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”失敗も成功も捨ててゆけ” 鍋焼きうどん尾収屋ストーリー(後編)

なぜ鍋焼きうどん尾収屋を立ち上げるに至ったか、そしてそこでつくってきたものを前編で書きました。

店主を交代し、レシピを捨てる、そしてその後移転するという鍋焼きうどん尾収屋ストーリー後編のお話へ。

麺講座で知り得たこと

あるとき、広島市内で製麺講座があるという情報を見つけました。

それはメーカーが機械を買ってもらうための製麺機の体験会でした。当時尾収屋で使っていた麺は県外から取り寄せていました。とても美味しかったのですが、可能ならば県外ではなく自家製麺に切り替えれればストーリー性とオリジナリティをより表現できるのではないかと考えていました。取り寄せるための配送費もかかり、一度に取り寄せる多さも負担でもありました。

店主矢野と2人で講座に申し込み受講しました。そこでわかったことは、材料選び、寝かす時間やタイミング、太さ調整で様々な麺が表現できるということ。

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「あ、これなら製麺所にお願いして今の出汁にあうオリジナル麺をつくれるかもしれない」と思い、これまた保育園の保護者会で私と当時一緒に活動していた西平直枝さん(厳密にいえば保護者会で一緒に活動していたのはその主人の方ですが)に相談に行きました。彼女は呉市内で60年以上製麺所を営む西平商店に嫁ぎ、働いていました。西平商店の麺の主力はのどごしの良い呉名物”細うどん”。このうどんもとても美味しいのですが、尾収屋でつくった出汁とはどうしても合わなくて…。機械の調整によりある程度の太さに変えれることを麺講座で知った私は、今ある機械でこの麺を最大限に太くできないか無理なお願いをしに行きました。

組合せのゴールを見極める

組合せでバチっと決まるものと決まらないものの差はほんの些細なことなんです。何でもいいから合わせればいいのではなく、出来上がったものがどうなのか、その味覚や感性がとても重要です。私の感性がどうかは別としても美味しい店、雰囲気がいい店とそうでない店、それはほんの少しの差だと私は思います。そこを妥協せず突き詰めれるかどうか。ほんのちょっとの差。

太さなのか、弾力なのか、はたまた何か別の材料が入ることで一気に両方を活かし合うものができることもあります。

そんな小さな成功と発見をカフェやギャラリーづくりで体験していた私は、もしかして太さを少し変えれば出汁と合うのではないか、もしくは次の良きマッチングのための足りないものが見えるのではないかと思っていました。

しかし、なかなかうまくいかず。。太さが変わっているようで違いがあまりわからず、何度かつくってもらったのですが試作の麺と既存の出汁とはどうしても合いませんでした。その感覚は矢野くんも同じで。

そしてついに出汁に麺を合わせることを諦めたのでした。

店主交代へ、今までのレシピを捨てる


「ちょっと難しいわ。。うちの出汁捨てるから、ここの麺に合った出汁つくって尾収屋切り盛りしてみん?」

西平直枝さんは麺屋の嫁として西平商店でつくる細うどんやそれ以外の茶蕎麦、中華麺などのアレンジメニューをSNSで発信していました。西平商店の麺の美味しさはさることながら、彼女のアレンジ力、表現力の素晴らしさを知り、「や、待てよ。そもそもそれがいいんじゃないか」と思うようになりました。

新しい挑戦にしばらく考えたいとのことでしたが、直枝さん「私やります」と。

そうして、鍋焼きうどん尾収屋は店主矢野智之から、2代目店主西平直枝にバトンタッチされ、引き継ごうと温めていたものを捨てることになりました。

直枝さんのアレンジ力はやはり素晴らしく、西平製麺の細うどんを鯛出汁に合わせ、あっさりスープに大長レモンの酸味を加えるアクセントも。他にも瓦そば風鍋蕎麦や、刻んだレモンの皮を乗せたつけ蕎麦(茶蕎麦)、鍋冷麺、最近は鍋焼きラーメンもメニューに加え、リピーターや独自のファンを確実に増やしていきました。矢野くんと立ち上げ、彼が育ててきたものが二代目店主によりアップデートされ、アルミ鍋の世界が魅力詰まったより豊かなものになりました。

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鍋焼きラーメン

(上写真:鍋焼きうどん 中写真:鍋冷麺  下写真:鍋焼きラーメン)

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場所を捨てる。次なる場所で新しいチャレンジはじまる。

昨年、鍋焼きうどん尾収屋を立ち上げた場所を改修すると建物所有者さんの意向で退去することになりました。建物は昭和のものであまり古くはないのですが、建物の傷みもあり、崩して建て替えることになったのです。

今年中とのことでしたが長く居ても、迷惑をかけるので、8月中に退去しようと決めました。
ただ、新たに一棟リノベーションし再スタートすることは日曜祝日のみの営業では難しくどうしようか考えました。

直枝さんにも負担少なく、長く続け更なるアップデートを推し進めるのにどうするか考えたあげく、物産館でありチャレンジショップができるように整えた潮待ち館に統合することにしました。

潮待ち館は喫茶も併設し、鍋焼きうどん尾収屋店主を卒業した矢野くんがそこでかき氷を提供していました。そして矢野くんはゲストハウス醫の番頭となり、1階のBarでかき氷屋をするべく移動。(こちらはこちらで省力化を図りました)

潮待ち館はカフェをしたい新たな移住者が来てもいいようにカフェと鍋焼きうどん屋をすみ分けて両方できる厨房(2つの厨房)に整備し直しました。

昨年8月前に来た移住者は私の力不足で12月頭に帰りましたが、また新たなチャレンジャーが現れ、カフェ&物販と鍋焼きうどん尾収屋の新しい取り組みがはじまりました。

潮待ち館を日々切り盛りしてくれているのは、島内の久比地区に本社を置き訪問看護事業に新たに取り組むNurse and Craft 合同会社さん。

現在クラウドファンディング挑戦真っ只中なのでこちらも応援よろしくお願いします。

前のめりに変化を楽しみ、更なるアップデートを

お客さんのためにと別々だったレジを一つに統一、日替わりの店主がそれぞれのスタイルで接客します。今までできなかった鍋焼きうどんも数量限定ですが日曜祝日以外の平日でも提供できるようになりました。ナースだけに血圧測定サービスも加わり、ご近所の新たなお客さんも開拓しています。

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これらも全て新しい取り組みであり、どのように3者(Nurse and Craftさん、直枝さん、うち)とお客さんがWinWinWinWin(長い(笑))になれるかチャレンジの最中です。


というように、尾収屋を立ち上げ、店主が代わり今までのレシピを捨て、メニューを捨て、場所を捨てました。変わらざるを得ない変化をチャンスと捉え挑戦してきました。そして今も。

大きな成功はしていませんが、小さな成功と失敗を得ながら常に手放す前提で事業づくりをしています。それらを繰り返しアップデートを重ねることで次につながるものだと思い、やってきました。

チャレンジすることで出会う失敗も成功も慣れてしまえばそんなもの。

常に呼吸をするように吸ったり吐いたり、失敗と成功を繰り返せば血は巡ります。

過去に固執せず、これから起こる様々な社会の変化を柔軟に受け入れ前のめりに乗り越えるために、仲間と多くの引き出しをつくっていきたいと思います。







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