ブータンの幸福度ランキング急落に思う
ブータンが幸福度ランキング外になったという残念なニュースを読みました。
やはりそうか、という気持ちです。以前から、ブータンにもたらされている変化が、幸福度に影響を与えている、という話を見聞きしていたからです。
この記事のポイントは、他人との比較、そして情報は人を幸せにするか?という点でしょう。
答えは日々の食事と同じ、過ぎれば身体に悪いということです。
先日ブータンを舞台にした映画を娘と観ました。タイトルは、「ブータン山の教室」秘境の村に派遣された、海外を夢見る若い先生を主人公にした映画です。
この先生は、いつかこんな極貧の国から脱出したい、海外の先進国で働きたいと願っています。手にはiPhoneと充電器。数少ない電子機器を手放しません。そんな彼がブータンの中でもさらなる秘境、ルナナでどのような出会いをするか、、、まとめるとこんな映画でした。
この映画で注目されるのは、「幸福な国」と呼ばれているはずのブータンの若者が、外に出たがっていること。それを悲しそうな目で見つめる年配者の姿です。
この国は世界で一番幸せな国と言われているそうです。それなのに、先生のように国の未来を担う人が幸せを求めて外国に行くんですね。
このセリフに、ブータンはなぜ幸せだったのだろうか?そしてなぜ今は不幸なのか、考えずにはいられませんでした。
リンクの記事にもあるように、情報化が一気に進んだことで、外の世界は素晴らしい、それに比べて私の国はみすぼらしい。そんな気分になったのかもしれません。他人と比べることが、いかに幸福感に影響を与えるのか、わかりやすい事例でした。
では、ブータンは昔の日本のように鎖国すべきだったのか?というと、それには疑問が残ります。隣国にはあの中華人民共和国があります。世界情勢に疎いままでは、国家維持はままなりません。国として存続するために、今自分の国がどのような立場に置かれているか、情報は必要です。
ただ、その受け入れ方をどうすべきだったのか。それが私にも明確な答えがありません。情報は新聞記事で届くのではなく、電子機器を通して、そしてSNSから無尽蔵に手元に届くからです。
少しヒントになるかもしれませんが、アメリカにはアーミッシュと呼ばれる人々がいます。近代の技術である車や電気、パソコンや、スマートフォンなどを使わず、小さなコミュニティー内で自給自足をする団体です(先日宗教団体だと初めて知りました)
https://tabicoffret.com/article/77135/index.html
彼らは、数百年来生活を変えていない。そう思っていたのですが、記事を読んでみると違いました。新しい技術には目を配っている。それが「自分たちの生活や価値観にどのような影響を与えるか」コミュニティー内で吟味してから、取り入れるかどうか、決めるのだそうです。
進歩がすなわち幸せとは限らない。必要な分を必要なだけ取り込む。この選択肢は参考になるかもしれませんね。
情報を取り込み過ぎない、人と比べ過ぎない。これは身体にとって食事を取り過ぎないのと同じくらい大切です。
また、これも参考になるかもしれません。江戸中期の観相学(顔の表情でその人の才能を見抜く人!)の大家、水野南北という方の言葉を引用します。
江戸時代にあって、ダイエット本(修身録)を書いた人なんですよ。興味が湧いて、昔一読したのです。
腹八分目、米は食べず粗食で過ごす
うわべの美食が寿命を縮める
人の喜びも悲しみも、善も悪も、根底は食にある
主に食べものに注目した本でしたが、私は「自分の心も含めて、何かを取り込むこと」の大切さを教えてもらいました。つまり、インプットし過ぎることの危険性を教えてくれたのです。
スマートフォンの記事を読みながら、何を口にしているかもわからないまま必要でないものまで咀嚼する。
思わず隣の同僚と仕事のことで比べてしまう。優劣をつけたところで何も生まれないのに、気が滅入るまで比較し続ける。
スマートフォンに流れてくるニュースリンクをなんの感慨も抱かずに目を走らせるだけで1時間過ごす。今日あったことをざっと知るだけなら数分で終わるのに、頭が疲れるほど情報を詰め込む。
「取り込み過ぎ」は私たちを幸せにしてくれるのでしょうか。
今の考えでは、違います。放っておいても情報は入ってきてしまう。暴飲暴食が寿命を縮めるように、外からの情報の大波は、人を翻弄こそしても、満足感を与えてはくれません。
であれば、私達が配慮すべきは、「何を身体に取り込むか」と同時に、「何を取り込まないか」という点です。
炭水化物、塩分を取りすぎないように、ゴシップ記事を読みすぎない、他人の承認欲求を満たすような情報を見聞きしないことです。
昨今「デジタルミニマリスト」や「スマホ脳」といった本が新書コーナーを賑わすのも、この「情報の食べすぎ、胃の持たれ」に注目が集まっているからでしょう。気をつけたいものです。
というわけで、今回はブータンの記事から考察してみました。いつか行ってみたい国です。訪問する頃には価値観が回復していることを願っています。
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