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新しい試み・伐採現場を見学、立木の状態で木材を購入・完全なトレーサビリティ・伐採業者の進む高齢化・新規参入の少ないこれからの林業と木材活用を考える・木材のストーリーを愛するお客様のための家具を作りたい

飛騨の山間部に住んでいますが、伐採現場をみる機会は非常に少ないのが正直なところ。もちろん危険な作業のため関係者以外は立ち入り禁止で、見たくても近づけないのが普通です。仕事がら日常的に製材された木材や木材市場に並ぶ原木は見ますが、立木の状態を知ることはありません。どんな樹形をしていたのか、どんな状態で伐採されたのかは全く知ることができないのです。

木材のトレーサビリティの必要性を叫んでかなりの時間が経ちますが、どんな山のどんな場所に生えていたのかは情報として集めきれずにいました。いつか立木の状態から、というのがここ数年の夢でした。そんな夢を知らないうちにいろいろなところで語っていたのでしょう、いきなり、それが現実味を帯びてきたのは昨年末のことでした。そろそろと思う頃に限って雪が降って、なかなか実現しなかったのですが、ついにその日がやってきました。

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場所は高山市内某所。比較的アクセスしやすい現場でしたが、それでも知り合いがいないと付近をうろつくこともできません。昨年秋から伐採が始まっているとのこと。

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伐採のためにつけられた道を歩くので楽でしたが、この道をつけるのもとても危険な仕事だと感じます。こんな苦労をしないと、日本の山は伐り出すことができないのです。多くの自治体が森林面積をうたい、木材活用を進めようと音頭を取っていますが、このようなことは頭の中でわかっているはずですが、どこかで全ての木を同じように伐り出すことができると思い込んでしまっているような気がして、とても危うさを感じます。

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伐り出された全ての木材から利益が出るわけではありません。用材と呼ばれる建築や家具に使われる木材がなければ、経費が大きくなり赤字になってしまうこともあるといいます。苦労して伐り出し市場に並べても、思うような値がつかなければ赤字です。紙の原料であるチップの価格は下げ止まりが続いているといいます。

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この重機でおよそ4000万円。新規参入も少なく伐採業者の高齢化は進む理由もわかります。今はまだ、大きな重機を使わず昔から続ける個人で請け負う職人がちらほらいるそうですが、おそらくここ10年で皆いなくなると言われて驚愕しました。市場に並ぶ木材は、今後確実に減っていくと予想されます。

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この中から用材として売れそうな木材を選別、それ以外はコストもかけらないので単価の安いチップの原料となります。正直、お金があれば全て買い占めたい!話を聞いていると不安ばかりが募りますが、今できることは何かを考えると、ここ数年の夢だった立木の状態で購入するというのは、とても良いことに思えてきました。

立木の状態では中がどうなっているのかわからないため、購入する側としてはとてもリスクが高いですが、それは伐採業者さんのリスクを分散していることにもなります。

この日見学で見ることができたのは、二本のナラの木。一本は谷を挟んでの遠くからの見学でしたが、どちらも購入を伝えました。ついでに尾根伝いに生える枝の多い天然のヒメコマツも購入(節が多いので高くは売れないそう)。伐り出しは雪の関係もあり、今年の秋以降になります。伐り出しの際には声をかけてもらい、安全を確保した状態で伐採を見学する許可もいただきました。

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今後、伐採前のこの木で家具を作って欲しいという方が現れれば、さらにリスクを分散できることに。伐採から製材、乾燥を考えると、早くても3,4年先になりますが、こんなストーリーを愛する方がいらっしゃれば、ぜひお問い合わせください。ゆくゆくはそのような方々のためだけに、家具を作りたいと思っています。

飛騨高山の森林資源を有効に活用するための研究や活動をしています。いただいたサポートは活動費に使わせていただきます。