サブちゃん型購買活動

今日、NewsPicksの『WEEKLY OCHIAI』という番組の「小売をアップデートせよ」という回を観た。

"アップデートせよ"というのは、“未来を考える”というのと似ていて、言い換えれば「小売業の未来を考える」回であった。

そこでの話が説得力のある非常に興味深い内容だった。

今回は、番組の要旨と僕が思ったことを書きたい。


『WEEKLY OCHIAI』という番組は毎回違うテーマで落合陽一とゲストの対話形式で話が進んでいく。

今回は、メガネ会社OWNDAYSの社長である田中修治さんがゲストに来ていた。

彼の語る小売業の未来はこうだ。

均質化されたモノが溢れたこれからの世の中、人々は必要によってモノを買うのではなく、意味によってモノを買う。そこで売れるモノは意味付けされたモノである。それはつまり「誰々が使っているから」とか「こういう風に思われたいから」という理由で買われるモノだ。例えば、「にこるんが使ってる化粧品だから買いたい!」「スマートに思われたいからApple製品を買う!」みたいな感じである。こうなるとモノを売る方としてはモノに意味としての付加価値を加えなきゃいけない。そこで、小売の成否を分けるのは、「誰々が売ってるから買いたい」と顧客に思わせることができるかどうか、である。そのためこれから小売で成功するには、販売員ひとりひとりが自分自身を価値として売り込み、発信しなければならない。この流れが進んでいくと顧客がモノ自体ではなく、人でモノを選んで買う時代が来るだろう。

今のインフルエンサーと呼ばれる人たちを見ていてもわかるように、とても説得力のある未来図だと思う。


だから、僕はモノをモノ自体ではなく人で選んで買う未来を想像してみた。

そこは例えば、服は誰々さんのいるどこどこ。食品は誰々さんのいるどこどこ。家電は誰々さんのいるどこどこ。という風に個人が衣食住のモノをカスタマイズしている世界だ。


これは未来の話のように見えて、実はとても昭和的な生活スタイルなんじゃないかと思う。


昭和の時代、ダイエーのような大型スーパーができるまでは顧客はみな個別の店で個別のモノをカスタマイズして買っていたのではないか。

商店街を想像してほしい。

肉は山田さん、魚は高橋さん、野菜は斎藤さん。すべて個別である。そこには人がいた。信頼があった。顧客は店主が山田さんだからそこで肉を買い、高橋さんだから魚を買っていた。

サザエさんを見ていても「三河屋でーす!」でお馴染みのサブちゃんというお兄さんたびたびが家に来てサザエさんと会話を交わす。ここにおいて、磯野一家は三河屋からモノを買っているのではなくて、サブちゃんから、サブちゃんだからモノを買っているのだと言えると思う。


考えてみるとこれは現象としては、OWNDAYSの田中さんが描く未来とまったく同じではないか。

大量生産大量消費の時代を越えて、またも人は人からモノを買おうとしている。

人から個別にモノを買うのがわずらわしくて、なんでも一括で買えるスーパーが登場し、どこにいっても同じようなものが買えるようになった日本社会。便利さを追求した先に、また人からモノを買うことになっていくんだな。

このモノの買い方のサイクルは非常に面白いと思った。

品質の担保についても昭和は専門店が、平成は企業が、令和はインフルエンサーが品質を担保する。これからは“いいモノ"の定義が人によって大きく変わっていきそうだ。


生活に必要な活動であった買い物でさえも、衣食住に関わる小売さえもエンターテイメントになっていくのか。

一億総エンタテイナー時代が来る。











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