤーの方々のインタビューが多い中恐縮です。簡単に自己紹介をさせていただきます。

私のプレイヤー名は「nemuke」で、RTS を中心にプレイし、マルチプレイを最初に始めてから 7 年近くになります。『Age of Empires III』で1回、『Warcraft III』で2回、世界大会に出場した経験があります。色々な RTS を転々として、現在は『Starcraft2』で、Blog を更新しながら上達を目指して活動しています。

1. ゲームのプレーネーム(ニックネーム)の由来を教えていただけますか?

nemuke という名前は『Age of Mythology』でマルチプレイのアカウントを作るときに決めました。nemuke という名前にしたのは3文字でわかりやすく、さん付けしたときに響きが良さそうだったからです。これは当時、日本人上級者でリプレイをよく見ていた「Lunch」という人の名前が3文字でわかりやすく、「さん付けすると響きが良いな」と思ったことから来ています。

実際呼ばれるときは呼び捨てよりも「ねむけさん」「ねむけくん」「ねむけまん」等と呼ばれることが多いような気がします。個人的には何と呼ばれても、あるいは色々弄っていただいてもかまいません。ちょっと残念なのは外国人に通じないことですね。muke を nuke(俗にぶちのめすという意味の英単語)に間違われて「nenuke」とか呼ばれたりします。世界大会に参加したときも、現地の人が読み方がわからなくて戸惑っている様子が伝わってきました。

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世界大会『Internatinal E-Sports Festival 2009』での nemuke さん。
写真提供: スイニャンさん

2. 初めてプレーした RTS や PC ゲームについて教えていただけますか?

当時の年齢は 10 歳ぐらいだと思いますが、初めてプレイした RTS は『Age of Empires』だと思います。『Play Online』という雑誌に体験版が入っていて、それを父が紹介してくれたのがきっかけでしょうか。シューティングや RPG が目立つ中、「自分で文明を発展させて軍隊を作る」という箱庭的なゲームシステムが面白かったです。

初めてプレイした PC ゲームはわかりません。多分 Windows 3.1 に入っていた戦艦の横シューティングゲームとかだと思います。父が PC に積極的で、幼い頃から自分も PC を使わせてもらえていたので、普通の子供が家庭用ゲーム機で遊ぶ中、PC ゲームで遊んでいるような状態でした。

初めて RTS のオンラインで対戦を始めたのは 2004 年 10 月 18 日、Age of Empires シリーズ3作目にあたる『Age of Mythology』です。『Age of Mythology』は神話を舞台にした異色の作品で、ギリシャ、エジプト、北欧の3文明に、ミノタウロスやスフィンクス、トロールといった神話の怪物がユニットとして使えるのが特徴でした。

オンラインゲームはそれまでにも『Diablo2』『Quake3』などをプレイしていましたが、Age of Empires シリーズは「やってみたら面白いんじゃないか」と思いつつもネットの不具合でゲームサーバーに接続できなかったので諦めていました。数年後、ふと思い出した時に『Age of Mythology』のゲームサーバーに繋げてみたら成功したので、そこから自分の RTS の対戦が始まりました。日付を覚えているのは世界中の人と対戦することが非常に新鮮だったからです。最初の対戦で「coward(臆病者)」と言われて負けたことをよく覚えてます(笑)。

『Age of Mythology』のゲームサーバーにはレート(実力の目安となる数値)があり、自動のマッチングゲームで勝てば上昇、負ければ下降します。このレートが目標にあったので対戦を続けていきました。最初はレートが 1,600 からスタートするのですが、 1,700、 1,800 と少しずつ増えていくのが楽しかったです。そのうち同じく Age of Mythology (未拡張版)をやっていた日本人の方々が声をかけてくれて、小さいですがクランで活動するようにもなりました。

当時の練習の仕方は、情報サイトやリプレイでユニットの性能や内政の手順、戦術をアウトライン機能付きのテキストエディタに書いて覚え、Computer 相手に練習し、身に付けたものを対戦で試すという感じだったと思います。人見知りが激しかったこともあり(笑)対戦より Computer 相手に練習してる時間の方が長かったかもしれません。

操作については『World Cyber Games 2003』Age of Mythology 部門のエキシビジョンマッチでの Halen さんの操作動画を見て、「人間ここまで速くできるのか」と感銘を受けて感覚を真似したところ一気に操作速度が伸びたという思い出があります。対戦に勝つというよりは、すばやく操作するのが楽しくてやっている部分もありました。

World Cyber Games 2002 金メダリスト Halen 氏のプレー。

『Age of Mythology』では最終的にレート 1,900 を越え、世界ランクの TOP10 に入りました。といっても自分が始めた頃には既に『Age of Mythology』の拡張版が主流で、大半のプレイヤーはそちらに移ってしまっていたんですけどね。

その後、『Age of Mythology』のマルチプレイを始めてから1年後に『Age of Empires 3』が発売され、自分も流れに任せて移行しました。

3. 初めて参加したゲームの大会またはイベントの事を覚えていますか?よろしければ当時の事を教えて頂けますか?

2006 年の 2 月頃に開催された『Age of Empires 3』の 1v1 のオンライントーナメントです。今は閉鎖されてしまいましたが、当時 RTS の総合情報サイトだった All-gamers.jp が主催していました。結果は優勝できましたが、初めての大会ということでとても緊張したことを覚えています。

優勝賞金として3,000円分のamazon商品券をいただきましたが、当時はゲームをやって賞金や賞品をもらえるというのが雲の上の話だと思っていたので、信じられないような不思議な気持ちでした。ゲームの思い出としては、『Age of Empires 3』が初期段階で戦術の研究が進んでいなかったことがあり、強力な戦術を一つ作り出せれば勝てるというところがありました。All-gamers.jp ではその後も 1v1 大会が開催されましたが、組み合わせ運が良かったこともあり、合計 3 回出場して全て優勝することができました。

『Age of Empires 3』の大会を 3 連覇した後は All-Gamers.jp のニュースで知った 『Warcraft3』に移行しました。その後『Warcraft3』コミュニティの流れで LANParty の先駆け的なイベントである『BIGLAN』に参加することになり、これが初めてのオフラインイベントになりました。ネット上の人間が実際に動いているということで、非常に刺激が強い光景だったのをよく覚えています。「あの人が動いてる」ということで色々ニヤけてしまったりして大変でしたが、これをきっかけにオフラインに抵抗がなくなり、イベントに積極的に顔を出すようになりました。

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2006年にBIGLANで開催された『ASKカップEスポーツスタジアム』
WarcraftIII 部門で優勝し賞金60,000円を獲得。

4. 現在の主な活動についておしえて頂けますか?

現在は主流の『StarCraft2』で活動しています。具体的にはプロのリプレイや配信を見て、戦術のポイントをつかみ、Ladder(レート制の自動マッチングシステムの名称)、または知り合いの日本人プレイヤーと対戦して試すことを繰り返しています。

ゲームプレイの副産物として、Blog を更新しています。自分のゲーム活動をより面白くする手段として最近は毎日更新するつもりで続けています。今のところ手探り状態で未熟な文章が目立ちますが、そのうちデバイスのレビューやイベントのレポート、戦術の体系化などをしていければと思っています。また最近は配信プレイが流行ってきたので、そろそろ自分も始めてみたいですね。

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nemukeさんのブログ
プレーに関する考察や対戦の記録などがまめに更新されている。

5. RTS での活動を始めたきっかけについて教えてください

ゲームプレイの基本にあるのは強い人への憧れです。マルチプレイを始めた当初からリプレイで見ていたいわゆる上級者の仲間入りをしてみたいと思っていました。今はトップクラスのプロゲーマーが憧れになっていますが、これは 2008 年、2009 年、2010 年に参加した国際大会の影響も受けています。実際にプロゲーマーの方々と会う機会がありましたが、ゲームに対するスタンスはもちろん、とても社交的で、ゲーム以外の能力においても抜きんでている印象を受けました。そういった人達に近づければありがたいですね。

国際大会でプロゲーマーと直接試合をできたことは自分にとってすばらしい経験になりましたが、成績は 2008 年の『World Cyber Games』では Age of Empires 3 で 1-2 で予選グループ敗退、2009 年と 2010 年の『International E-sports Festival』では Warcraft3 で全敗という結果に終わってしまいました。ゲームの日本代表を送る背景には企業を始めとして多くの方の尽力がありますので、この結果では正直申し訳ないという気持ちが今でも残っていて、それもゲームプレイの一つの理由になっています。

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2009、2010年の『International E-sports Festival』に日本代表として出場
(松井悠氏撮影)。

後は、RTS というゲームジャンルが面白いことでしょうか。負けることは多いので全てにおいて楽しいわけではないのですが、自分で戦略を組み立て、軍を動かすという楽しさは他のジャンルでは味わえない魅力です。また戦略ゲームとして、戦術のピースを組み合わせてパズルを紐解いていく過程が面白いです。「プロの戦術のここにこういう意味があったのか」といった気付きがあるとうれしいですね。

6. どのような目標で活動をされていますか?

目標は『Global Starcraft2 League』などトップクラスの海外大会で優勝すること、と言いたいですがとても実力が足りないので、今のところは『Starcraft2 JP Community』が主催する大会で優勝することを目標にしています。また再び『World Cyber Games』や『International E-sports Festival』で日本代表を派遣する機会があった時のために、それに相応しい実力を身につけていたいと思っています。

7. 活動、もしくはゲームを通じて人生に何か影響がありましたか?

世界大会への参加はもちろん、15 歳ぐらいから年齢層の異なる方々や企業の方との交流など、人付き合いで貴重な経験を積ませていただきました。自分は小学2年生ぐらいから学校に行かなくなったのですが、それにもかかわらず、ゲームをきっかけに人との交流ができました。ゲームの業界は新しい分野のせいか、何かに挑戦している人が多い印象があり、そういった人達の姿勢が自分にも勉強になっています。

一方でゲームしかやっていないことによって視野が狭まるので、バランスがとても悪い人生でした。とても他人に推奨したくないです(笑)。それに気付いてからは今はスピーチクラブで 30 人ぐらいの社会人の方々と活動したり、別の方向にも目を向けています。

8. 使用しているデバイスとそれを使っている理由を教えていただけますか?

マウス『Razer Copperhead』
本体の重量とクリック感が非常に軽いです。形状が一番しっくりきているので使っています。

マウスソール『Hyperglide Mouse Skates RZ-1』
Razer Copperhead のデフォルトのソールが磨り減っていたので使っています。

マウスパッド『SteelSeries QcK』
滑りやすく止まりやすい。厚みが足りないので Razer Mantis Speed を下に敷いて使っています。

キーボード『ZOWIE CELERITAS』
株式会社マスタードシード様よりサンプルとして提供していただいたものです。Realforce のような軽さでありながらクリック感がしっかりしているので気に入っています。

イヤホン『Etymotic Research ER-4S』
元々は音楽用のイヤホンですが、音の位置が明確に聞こえるので、ゲーム中に鳴った効果音の場所もすぐにわかります。

ヘッドセット『Steel Series Siberia v2 Fullsize-headset』
装着感が良いので耳が痛い時や、マイクが付いているのでスカイプしながらプレイする時に使っています。

モニタ『LG の 19 インチ液晶モニタ』
モニタの性能にこだわりはないので、自分にとって見やすいものを使っています。

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nemuke さんのプレー環境

9. 注目しているゲーム、e スポーツに関するサイトやブログがあったら教えてください。

StarCraf2 JP Community
日本の大会を主催しているサイトです。トップページに日本人の配信が表示されているのでよく見ています。

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Starcraft Times
Starcraft1,2 の韓国のプロゲーミング情報を掲載されています。韓国事情やインタビューの翻訳などが面白いです。

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StarCraft2 Clan ZaC Website
毎週水・土・日の3回、誰でも参加できる配信付きの 1v1 トーナメントを開催されています。

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Team Liquid
海外の Starcraft2 のコミュニティサイトで、大会情報以外に、トッププレイヤーの配信も載っています。

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SC2REP.com
見やすくてつながりやすいので、いつもリプレイファイルはここでダウンロードしています。

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10. サイトを見ている人に何かメッセージがあればお願いします


ここまでインタビューを読んでいただき、ありがとうございました。世界大会の様子について、『IEF Japan』というサイトに『International E-sports Festival 2010』に出場した各選手のレポートが載っていますので、興味があればチェックしてみてください。自分の Blog でも旅行記などを書いています。

11. 次に、ゲームや e スポーツでがんばっていると思う方をこのインタビューにご紹介していただけますでしょうか。

StarCraft1 で WCG2010 に出場した日本のトッププレイヤーの kurOa さんです。ほぼ毎日 StarCraft2 のプレイを配信しているほどですので、StarCraftを始めたきっかけやモチベーションなどを聞いてみたいです。

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nemuke さんありがとうございました。nemuke さんは非常に丁寧にあいさつやコミュニケーションをしてくれるプレーヤーで、良い評判を他の方々からもよく耳にします。今回の回答も非常にわかりやすく行なってくれました。これからの活躍にも期待したいプレーヤーの一人です。次回は nemuke さんのご指名により、『World Cyber Games 2010』StarCraft 部門日本代表の kurOa さんが登場予定です。お楽しみに。

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