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運命の出会いで入手したモンスターウルシ・まさかの製材拒否!さて困ったウルシの製材・原木から染み出す驚異の樹液パワーは別格・師より教わるその対処法とは

今年も多くの原木を入手したが、最後の最後に出てきたのがウルシだった。岐阜県産ではなく長野県産ということもあり、入札を見送るつもりだった。過去にかぶれ、全身醜い水泡まみれとなり、二度と触るものかと誓った苦い経験があるので、その時点では記念に写真を撮っておくつもりだけだった。土場に並ぶ姿をみてその太さに驚き、興味津々なるも、体質によっては樹液の揮発成分にも反応すると知る今、少し離れて腰を引きながらの撮影となった。その写真たちが以下のもの。

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ウルシというとウルシを採取する(漆掻き)樹木という認識があり、そのような木はある程度大きく成長すると採取量が減り、伐採されてしまうと聞いていた。このような径級42センチ(実際は50センチ近くある)が存在することが珍しいと思い、原木市場の方々に聞くが誰もが初めてだと口にした。

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岐阜県産であれば、木材成分を研究する身としては放って置けないが、長野県産だからと自分に言い聞かせ、一方で胸を撫で下しつつ、でも研究用に少し分けてもらおうとその行き先だけは注視していた。しかし、結論から言うと、買い手はつかなかった。終了後、市場の担当者から電話をもらった。「誰もが怖がって結局、入札されませんでした。牧野さん、研究用にいかがですか?」。ここ数年、市場で誰も見向きもしない木材を研究目的に入札してきたので、彼らは学習していた。そして、「研究用にいかがですか?」という殺し文句まで。

運命の歯車が回り始めたのだ。

そのような言葉をかけられれば、私に拒否できるはずがない。心とは裏腹に、「ああ、いいですよ。」と軽く返事をしていた。電話の後、心がざわついたのは言うまでもない。一応確認してみたが、どこの製材業者もうちでは製材できないという返事だった。それはそうだ、そこら中にウルシの樹液を含む木屑が飛び散る製材を誰が好んでするだろう。その後の清掃を考えたら、拒否するのが当然だった。でも、なんとかなるだろうと思っていたし、なんとかできると思っていた。

状況が変わったのは、そのあとの電話だった。しばらく、移動もできないので、市場に場所を確保してもらい、その場で自力で製材をしようと思っていた。一本だけなら、なんとかなるはず。しかし、その思惑は脆くも崩れた。実は他に2本存在しており、全部で3本だった。流石に他2本はいらないとはいえず、全てを引き受けることにした。場所も快く提供してくれて、いつでも好きな時に製材していいことになった。よくよく聞いてみると、実はこの3本は、元は1本の木だった。根元部分が3メートル、その上が4メートルだったが、曲がっていたので市場の土場で2メートル2本に分割した経緯も教えてもらった。改めてモンスター級のウルシであることが判明した。

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さて、こんな困った時に頼りにするのは、師である阿部藏之氏。早速相談してみた。すぐにとても的確な指示が返ってきた。

土場高めの原木土台にのせてクダサイ 
枕木サイズ以上のできれば低め馬
シートのせ連休まで転がし
□当日作業 
・カブレ軽減シッカロール塗り_つなぎ服防カブレ・ゴム手袋 
_刃物は、パーツクリーナ洗浄 組合現場で温水シャワーかぶり・三尺程度の玉切り_楔入れ芯割り_角落とし 
樹皮は殺菌滅菌利用で有用 木口漆吹もすてない
_チェーンソー 楔 大型丸ノコ縦挽き兼用刃で耳落とし
・耳落としごラップして持ち帰り (組合ユニックトラック、または、段ボール入れ運送便使用
フォークリフトなしの荷下ろしを想定)

チェーンソー、丸ノコをどう洗浄しようかと思っていたら、後日別の連絡がありました。

樹皮壮健、幹肌陥没・捩れ曲がり 製材はかなり手間取ります。
チェーンソーで伐れば、あたり一面にウルシオール ばらまき吸い込む
腸胃やられ、数日は動けなくなります。
墨掛け後、鉞ハツリで「面だし」大鋸木挽きで飛散しない鋸製材になるでしょう
かぶれない職人には声をかけましたが、日程次第。
ハツリ製材が出来る心当たりの職人は数人いますが費用はたんとかかります。

さて、この返事をもらい、何とかなることが見えてきた。「ウルシ製材プロジェクト」は静かに進行している。

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