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僕の音楽体験 Vol.19 冨樫雅彦 BURA BURA 1986 (初めてデイブ・ホランドを生で見る。)

僕の音楽体験 Vol.19 冨樫雅彦 BURA BURA 1986 (初めてデイブ・ホランドを生で見る。)

またまた大学生の頃のエピソードです。
これは、僕のジャズベーシストそしてのあり方に大きな影響を与えてくれた日として外せない出来事でした。

それは大学4年生の頃。

冨樫雅彦さんという伝説のドラマーのコンサートがあるという情報が。
しかもスティーブ・レイシー、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデンというメンバーで。
なんども申し上げているように、僕の学生時代
1986年の当時は情報は本当に限られていて、
冨樫さんの名前は知っていはいるものの、
実際にちゃんと聞いたこともなく
何やらジャズだけど、自由なアーティスティックな演奏をするという
そのぐらいの知識しかありませんでした。
しかし、その他のメンツは、名盤というものに参加していて
特にベーシストのチャーリー・ヘイデンは
キース・ジャレットのアメリカンカルテットのメンバーで
レコードも何枚も聞いたことがあり
深いダークな音色と大胆なアプローチ、
そして謎のベースライン。
やっている事は理解できていなかったのですが
一見地味に見える演奏の、実はものすごい破壊力にはいつも驚かされていました。
そう、音楽が別次元へと導かれるのです。

確か大阪の御堂会館というところでのコンサートだったと思います。

この日は急遽メンバーが変更になり、
チャーリー・ヘイデンが来日できないという事で代わりにデイブ・ホランドが来ることに。

お目当のチャーリーさんが来れないということでがっかり。

デイブ・ホランド氏の名前は聞いたことがある程度で
参加アルバムも数枚聞いたことがあるだけでした。

しかしせっかくチケットも買ったので見にいくことに。
またまた石井先輩と一緒だったと思います。

まずは冨樫雅彦さんが車椅子での登場に驚き。
上半身だけでの演奏だったとは知らなかったのです。
しかし、演奏が始まると、ハンディがあることなど全く感じさせない演奏。
そして一つ一つの音色の美しさに引き込まれていきました。

音楽もフリージャズ=めちゃくちゃ、という概念を覆される
しっかりとした音の綴れ織を感じさせるもの。
それでいて形式や常識にとらわれない音楽が目の前で展開されていきます。

さらに衝撃だったのはノーマークに等しかったデイブ・ホランドさんの演奏。

堅固でありながら、包容力もあり、自由な中にもしっかりとした音色と
ビート、そして音程と明確な音楽性。

アンサンブルでもソロでも芸術性を乱すことなく
それでいてテクニックも駆使されたバランスの良い演奏。

こんなベーシストが世の中に存在していたなんて。

これまで聞いてきたどのベーシストも違うアプローチ。

その日は釘付けになりました。

この時の同じメンバーの東京公演が「BURA BURA」というタイトルでCD化されております。

コンサート翌日からデイブ・ホランド参加作を調べては購入。
当時はインターネットもYouTubeも無いので
レコード店に行って一枚一枚チェックするしかなかったのです。

デイブ・ホランドさんはECMというヨーロッパのレーベルと関わりが深く
なんと大阪にはそのECMレーベルのレコードを専門的に扱っているレコード店があったのです。なんとマニアックな!

とにかくデイブ・ホランドさんの参加作やリーダー作を聴き漁りました。
僕の演奏に大きな影響を与えた事は言うまでもありません。

さて、その後、時は流れて僕は87年に上京。
4年近くを東京で過ごしその後渡米したのですが、
渡米直前に冨樫さんから共演のお誘いを受けて
2度ほど共演させていただきました。
しかも、それまではフリージャズをメインに、オリジナルばかりを演奏していた冨樫さんが、スタンダードジャズばかりを演奏するプロジェクトでした。
譜面も特になく、だいたい知っている曲で行われたセッションでしたが
のちに僕が渡米後に別なベーシストの方を迎えて
レコーディングやコンサートなどをして活動されました。

人生はタイミングといいますが、
渡米しなければそのバンドに居続けたのか、
それとも渡米がもっと早ければそもそも共演もなかったのか
それは誰にもわかりません。

この交わる人間関係の渦が人生の面白さでもあると思います。


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