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「あなたを陰謀論者にする言葉」 雨宮純 著 フォレスト出版

なぜ人類は戦争という無駄な行為をやめようとしないのだろう?なぜ、いつも弱者が虐げられ一部の人だけが利益を独占するのだろう?人々の健康が損なわれるのに、環境が破壊され続けるのはなぜか?・・・そうした疑問を一挙に解決するのが陰謀論なのでありましょう。


陰謀論がこれだけ広まっている理由として、著者は次のように言っています。

「発想からいっても、反近代合理主義や反科学技術的な考え方を持つスピリチュアルは自然派と相性がよく、自然派は健康食品や疑似科学と相性がよく、健康食品や疑似科学はマルチ商法と相性がよく、そして陰謀論は大企業を嫌う傾向にある自然派、さらにはエビデンスを重視しない姿勢や、現実的には考えられない理屈で離れたもの同士を繫げてしまう思考回路が共通するためにスピリチュアルとも相性がいいのです。(p.322)」


このため、いわゆる左派も右派も、陰謀論では意見が一致するということが起こります。


この本の中には、どこかで聞いたことのあるたくさんの言葉が出てきます。

「思考は現実化する」「引き寄せの法則」「UFO」「自己啓発セミナー」「ドラッグ」「カウンターカルチャー」「潜在能力」「ヒューマンポテンシャルムーヴメント」「トランスパーソナル心理学」「ニューエイジ」「ニューサイエンス」「代替医療」「心霊現象」「神智学」「人智学」「チャネリング」「スピリチュアリティ」「超能力」「禅」「チベット密教」「ヨガ」「反加工食品・反農薬」「瞑想」「マインドフルネス」「ポジティブシンキング」「量子力学」「波動」「自己責任論」「コーチング」「ニュー・アカ」「オカルト」「神道」「古神道」「パワースポット」「サムシンググレート」「癒し」

などなど。


一つ一つを見てみると、程度の差はありますが、「もっともだと思われること」が含まれています。それを絶対的な真実として理論を組み立てていくと変なことが起こるのではないかと思います。


<仮説A1>「宇宙にはこれだけ星があるのだから、宇宙人がいて、宇宙旅行をしているかもしれない」

これを断定的に言ってしまうと、例えば:

「宇宙にはこれだけ星があるのだから、宇宙人はいる。当然彼らは宇宙旅行をしている」という<理論A1>になります。

<理論A1>を前提に考えると、「宇宙旅行をしているのなら、宇宙人は地球まで来ているだろう。世界中で目撃されているUFOは彼らの宇宙船だろう」という<仮説A2>になります。


これを再び断定的に言ってしまうと

<理論A2>「宇宙旅行をしているのなら、宇宙人は地球まで来ている。世界中で目撃されているUFOは彼らの宇宙船だ」

に容易に移行します。


そこから、想像を逞しくすると、<仮説A3>「宇宙人がUFOで地球に来ているのは、地球に移住しようとしているのだろう」→<理論A3>「宇宙人がUFOで地球に来ているのは、地球に移住しようとしているからだ」→<仮説A4>「地球に移住しようとすると人類は邪魔だろう。人口を削減しようとするかもしれない」→<理論A4>「地球に移住しようとすると人類は邪魔だ。当然、人口を削減しようとする」→<仮説A5>「人口を削減するためには、人類の支配階級とコンタクトし、彼らを生存させるという条件で、その他の人達を抹殺しようとするかもしれない」→<理論A5>「人口を削減するためには、宇宙人は人類の支配階級とコンタクトし、彼らを生存させるという条件で、その他の人達を抹殺しようとしている」

ということにもなりかねません。


さらに、別の<仮説B1>「世界中でこれだけの格差があるのは、今の経済のシステムになんらかの欠陥があるのかもしれない」を同じようなプロセスで膨らませていくと・・・・<理論BX>「格差を作るシステムを実行しているのはディープステートだ」ということになるかもしれません。


ここで、<理論A5>と<理論BX>が合体し、<仮説C1>から<理論C1>「宇宙人は地球に移住する目的で、人口を削減計画を始めている。その計画を実行しているのがディープステートだ」

という過度な陰謀論的理論にもなり得るわけです。


過度な陰謀論にならないためには、あるいはそうした過度な陰謀論に影響されないためには、仮説は仮説のまま残しておくこと、つまり仮説を真実を示す理論だと混同しないことかと思います。


著者は、あとがきの中で

「自然派やスピリチュアル自体を否定はしません。  私は理工系出身ですが、科学では対応できない問題が存在することは重々承知しているつもりです。(p.322)」と書いていますが、全く同感です。

なんたって、僕はトランスパーソナル心理学をやってますしね。



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