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いいマイクの基準って結局なに?マイクの仕組みや選び方について

カラオケなんかで馴染み深いマイク。特に音楽とか興味はなくてもほぼ全ての人が知っている機材といってもいいでしょう。

ですが、そんなマイクについて詳しい人って以外と少ないのが現状です。

ちょっとネットで調べただけだと
『ダイナミックマイクよりコンデンサーマイクの方がいい』
とか
『感度がいい』
とかそんな事くらいしか書かれてないのが現状です。

今回はそんなマイクについてお話をしていきます。
良かった!と思っていただいた方はスキをしていただけると大変励みになります。

ネットのマイクレビューは当てにならない!?

ネットで買い物する時によくレビューを参考にする方が多いと思いますが、ハッキリ申し上げるとあまり参考にならない事が多いです。

なぜネットのレビューは当てにならないのか?

  1. 素人からプロまで幅広い層が書いている(誰が書いてるか分からない)

  2. YOUTUBE等は褒める動画が多い

  3. 実際に音を聴かないと判断が難しい

1番の理由が素人からプロまで不特定多数のレビューが乱立している事です。
特に気になるのが『コスパ重視』な点。5,000円くらいのマイクを凄くクオリティ高いです!とかレビューしてる人いるのですが

そんな事はないです。


例えば5,000円でいい音というのは、
その価格の中ではましな方
というだけなので注意が必要です。

グレードの高いものはそれ相応の理由がありますのでそれは後ほど後述します。

ライブ用のボーカルマイクの選び方は難しい?

私の意見になりますが、ライブボーカル用のマイクはできればスピーカーに繋いで試した上での購入をオススメします。

楽器を集音する場合はネットで探すのもいいのですが、ボーカルマイクは歌う人のマイクのくせ、声帯、全てが十人十色なので選ぶマイクも変わってきます。

また、なぜスピーカーをオススメするかと言うと、ヘッドホンでは音の押し出し感(音圧)が分かりづらいからです。

歌う曲のジャンルでも相性がありますのでこればかりは体感してみないと分かりません。これはヒトカラ用のMYマイクが欲しいという方も同様です。

ボーカル用マイクは自分に合ったものを選ぶだけで歌うのが楽になったり、人に届く印象が全く変わります。

もし近くにマイクを試せる場所がないと言う場合

もしあなたが住んでる地域で、マイクを試す場所なんかないよと言う場合はとりあえずSHURE SM58を持っておくことをオススメします。

SHURE SM58

このマイクは長年世界中で使用されている業界スタンダード。ライブハウスはこのマイクを元に音を調整しています。どんなに上手いPAも下手なPAもほぼ必ず持っている一本なので抜群の安定感があります。

そしてもし、マイクが沢山置いてる楽器店に赴く機会があれば、このSM58を持って試しに行くことをオススメします。

SHURE SM58のポイント

  • 基本的には喋り、スピーチに合わせた音
    (歌の場合はオクターブが上がるので高い音は伸びづらいが、配信で喋ったりする声はかなり自然)

  • ハンドリングノイズ、ケーブルを這わせる音が拾いづらい

  • 耐久性が高い

  • グリルの替えが手軽にできる(代替のものが多い)

  • マイク選びの基準になる

ハンドヘルドマイクで知っておきたいハンドリングノイズとは?

ハンドタイプのマイクは握った時に微妙な擦り音が入ってしまいます。また、繋いでるケーブルを這わせた時の音も集音してしまいます。

これは、ハンドリングノイズと呼ばれるもので、綺麗な音を入れるときには邪魔なものです。
基本的にSM58以上の価格帯のハンドマイクはこのハンドリングノイズが入りづらい設計になっていますが、2000円とかの激安マイクはかなり入ってしまいます。
イメージが掴みづらい場合はカラオケに行って備え付けのマイクを持って握ってみてください。スピーカーから微かにカス、カス、と音が聞こえてきます。

マイクの試し方

ではここで、マイクの試し方を解説していきます。

  • 息を乗せた声、お腹に力を入れた声両方をだしてみる(有声音、無声音)

  • 得意な歌を歌う

  • イコライザーはいじらない(可能であれば入った音をそのままスピーカーで聞く)

  • 音量は揃える

  • マイクを近づけたり離して歌う

手っ取り早いのは歌い方の違うジャンルの曲2曲を歌ってみるのがいいでしょう。

ここで注意するべき点は

  1. 歌詞が一音一音ハッキリ聞こえているか

  2. 声が自然に聞こえているか

  3. 息継ぎが目立っていないか

  4. スピーカーからの音圧

この4点を意識しましょう。
まず歌詞がしっかり聞き取れないのはNGです。

言葉には、
アタックが強い言葉(か行、さ行、た行、ら行、ざ行、が行、だ行、ば行、ぱ行)や、
アタックが弱い言葉(あ行、な行、は行、ま行、や行、わ行)があります。

アタックが強い言葉は必然的に音が大きくなる傾向にありますが、反対に弱い言葉は音量が小さくなりがちです。

特に日本のJ-Popシーンは、9割ボーカルを聞いているようなものなので歌詞が聞こえづらいと言うのは死活問題です。

次に自分の声がスピーカーから自然に流れているか確認します。

自然な音と言うのは低い音から高い音までバランスよく流れている状態を指します。
アンプやミキサーに付いているイコライザーを触ればこのバランスをコントロールする事は可能ですが、イコライザーを調整すると言う事は(音を悪くする)ことと同義です。
自分にあったマイクと言うのは声を入れるだけで自然なバランスで聞こえるものを指します。

そして更に気になる点は、息継ぎ音が目立っていないかどうか。
マイクによっては自分のブレスがすごく目立ってしまう場合があります。
その場合は少しマイクを離して歌うことをお勧めしますが、バランスの良いマイクはきちんと歌もブレスも音圧が整えられています。
ブレスが目立つと結構気になってしまうのでここも意識して試してみましょう。

最後にスピーカーからの音圧を確認します。

マイクは種類によって音の出方が違います。

  1. ダイレクトに音圧を感じるもの

  2. 音圧のバランスが調整されたもの

音圧のバランスが調整されたものは、小さい音と大きい音のバランスが均一なので全体的に歌詞が聞こえやすい傾向にあります。ただ思いっきり歌った場合少し押さえつけられたような感覚になるため力強く歌いたい人は少々物足りないと感じます。

反対にダイレクトに音圧を感じるものは、声量が少ない人や思いっきり歌いたい人には向いています。

この辺は自分がよく歌うジャンル、音楽を分析してみましょう。

ダイナミックマイク、コンデンサーマイクとは

ダイナミックマイク、コンデンサーマイクの違いとは何でしょう?

よく言われるのが

  1. 感度
    ダイナミックマイク:感度が低い
    コンデンサーマイク:感度が高い

  2. 耐久性
    ダイナミックマイク:高い
    コンデンサーマイク:低い

  3. 湿気
    ダイナミックマイク:強い
    コンデンサーマイク:弱い

これくらいでしょうか。

感度については、『細かい音まで拾うからいい』くらいの認識の方が大多数だと思います。

ですがこれは解答としては不十分

正確に言えば感度とは
『マイクが音を拾った時どれくらいの電力が作られるか』を表しています。(dB:デジベル)

感度はマイクの仕様に記載されている時、だいたい感度 (0dB=1V/1Pa、1kHz)-35dB
とか表記されていたりします。
これは、1kHzの音を1Pa(パスカル)で集音した時に-35dBの音が録れると言う意味です。

例えばこの値が-30dBのマイクがあったとすれば、-30dBの方が感度が高いと言えますね。

音の信号を電気に変換する訳なので、感度が高いほど音量が大きくなります。

さて、ではこの感度が高いとなにがいいのか。

それは、
『本来小さすぎて聞き取れないような音の成分まで音量を増幅させる事ができる』
という点です。

これが、細かい音まで拾うからいいと言われる理由です。
実は人間の耳には聞き取れないけど、身体では感じとっているんです。この音の密度が濃い程重厚ないい音で集音できるようになっています。

感度だけでは計れない!?抑えておきたい項目

  • 等価雑音レベル

  • 全高周波歪み(THD)

  • 許容音圧レベル

等価雑音レベル

マイクにはセルフノイズというものがあります。
これは簡単に言うと『集音する音に纏わりつく雑音』です。
高いマイクと安いマイクを比べた時、よく聴く感想として『音がクリアになった』と感じる人が多いです。

これは何故かと言うと、このセルフノイズが低いからです。セルフノイズが高いと少し膜を張ったような籠った音になってしまいます。

特にウクレレのような音量の低い楽器や、ヒソヒソ声のような音を収音する場合は特に気をつけないといけません。反対にもともと大きい音はそこまで気にならなかったりします。

これは何故かと言うと、大きい音の場合はアンプで増幅をしなくても最大まで音量を稼げるからです。
小さい音の場合は、アンプで増幅する際にこのセルフノイズも上がってきますのでどんどんモヤっとした音になってきます。

最大音圧レベル/全高周波歪み(THD)

これはセットで考えるものですが、クリップ(音割れ)や、一定レベルの歪み(全高調波歪み(THD)が発生するまでに許容できる音圧(dB)を表します。

実は、プリアンプやオーディオインターフェースでよく見るピークランプは点灯せずとも、音が若干パリパリと歪んでる場合があります。
これはそのマイクの集音レベルを超えているため起こる現象になります。

高いマイクには高いなりの理由がある

さて、マイクについてあれこれ言ってきましたが、じゃあ高いマイクは全部クリアなの?と言われると実はそうではありません。

マイクにはモダンタイプとクラシックタイプがあります。
マイクには『クリアなマイク』『温かみのあるマイク』があります。クリアはモダン、温かみはクラシックタイプです。これは私が勝手に言っていますが、概ね間違いないと思っています。

例えばクリアマイクの代表的なものと言えばAKGやAudio-technicaがそうでしょう。
反対にクラシックタイプはNEUMANNなんかがそうです。

クリアなマイクの特徴としてよく『固い音、冷たい音』と表現されます。変な厚みを感じさせず、低音域のモヤっとした印象を与えないクッキリとした音です。ほんとにありのまま、そのままな音を拾っている感覚です。アップテンポな曲調だったり、全体的にリバーブ感の少ない楽曲がオススメ。

反対に温かみのあるマイクは低音から高音までのバランスがちょうどバランス良く、サチュレーション(音楽的なアナログの歪み)がかかったようなサウンドになります。
一本で録るだけでも十分な音の成分を録音可能なので楽器数が少ない弾き語りや、ナレーションに効果的です。

そしてこのクラシックマイクタイプには、トランスと呼ばれるものが内臓されています。トランスは電気を増幅させる効果があります。これがサチュレーション感を生む一つのヒントになります。

ただしこのトランスのようなアナログなパーツを回路に組み込むとどうしても金額が跳ね上がります。
なので数十万、下手をすると100万くらいになるんですね。

また、このサチュレーション感を意図的に作り出すマイクとしては真空管マイクが存在します。
専用の電源を通した真空管独特のサチュレーション感は狙って使うと非常に存在感のある声になります。
真空管マイクは非常に高価なものが多く、なかなか試す機会に巡り合いませんが、予算があるなら検討してみるのもいいと思います。

因みに最近は真空管サウンドとモダンサウンドをブレンドできるマイクも存在します。

LEWITT LCT940

モダンなサウンドは主に電界効果トランジスタ(FET)を使ったマイクが多いのですがこのマイクはどちらでも使用が可能です。
クリアならFETを、温かみのある存在感を出したサウンドなら真空管を、二つのいいところ取りが可能です。

そしてそんな高価なマイクですが、いい所はそれだけではありません。

私が考える高価なマイクのいいところ

  1. 聴感上の音のバランスが良い
    (一定の音圧が保たれている)

  2. 音の密度が濃い

  3. 下手にいじらなくても使えるサウンド

上記3点が私の考える高価なマイクのいいところです。
楽曲のミックスをしたことのある人なら分かると思いますが、基本的にボーカルはボリュームにオートメーションを掛けたり、コンプレッサーを掛ける等して音量、音圧のバランスを調整します。
なぜかと言うと、曲の展開や楽器の数によっては急に音量が上がったり下がったりしてミックスのバランスが悪くなってしまうからです。
安いマイク程変に前に出てくる音の成分があったり、薄っぺらくてバックのBGMに埋もれてしまったりしてしまいます。

ですがいいマイクはかなりの範囲の音の帯域をバランス良く集音し、音圧レベルも一定に近いので録った後はそこまでいじらなくても上手く混ざってくれます。

安いマイクほどあれこれ弄らないと上手く混ざらないのです。しかも弄れば弄るほど音が変わるので一発高いマイクで録った音に簡単に負けてしまいます。

なのでミックスとか分からないし自分には無理と考えている人程、いいマイクと録るのに十分な環境を用意してあげたほうが結果的には楽になります。

いいマイクの落とし穴:接続するプリアンプはグレードにあったものを用意する

プリアンプの意味が分からないと言う方は過去に私がブログで書いた記事がありますのでそちらを参考にしてください。

高いマイクはより繊細な音まで拾うため、その音を増幅するプリアンプが必要になります。
これがないと割と宝の持ち腐れになりますので覚えておきましょう。

なぜかと言うと、まずプリアンプにも受けきれるギリギリの音圧レベルがあるからです。
更に、安いプリアンプはダイナミックレンジが狭い場合が多く、安い8000円とか1万円のものを使うとマイク本来のサウンドの何割かは失います。

高いマイクには相応の受け手が必要です。
160k投げられる野球の大谷選手でも、それを受けられるキャッチャーがいなければピッチャーとして起用できないですよね?

マイクもグレードに相応しい受け手が必要と言う事は覚えておきましょう。

ダイナミックマイク、コンデンサーマイク結局どっちがいいの?

さて、これでマイクの事についてはある程度分かっていただけたと思います。

ではダイナミックマイクとコンデンサーマイクはどちらがいいでしょうか?

結論から言ってしまうと、どっちの方が優れているとかはありません。

そもそも答えがないんです。どんな環境で使いたい、録る楽器によっても様々なので人によって違うということです。

ハンドタイプでもダイナミックとコンデンサーの両方が存在します。
ライブ用のコンデンサーマイクを使うメリットとしては、録音の時のようなリアルで綺麗な音、ありのままの自分の声を届けたいという要望から生まれています。
ただやっぱり持ち運びや落としたら心配という悩みが生まれます。そうして生まれたのが高品質のダイナミックマイクです。

例えばSHURE KSM8やゼンハイザーMD435.445と言った、下手をすればコンデンサーマイクより高いダイナミックマイクがそれに当たります。

いずれも価格は65000円〜83000円くらいの価格帯です。ダイナミックマイクなんだから感度悪いじゃん。と言われそうですね。

音量はやはりコンデンサーマイクには劣りますが、コンデンサーマイク並みのクオリティが高い幅広いレンジを綺麗に出力できるハイクラスなダイナミックマイクは、コンデンサーマイクのデメリットである耐久性の低さを補うのでライブでも持ち回りに重宝します。過酷な環境ではコンデンサーマイクは不向きですからね。

音が良く、壊れにくい。これだけでもライブ用のマイクとしては理想的です。だからこそこうしたダイナミックマイクが今売り出されています。

反対に自宅でレコーディングする場合は、持ち出しをしたりしないのでコンデンサーマイクが重宝します。

綺麗な音をベストテイクで録り直しできるならコンデンサーマイクのほうが無難と言えます。
ただし空調の音が気になる。という人はダイナミックマイクやハンドタイプのコンデンサーマイクを選ぶのも一つの手です。
なぜかというと、ハンドタイプはライブでバックの楽器の音を集音しづらいようになっています。
非常に狭い指向性になっているので空調が入りづらくなっています。
ほぼ空調の音を0に近づけるならダイナミック一択となります。

番外編:リボンマイクについて

リボンマイクとはダイナミックマイクと構造は似ていますが、空気の振動を検知する部分がリボン上のアルミ箔(金属箔)を使用しています。

Coles 4038

コンデンサーマイクのように48Vのファンタム電源は使いませんが、ダイナミックマイクのような耐久性はありません。非常に繊細です。

集音できるレンジも15kHz辺りまで(ダイナミックマイクやコンデンサーでも通常は20kHzくらい集音可能)と一見するといい所がないように思えるリボンマイク。

ですがリボンマイクはなんと言ってもその音質にあります。ダイナミックマイクやコンデンサーマイクと比べると温かみがあり、聴き心地のいいサウンド。
古き良き音と言った印象の音が得られるのがポイントです。

一時期姿を消して、昔のマイクと言った印象がありましたが、最近新しいものがどんどん出てきたりとデジタルミュージック全盛期の今、再注目されています。

自分の声を色っぽく、特徴ある音にしたいならリボンマイクもオススメですよ。

終わりに

いかがでしょうか?
今回は、私が数多くのマイクを検証して実際に体感した感想も踏まえて書いてみました。
下に、販売員として、現役時代参考にしていた記事等もリンクで乗せています。興味のある方は是非チェックしてみてください。ちょっとした読み物としては最適です。

USBマイクについても書きたかったのですが、今回はここまでとします。またいずれ更新しますので楽しみにしておいてください。

参考

今回のnoteは、以下の記事を参考にしています。


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