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【百年ニュース】1921(大正10)9月12日(月) 朝鮮総督府に対し義烈団による爆弾テロが発生。義烈団は独立運動家黄尚奎の甥,金元鳳(若山)らは北京や上海で爆弾を製造しテロを繰り返した。実行犯の金益相は9月9日北京を出て12日に電気修理工に変装し朝鮮総督府に潜入。2階の秘書室と会計課長室に爆弾投入。

朝鮮総督府で爆弾テロが発生しました。朝鮮総督府は1910(明治43)年の日韓併合により日本領となった朝鮮を統治するために設置された官庁で、朝鮮独立を目指すテロ組織の標的となっていました。

義烈団は朝鮮独立運動家である黄尚奎こうしょうけい(ファン・サンギュ)の指導により上海フランス租界を拠点に結成された組織でした。黄尚奎の甥である金元鳳きんげんほう(キム・ウォンボン)や、その幼馴染である尹世胄い せいちゅう(ユン・セジュ)らが中心となり、北京や上海で爆弾を製造し、日本人や日本政府を標的とした多くのテロを繰り返しました。

今回の朝鮮総督府爆破事件の実行犯である金益相きんえきそう(キム・イクサン)は、1895年生まれの当時26歳。平壌にあったキリスト教長老派系の崇実スンシル専門学校(現在の崇実大学校)を卒業後は教師や煙草会社で働いていましたが、やがて独立運動を目覚め、1920年に奉天(現在の瀋陽)で鉄血団と義烈団に加入しました。

朝鮮独立のためには日本政府の要人暗殺が最も近道であると信じて、朝鮮総督斎藤実の暗殺を計画し、今回の爆弾テロの実行犯となりました。1921(大正10)年9月9日に爆弾と拳銃をもって北京のアジトを出発し、3日後の12日には電気修理工に変装して、朝鮮総督府の建物内への潜入に成功しました。そして2階の秘書室と会計課長室に爆弾投入しましたが、斎藤実は不在にしており建物の一部を破壊しただけで計画は失敗に終わりました。

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【2021.10.17追記】戦前期の朝鮮独立運動は、多くの日本人にとって不安の源泉であり、恐怖の種でありました。関東大震災に際し朝鮮人蜂起の流言がリアリティーをもって受け入れられたのです。朝鮮人蔑視の裏返しで、実は夜も安心して眠れないような居心地の悪い不安感と共に生きていたのが当時の日本人ではなかったでしょうか。

その点は最近の中国人とウイグル人との関係にも似ているかも知れません。中国政府は2014年4月30日のウルムチ南駅の爆破事件以降、一気にウイグル人の中国化政策を強めて国際的非難を浴びています。この強硬な態度の裏返しで、実は当時の日本人が朝鮮人に対して感じていたのと同じような居心地の悪さを感じているかも知れません。

パキスタン北西部を拠点に活動するスンニ派過激組織「パキスタン・タリバーン(TTP)」やアフガニスタンからの米軍撤退で勢いづく「ISホラサン州」は、新疆ウイグル自治区へのテロ流入の温床となりつつあります。

今年2021年4月21日にアフガン国境に近いパキスタンのバルチスタン州の州都クエッタにある高級ホテル「セレナホテル」の駐車場で起きた爆発事故はTTPが犯行声明を出していますが、中国の駐パキスタン大使である農融氏を標的にしていたとの報道があります。農大使は無事でしたが、今回の百年ニュース「朝鮮総督府の爆破事件」と相似しています。

また今年2021年7月14日に発生したパキスタン北西部カイバル・パクトゥンクア州におけるバス爆破事件では、中国の「一帯一路」関係の技師ら9人の中国人を含む13人が死亡しました。これもTTPのテロと断定されていますが、中国権益の妨害を目的にしたものと見られています。

戦前の日本は植民地を持っていましたが、そのために一般市民もどこか居心地悪く不安な気持ちがぬぐえませんでした。一方で我々現代の日本人はテロの不安もなく毎夜枕を高くしてぐっすり眠ることが出来ます。どちらが幸せかは言うまでもないでしょう。私は現代の日本に生まれて本当に良かったと思っています。

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