見出し画像

叶えたい夢が存在しない世界

南は春、もういつ頃だったかよく覚えていないけれど、札幌は梅や桜が咲き始める前のこと。…つまり札幌はまだ春ではなかったかも。
この頃、私はnoteさんの「マンガコンテンツの売り上げを最大化するコンサルティング」に申し込みしました。

返信が来るのを待つ事1ヶ月ちょい。
返信が来ない。来ない来ない。
やっと来たのが桜も終わり始め、八重桜の時期、5月下旬。

「申し込みありがとうございます」
「作品を作っている方であれば、どのような状況の方でも問題ございません」
「弊社は渋谷にオフィスがありますので、一度ご来社いただき、お話を伺わせて頂ければと思うのですが」

とても嬉しい申し出。右も左も分からない、でも気をくれせずに申し込みしてみてよかったかもしれないな。
そんなことを思った。

私は札幌に暮らしている。
預貯金は当時5万円。今はつい2万円。
渋谷に行く金も余力も一切無かった。
少ない給料の中、来月の支払いを心配しながらギリギリで生きている。

「渋谷のnoteオフィスへ訪問が可能との事で、凄く行ってみたいと感じました。」
「今は貯蓄も全く無いため、お金を貯めて本州へ行く機会がありましたら是非伺いたいと思います。」
「ご提案本当に有難うございます、とても嬉しいです。」

そして、自分の作品を展示しているサイトやSNSのURLを添えて返信しました。

それから夏、いま8月。

あのメール以降、noteからの返信はない。
私は「使い物にならない」と判断されたのかもしれない。返信する価値も無いと判断されたのかもしれない。

この当時、ネットでは漫画村の話題で持ちきり。編集者なんていらない、という話題もよく見かけていた。
noteさんの話が聞きたかった。
でも何かしらの返信もない。音沙汰なし、残念だ。返信がもらえてないのは私だけだろうか?

子供の頃からの叶えたい夢がある。
私は漫画を描いていて、ファンタジー漫画作家になりたいな、とずっと思っていました。
友達もいない、誰にも認めてもらえない。そんな寂しさを埋めたくて作品を作って来ました。いつも寂しさが滲むストーリーになってしまう。でもそれを描かないと他者に私の考えを知ってもらえないと思い、描き続けて来ました。

noteさんにメールを返信したのと同時期ごろ、講談社さんで漫画の担当さんがついた。
今まで行ったやりとりしたのはわずか数回。お話がしたい、と日時を決めて、講談社から電話がかかって来た。
私は上記の漫画村や編集者の話、自分の漫画に関する話を全てして、それから電話越しに担当のお兄ちゃん(年下だ)にこう尋ねた。

「私は漫画が描きたい、私とこの世界で戦ってくれますか?」

返事はこう。

「それは保証できません」

こうだ。
担当さんは何もしてはくれない。
描きたい漫画の話をしても「よくわからないから、ネームを描いてみせて」と、それだけだ。
「これってなんの電話なの?」と尋ねたら「これは打ち合わせでもなんでもないですよ」…本当になんの電話だったんだろう。
仕方ないから無難な映画の話をしていた。2時間近く、ただお互いのうんちくを述べ合っただけ。

漫画っちゅうのは編集部の会議でコンペが通るかどうかで掲載できるものかどうか決まるそうです。それが決まるまでは収入なし。なるほど。
厳しいとかどうこうではなくて、余裕が無ければ出来ない、よっぽどの志がないと出来ない。そんな世界なのはよく分かった。

「それは保証できません」

少なくとも、志は自分一人だけのものだというのはわかった気がしました。

同じく春頃、集英社から「ジャンプルーキー!」というインディーズ漫画のアプリがリリース。
売り文句にはこれ。

「広告収入100%還元」

おお、夢のある言葉!
けれど実際に広告収入が得られたかというとそんなことは一切なく、閲覧数が低いなどの話以前に、まず広告ユニットであるAdMobを設定した人の殆どがどこの誰かもわからないクリック荒らしにあいAdMobのアカウントを凍結されてしまって広告料を得られない状態になってしまっていた。
売り文句に偽りはないが、集英社側が対策をしてくれるわけでもないので、飾りだけの売り文句を提げたまま、ジャンプルーキー!は普通のインディーズ漫画のアプリにとどまっている。
なんだこれは。
悲しい。
初めは怒りを感じているユーザーさんが見受けられたが今ではみんな諦めてしまっているように見える。

去年頃はツイッターでバズった漫画がどんどんウェブから連載を勝ち取っていくムーブメントが多くみられ、私の周辺でもパーン!と引き抜かれてデビューを果たす女の子が現れていた。
世はまさに大拡散力時代。
拡散力がなければ何を描いても、誰の目にも届かない、知ってはもらえない。
フォロワーを増やすには?人当たり良く、好いてもらえる人格を装わなければいけない。それかべらぼうに絵が上手くないと。みんなが飛びつくような、誰かが誰かに恋をしてて、ときめいて顔を赤らめて恥じらっている漫画のネタを描かないといけない。


春から感じている。
「叶えたい夢がこの世界には存在しないのでは」という思い。
「夢がない」のではなくて、夢の行き場がこの世界には存在しない。
既存の受け皿に夢を託したり、夢を投げかけても仕方ない。

行き場は自分が用意してあげないといけないのだろう。
預貯金2万円の私が。
メールの返信がもらえない私が。
でもどうやって?

やるせない気持ちを抱えつつ、とりあえず今日も漫画を描いて過ごしていますよ。

#note #よし日記 #日記 #漫画 #エッセイ

ご覧頂きありがとうございました! もしお気に召しましたら、是非サポートしていって下さいませ。