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「キャパの十字架」 沢木耕太郎著 文春文庫

ロバート・キャパは、おそらく最も有名な戦場カメラマンでしょう。しかし、彼の最高傑作と言われるスペイン内戦時に撮られた「崩れ落ちる兵士」については、やらせではないか?という疑問が当初から囁かれていました。沢木耕太郎氏は、これでもかという執念でその謎を調査し、世界中の誰もが到達できなかったある結論に達します。

ロバート・キャパの本名は、エンドレ・フリードマンです。ユダヤ系である彼にとって、本名を名乗るのが不都合だった部分もあります。さらに、ロバート・キャパというアメリカ人ぽい名前で写真を撮った方が高く売れるのではないかと、キャパと当時アシスタントでもあり恋人でもあったゲルダ・タローが考えたのだそうです。ちなみに、ゲルダ・タローの「タロー」は、当時パリにいた日本人画家の岡本太郎から採ったのだそうです。

ゲルダ・タローは、最初の女性戦場カメラマンとなり、1937年に戦車の暴走に巻き込まれ死去し、ロバート・キャパは、1954年に第一次インドシナ戦争において北ベトナムで地雷に触れ死亡しています。

淡々としたドキュメンタリーの中で、キャパの十字架がいかに重たいものだったのかが浮かび上がってくる傑作だと思います。
面白かった。

キャパの代表作は、「崩れ落ちる兵士」と、第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦時にキャパが撮った「波の中の兵士」です。「波の中の兵士」は、銃弾に背を向けなければ撮れない写真です。渾身の一作だと言っていいでしょう。ちょっとピンボケなところが、よりリアリティを感じさせる写真です。



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