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厄介なケガ、ジョーンズ骨折について

 ジョーンズ骨折(Jones 骨折)は
『第5中足骨基底部疲労骨折』ともいいます。
発生しやすいスポーツとしては、サッカーやバスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボールなどが挙げられます。

 保存療法(手術をしない治療法)では非常に治りにくい上に、手術をしても再骨折が多いという非常に厄介なケガ。
 今回はジョーンズ骨折の概要から発生メカニズム、予防トレーニングの実際などをご紹介させて頂きます!

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1.ジョーンズ骨折とは
2.受傷原因
3.応急処置
4.手術方法
5.リハビリから復帰へ
6.予防トレーニングのご紹介

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1.【ジョーンズ骨折とは】

 上述の通り、足部の『第5中足骨』という骨の『基底部』という部分(図①の赤丸部分)で生じる『疲労骨折』です。

図①

 すぐ近くに起こる骨折として、同じく第5中足骨の『結節部剥離骨折』、通称『下駄骨折』がありますが、こちらは全く別の骨折です!

 下駄骨折はその名の通り、
『下駄を履いていて段差を踏み外した際に生じる骨折』であるためその名がつきました。
 こちらは一度の力で起こる骨折のため、疲労骨折ではありません。

 ジョーンズ骨折は『階段を踏み外す』などのように一回の外力で起こるのではなく、疲労骨折なので、繰り返す微細なストレスがが積み重なって発症します!

 特にスポーツ活動中、ステップやジャンプ、回旋動作を前足部荷重(図②)で繰り返すことにより起こりやすいです。

図②

◆ちなみに、疲労骨折にも関わらず前兆なく発生する例が非常に多いです!
 徐々に痛みが強くなり、耐えきれなくなってくる他の疲労骨折とは異なり、いきなり『ボキッ』と音が鳴って発症します。
 前兆として痛みが出ることがありますが、強くない場合が多く、この段階では見逃してしまうことも多いです。

2.【受傷原因】

 スポーツ活動中に前足部(足部の前1/3)が、外側荷重(小趾球に偏って体重がかかること)になることによる、第5中足骨へのストレスの集中です。
 言い換えると、小趾側に体重を偏らせてつま先立ちをするイメージです!

 「第5中足骨の長軸方向(骨を縦にまっすぐ貫く方向)に対し30〜60度の角度で体重をかけた場合、骨幹部付近に最大負荷が加わる」
と示した研究データがあります。
 つまり、踏まれたり、床や地面に第5中足骨が繰り返し衝突するような直接的な外力ではなく、小趾球(足の小指の付け根の丸い部分)に偏って体重が掛かった動作を繰り返すことにより、第5中足骨の基底部をテコとした力が加わり続けることにより生じます(図③)。

図③
前足部(小趾球)が赤丸、
骨折部である第5中足骨基底部は黒丸
骨折部を曲げて引き伸ばすような力が加わります。

 そして前足部が外側荷重になりやすくなる原因として、以下のことが考えられます。

・足関節背屈・外反可動域の低下(簡単に言い換えると、足首の柔軟性低下
・股関節内旋可動域の低下(股関節の柔軟性不足
・足趾筋群・腓骨筋群の筋力低下(足の裏や足首周りの筋力不足
・後足部内反傾向(踵が外側に傾いている

 予防トレーニングやリハビリでは上述したの機能の改善を図り、受傷や再骨折の予防をすることが必須となります!

◆ちなみに、ジョーンズ骨折の発生と練習場との関連は非常に大きいと言われています。とある病院の調査だと、約70%が人工芝のグラウンドで発生していると結果が出たそうです。
硬いピッチの方が発症率が高いことが示唆されています。

3.【応急処置】

 もしも発症してしまった場合、炎症による二次的損傷を最小限に抑え、痛みを落ち着かせるために、まずはアイシングを行います!
 この際、骨折部とその周囲を氷嚢などの冷却物で覆うと良いでしょう。
 アイシングについての詳細な方法は、以前投稿したアイシングについての記事をぜひ参考にして下さい。

 移動する際は、固定と免荷を行って下さい!シーネで固定して骨折部の動揺を止めた上で、松葉杖で移動できればベストです。

◆骨折部の動揺は治癒の遅れや偽関節(骨癒合が不完全のまま停止してしまった状態)に繋がってしまいます。
 ぜひ適切な応急処置を行って下さい!

4.【手術方法】

 ジョーンズ骨折は以下の理由から保存療法では治りにくいため、手術療法が選択されることが一般的です。

①日常生活中の負荷でも、骨折部をテコとして引き延ばしてしまう力が集中しやすい(骨折部が引き延ばされると当然くっつきません)
骨折部の血流が少ない(血流=栄養です)

 手術方法には骨移植やワイヤーによる固定法、スクリューによる固定法(図④)などがあります!
 このうちスクリュー固定が最も固定性が高いことから、こちらを施行する医療機関が多いです。

図④


5.【リハビリから復帰へ】

 上述したスクリュー固定術を行った場合、リハビリの段階や開始時期の目安は大まかに以下のようになります。

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・術後3〜7日〜:踵体重で痛みなく歩けるようになってから退院。また、術後翌日より炎症が悪化しない範囲でリハビリを開始

・術後3週間:母趾球(母趾の付け根の丸い部分)荷重でのカーフレイズ(爪先立ち運動)

・術後6週間:ジョギング(時速8km未満)

・術後2ヶ月〜:ランニング(時速8km以上)

・術後10週間〜:スプリント(全力ダッシュ)、ステップ

・術後3ヶ月〜:スポーツ復帰

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 骨癒合の状態や術部の痛み・炎症に合わせて段階的に負荷を上げていきます!

◆ジョーンズ骨折のリハビリにおいて、可動域の制限や筋力低下の残存が問題になることはほとんどありません。
リハビリにおける可動域や筋力エクササイズの1番の目的は、低下した機能を改善させることよりも、再骨折の予防のために身体の機能を高めることになります!

6.【ジョーンズ骨折予防トレーニング】

 ジョーンズ骨折は非常に治りにくい上に、手術をしても再発しやすいなんとも厄介なケガです。そのため、予防が重要なことは言うまでもありません!
 以下に予防のためのトレーニングの一部をご紹介させて頂きます!

1.足関節モビリティドリル(図⑤)
足首の柔軟性改善のために行います。

図⑤

・片膝立ちの姿勢になります。
・棒をつま先の真ん中に立てておき、膝を曲げながら棒の横を通過させて下さい。この時背中が反ったり、おへそが突き出ないように気をつけましょう!
・踵が浮きそうになるギリギリのところまで、体重を前にかけていきましょう。
・10回を1〜2セット行います。

2.股関節内旋ストレッチ(図⑥)
股関節の柔軟性改善のために行います。

図⑥

・膝を曲げて座ります。
・片方ずつ膝の内側を床に着けるようにしながら、左右交互に倒していきましょう。
・床に近づけていく時に、お尻の外側に伸びている感じがあればOKです!
・テンポよく10回を1〜2セット行いましょう。

3.腓骨筋群トレーニング(図⑦)
腓骨筋群の筋力改善後足部回内傾向改善のために行います。

図⑦

・チューブを第5中足骨の骨頭(つま先側のでっぱり)にかからないように巻きます。
・膝が動かないように、脛が回らないように注意しながら、足首を外に返していきます。
・脛の外側の筋肉にグッと力が入る感覚を得ましょう!
・ゆっくりと10回3セット行います。

4.踵荷重スクワット(図⑧)
足首の柔軟性改善腓骨筋群の筋力改善過度な前足部荷重の改善のために行います。

図⑧

・踵を肩幅に開き、つま先を30°程外に向けます。胸を張り、背中が丸まらないようにしましょう。
・膝をつま先に向かって開きつつ、お尻を引いて下降します。太ももが地面と平行以下になるまで頑張って下さい。
この時、膝がつま先よりも前に出ないように気をつけましょう!
・10回を3セット実施します。

足の指の筋力エクササイズとしては、足首を寝かせた状態でのタオルギャザーを10回3セットやってみて下さい!

文献
・改定第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション−下肢
・スポーツリハビリテーションの臨床 第1版

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