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今までのレコーディングを振り返る vol19 「Sweet Nest」kotringo (2008)

今までのレコーディングを振り返る vol19 「Sweet Nest」kotringo (2008)

僕が2004年に日本に帰国してしばらくした頃、最初は全然なかった仕事も徐々に増えて、ジャズ以外のジャンルのレコーディングにも呼んでもらえるようになりつつある頃の参加作品です。

坂本龍一さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるレーベルからユニークなシンガーが出てきたと噂になっていました。

このレコーディングにはドラマーの坂田学くんからお声がけをいただきました。
学くんとは以前に塩谷くんのイベントで一緒に演奏する機会があり、その時からすっかり意気投合して度々共演するようになっていました。

学くんは確実なグルーブを保ちつつも、感性に訴えかけるようなサウンド作りに特徴があり、まだ見ぬ世界について語ろうとしてくるおとぎ話を語るようなミュージシャンという印象でした。

活動もJpop の中にあって個性的なアーティストのサポートや、グループへの参加が多く、自身もソロライブを時折行い、そこではオリジナルの曲のギターの弾き語りなど、ドラマーという枠には収まらない音楽家としての大きさと豊かさを感じさせます。

その学くんが手がけるアーティストらしく、とても個性的な曲作り、そして歌声の持ち主のkotringoさんです。

伝統的なジャズではありませんが、曲のいたるところにジャズテイストを感じさせます。それもそのはず、バークリーのジャズピアノコースに通っていたそうで、音楽的な基礎と、驚くようなハーモニーを自在に操って作り出される万華鏡のような音楽には驚かされました。

個性的な声はCMなども手がけられていたのでどこかで聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

このアルバムには2曲のみの参加ですが、その後に続くアルバムにも呼んでいたでだき、陽介ー学リズムセクションとして気に入っていただけたようです。

こういった、ストレートアヘッドのジャズではない録音に呼んでいただき、ミュージシャンとして、そしてベーシストとして何が本当に大切なのかを考えさせられ、そして教えていただいている事に感謝します。

ウォーキングベースでもなく、ベースソロなどもなく、フィルインですら限定的なところで自分の存在意義について感じることは、まず自分の音の存在感です。

まずは音色、そしてタイミング、音程、など考えると色々ですが、まずは自分が良いと思った音が出ていること。そこに他の楽器を邪魔しないが主張のある音色であること。そして逆に他の楽器を引き立たせるような音と演奏であること。

様々に思考を巡らせて音楽を作り上げていきます。
決して誰かをうならすような超絶nプレイでなくても良いのです。
そこが逆に難しく、想像力もたくさん要求されます。

ここを磨くためにはたくさんの経験、そしていろいろな音楽に精通していること。さらにいろいろな芸術にも通じていないと解らないことがたくさんあります。

音楽は言葉では伝わらないものをなんとか伝えようとする芸術だとも言われています。
絵画然り。美術もそういったものでしょう。
そして言葉を操る芸術家はまだ見ぬ世界を表現します。
お互いが補完し合っているともいえるでしょう。

より豊かな人生のために。
生きる勇気と希望を持つために。
悲しみと喜びに寄り添うために。

そんな音楽家であり続けたいと思います。

そんなことを感じさせてくれるレコーディングでした。

kotringoさんはその後、2016年11月、映画『この世界の片隅に』の音楽を担当。 毎日映画コンクール音楽賞[6][7]、日本アカデミー賞優秀音楽賞[8]、おおさかシネマフェスティバル2017音楽賞[9]を受賞など大活躍です。

今後に注目したいアーティストです。

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