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「「科学的」は武器になる」 早野龍五著 新潮社

著者は、著名な物理学者ですが、それ以外に、福島原発事故以降、Twitterでの独自の情報分析によって、一般の人たちに広く知られるようになった人です。


前半は、著者の研究者としての経験と成長のお話です。著者とは比べものになりませんが、かつて、工学の研究に片足を突っ込んだことのある僕にとっては、あーそうだよなと思う言葉がたくさんありました。


「科学の世界は必ずしもプロセス通りにはいかないけれど、だからこそ偶然も起きる。(p.79)」は、セレンディピティ(偶然に予想外の発見をすること)のことですが、僕自身、工学でも臨床心理学の分野でもありました。ほんの時々、そういうことが起こるんですね。


「研究をする最大のモチベーションは、「おもしろそう」「知りたい」です。(p.92)」も納得です。この2つは、好奇心のエンジンかもしれません。


また、「アマチュアの心で、プロの仕事をする」という、早野さんの恩師山崎先生の言葉(p.81)は、名言ですね。学術的な探究ってそういうことだと思います。いい研究者は、ある面、子供のような無邪気な好奇心を持ち続けているように思います。


また、留学での体験も、共感しました。

著者は、1970年代にアメリカに留学し、”おぉ、こっちはノーベル賞学者であってもファーストネームで呼び合うのが普通なのか(p.59)”と驚いたとのことですが、僕もアメリカに留学していた時、同じように感じました。僕は、臨床心理学の分野で留学したのですが、教授たちの指導スタイルは、早野さんの指導教官たちのように、「綿密に教えはしないけど、責任はこっちで持つから適当にやれ(p.114)」でした。これが欧米のスタンダードなのかもしれません。日本は、手取り足取りしすぎるんじゃないかな?そして、それが若手のオリジナリティを阻害しているかもしれません。


後半は、著者が物理学の研究者のキャリアとしての終わりからその後の新たな出発について書かれています。


著者は、2011年3月11日、Twitterで東日本大震災、とりわけ原発事故に関する発信を始めます。その研究者の視点を持ちながらの発信が多くの人々の関心を集めました。


彼の投稿姿勢が、とても参考になりました。

・「データと文献にあることしかツイートしない(p.153)」

・ツイッター上のメンションに対しては、個別に返事をするということを一切しなかったのです(p.159)。

・「グラフによる未来予測をしない」

・「どこまでが科学で言えることで、どこから先は言えないことなのか」を見失わないこと」 (p.242)

耳の痛い部分もあります。僕も早野さんの姿勢を見習おうと思いました。


本を読んでいて、後半で、「あっ、この人の本を読んだ!」と気づきました。

「『知ろうとすること。』早野龍五、糸井重里著、新潮文庫」という本です。とても興味深い本でした。これ↓は、当時ブログに載せた感想です。


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