僕の音楽体験 Vol.16 八千代獅子
ジャズの演奏に夢中になって日々を過ごして迎えた音楽大学の4年生。
音楽の勉強は真剣でしたが、一般教養などは、おろそかになりがちでした。
なにせ、時間があったら練習したい。
うちは裕福でなかったのでバイトしたりしていて、練習時間もなかなか取れなかったので、授業の合間に隙を見て練習。あ、もう授業が始まっていた、ま、いいか、なんてこともしばしば。
なので4年生になっても、単位があまり取れてはいなくて、慌てて、卒業出来る単位を揃えなくてはなりませんでした。ご存知の方も多いでしょうが、大学は卒業までに色々な授業を受けて必要な単位数を取っておかなくてはなりません。
色々と計算した結果、どうしても取得単位が足りない!
いや、待て、この授業を取れば必要単位を全部取得出来るものがある!
それが邦楽でした。
いわゆるお琴と三味線です。
僕の行っていた音楽大学は邦楽科もあり、先生も高名な方が教えに来ていました。
とりあえず、単位を取るため、と軽い気持ちで授業を選択。
まずは琴か三味線を選ばなくてはなりませんでした。なんとなくネックがあって弦を弾く、ベースに近いと言う理由で三味線を選択。
それまで、邦楽がなんたるかを全く知らずに生きてきたのですが、最初の授業で構え方、弾き方などを教わりました。
そこで衝撃の出来事が。
助手の先生がめちゃくちゃ美人なのです。
ああ、燃える下心!
いや、燃える向学心!
先生!構え方がわかりません!
先生!運指を教えてください!
などと、しつこく質問したかどうかは忘れましたが、毎時間、真面目に通った気がします。
しばらくしてから、担当の高名な先生が、「君!なかなか初めてにしては筋がいいな!真剣に三味線に取り組んでみないか?」
と、なんと邦楽への道へスカウトされてしまったのです。
そうです、先生は僕は作曲科の生徒でベースを弾いていると言うことは知らなかったのです。
弦が張ってあって竿の長さから大体の音程が想像がつくのでわりとすぐに弾けてしまったのが、先生の目にとまったようです。
先生の後ろで微笑む美人助手。
うう、これは真剣に三味線の道に転向か?
揺らぐ心と戦いながら授業を受け続ける日々。
そして学年末の発表会をやるので全員参加して演奏しなければならないと言うニュースが。
曲は定番曲と言われている「八千代獅子」
これは弾きながら歌わなくてはならず、しかも正座で。
そもそも僕は正座が苦手ですぐに足が痺れてしまうのです。
案の定、発表会の稽古が始まったら正座で弾かなくてはらならず、すぐに痺れてもんどり打ってしまう有様。
だんだんと呆れ顔になる先生と美人助手。
いよいよ発表会の当日ですが、足が痺れて演奏も歌もヘロヘロに。
いつの間にか真剣に三味線の世界に行く、と言う話も立ち消えになっていました。
とりあえず単位は取得できて無事卒業となりました。
そのおかげで今もジャズの道にいます。
ウッドベースが正座して弾く楽器でなくて良かった!
(のちに渡米後に本当の邦楽の良さに目覚めるのですがそれはまた後ほど)
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