見出し画像

2011年福島第一原発事故文献レビュー

これまで僕が読んできた本の中から、何が起こったのかまとめてみました。
ChatGPTとのQ&Aもあります。
自分自身の理解のためにまとめたものです。

【事故および、事故が拡大した要因】
・全電源喪失。
・初動の冷却が遅れたこと。津波でイソコン(アイソレーションコンデンサー)が一時停止してしまったこと。その後稼働するが、空焚きを恐れて止めてしまったこと。
・イソコンが作動していないことに気づくのが遅れた。吉田所長は、「イソコンは動いている」と思い込んでしまっていた。<<p.56>>
・電源喪失のため液面計が働かず、(非常用復水器が働かないことなどによる)予想以上の水位の低下に気づかなかった?
・早期に非常用電源が確保できなかった。
・3月12日の1号機ベントの遅れ。吉田所長のベント決断から14時間半後にベント成功。弁の作動不良、および、放射線量が高く、作業が困難だったことによる遅れが主要因か?。
・3月14日、3号機建屋水素爆発の影響で2号機のベントが一時期できなくなる。
・循環水系や冷却系の配管のどこかが地震で損傷した可能性がある。新潟県技術委員会が2020年10月に公表した報告書によれば、
「原発を襲った津波は、東京電力の言う巨大津波第2波の2番目の波ではなく、その後の3番目の波であり、その到達時間は、午後3時38分台だったと主張している。すると、午後3時37分とされる電源喪失の原因は、原発敷地を乗り越えた津波が電源盤を被水させたためという東京電力の「説明」は崩れてしまう。<<p.69>>」
・一号機への海水注入は、3月23日までほぼ冷却まで寄与しなかった。<<p.7>>


【最悪のシナリオが回避された、いくつかの偶然】
・3月12日15時36分 1号機で水素爆発。3月14日11時1分 3号機建屋水素爆発。このため建屋が破壊され、外部からの放水冷却が可能になった。
・3月15日3時に、2号機格納容器圧力が設計圧力を超えるが、6時10分 2号機異音発生後、圧力制御室の圧力が低下し、危機的状況に至らなかった。おそらくどこかに穴があいて圧が逃げて格納容器本体の爆発に至らなかったのではないか?<P.436> 「格納容器の破壊」が起きなかった要因の一つは、最近の調査結果では、「放射能を密閉するはずの格納容器は、高温・高圧にさらされ、容器の繫ぎ目や配管との接続部分が溶けて隙間ができ、放射性物質を漏洩させたためではないか<<p.283>>」
・何らかの弾み(3号機の水素爆発?)によって、4号機炉内の燃料プールに水が入り込んだのではないか?そのため、燃料を冷やすことができた?<P.436>・・・これは、後に否定される見解が出た。4号機に水は流れていたとのこと。米政府の誤判断だったらしい。https://digital.asahi.com/articles/ASP3Q5SJKP3QUTIL044.html?fbclid=IwAR05vvB5e1u-ozyeGWla6jrvu6AQGpzvTrsje0gEU8Hk1jSV8j9SYLcF5Zk 「四号機の燃料プールが満水だったのは、隣に接している原子炉ウェルから水が流れ込むという僥倖に救われていたことが後の東京電力の調査で明らかになる。<<p.306>>」
「定期検査のため、原子炉ウェルとその隣にある機器貯蔵プールには燃料プールとほぼ同じ1400トンもの水が満たされていた。<<p.307>>」
・3月11日以降4日間、風が海の方向に吹いた。<P.436>
・津波到来後、第2も同様の全電源喪失に陥っていた。第1は、中央制御室の電源も喪失し真っ暗だったのに対して、第2は、中央制御室の電源が奇跡的に確保され、そのため何が起っているのかがある程度は把握できた。この結果、冷温停止ができた。(P.187)また、第2の原子炉は4基すべて同じ型だったが、第1は3種類の型が混在していて、オペーレーションが複雑だった。(P.195)
☆最悪のシナリオとは、1号機から4号機が連鎖的メルとスルーを起こし、首都圏3500万人の避難が余儀なくされる状況。<P.192> 「福島第一原発の半径170キロ圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に相当し、半径250キロ圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になると試算されている。  250キロの移住範囲とは、北は岩手県盛岡市、南は神奈川県横浜市にまでいたる。東京を中心とする首都圏もすっぽりと包まれ、3000万人もの首都圏の住民の退避が必要になることを意味した。<<p.325>>」


【事故経緯】
2011年
3月11日
14時46分 地震発生。
14時52分 イソコン(アイソレーションコンデンサー)自動起動{P,53}
15時37分〜41分 全電源喪失。原子炉レベル計計測不能 第二の1、2,4号機でも、冷却不能 P.16,19, 128
「免震重要棟がなかったら、まったくお手上げでした」吉田福島第一所長 P.29
津波により、イソコン停止{P.56}
15時38分 津波第3波福島第一原発に到達。 「原発を襲った津波は、東京電力の言う巨大津波第2波の2番目の波ではなく、その後の3番目の波であり、その到達時間は、午後3時38分台だったと主張している。 <<p.60>>」 「新潟県技術委員会は、この説をベースにしながら、電源喪失は、原発の地下に張り巡らされた循環水系や冷却系の配管のどこかが地震で損傷し、そこから津波が流入し、地下1階の非常用発電機が浸水したことによって起きた可能性が否定できないと指摘している。<<p.70>>」
15時42分 10条の発令を吉田所長が要請
15時55分 1号機の原子炉は、11日午後5時55分の時点で、すでに水位は燃料の先端まで減っていたと推定されている。<<p.101>>・・・エネルギー総合工学研究所の計算プログラム「サンプソン」(SAMPSON)による推定
16時44分 免震等から中央制御室に「ブタの鼻から蒸気が出ている」という情報<<p.72>>・・これをイソコンが稼働していると誰もが思ってしまった。当直長は、蒸気の出方が少ないことに疑問を持つ。<<p.72>>
18時18分 一時的電源回復により、イソコン停止確認、稼働再開{P.61}<<p.78>>
18時25分 イソコンタンク内の冷却水が減り、空焚きの危険があると判断し、イソコン停止。{P.63}<<p.79>>
18時50分頃 1号機炉心溶融。東京電力「福島原子力発電所事故調査報告書」2012年6月による推定 <P.456>
19時29分 メルトダウンが始まった可能性。「「サンプソン」の解析では、午後7時29分に原子炉の中の核燃料の温度はおよそ2200℃に達し、燃料溶融、メルトダウンが始まったとしている。<<p.102>>」
21時23分 1Fから3km圏内に避難勧告。(P.281)
21時30分 イソコン再起動。{P.73}<<p.82>>

3月12日
0時6分 吉田所長 1号機にベント準備を指示
4時 南明興産従業員が消防車で注水。4時20分頃作業中止。6時から7時に自衛隊消防車到着、10時52分柏崎刈羽原発の消防車到着、淡水による注水。P.158
5時44分 1Fから10km圏内に避難勧告。(P.281)
昼頃、吉田所長、海水注入を決断。P.159
14時半頃 1号機ベント成功。ベント決断から14時間半、政府のベント命令から7時間半後。P.135,136,138,139,140
15時30分 海水注入準備開始。P.160 ただし、1号機への海水注入は、配管の様々な箇所から漏洩し、注入方法を変えた23日までほぼ冷却に寄与しなかった可能性が濃厚 <<p.7>>
15時36分 冷却系がまさに復旧しようとした瞬間{P,51}、1号機で水素爆発。P.160
17時55分 海江田大臣、海水注入命令。P.161
18時〜 首相官邸で海水注入をめぐる会議開始。班目委員長「海水注入による臨界の可能性はないと思うがゼロとは言えない」と答える。海水注入の是非について、決断でず?P.161
18時25分 1Fから20km圏内に避難勧告。(P.281)
19時4分過ぎ 武黒フェロー吉田所長に電話、海水注入停止を要請するも、吉田所長カブキプレイで海水注入継続。 P.167,168
日テレNEWS24で、中村幸一郎保安院審議官が一号機炉心溶融に言及、その後野口哲男に交代。P.95,100

3月13日
6時43分 官邸(武黒、川俣ら東電の官邸リエゾンのこと)から吉田所長に、(3号機への)海水注入の決断が早すぎる(海水注入は廃炉に繋がるので)との指示。P.265
9時25分 3号機に注水開始。(P.282)
10時40分頃 3号機炉心溶融。東京電力「福島原子力発電所事故調査報告書」2012年6月による推定 <P.456>
13時12分 3号機に海水注入開始。P.272

3月14日
11時1分 3号機建屋水素爆発。爆発の影響で2号機ベントができなくなる。4号機に水素がたまった可能性あり。P.216,280,290
13時25分 2号機冷却機能喪失。Wiki福島第一原子力発電所事故の経緯より。
夕方、3号機の水素爆発後、保安検査官4人が現場から離脱。P.38
19時20分頃 2号機炉心溶融。東京電力「福島原子力発電所事故調査報告書」2012年6月による推定 <P.456>
20時 東電清水社長が海江田大臣に「退避の了解」を求めるが拒否される。P.304 (P.282)
20時頃から2号機に注水ができるようになった。3号機への注水をストップして消火ポンプすべての圧力を2号機に集中し、加圧したためか?しかし、炉内圧力が上がり、再び注水不可に。P.284
21時18分 2号機の圧力容器またはその周辺部が破損したのではないかと、政府事故調が推測。(P.282)
22時頃 二号機のサプレッションチャンバーの圧力計が正常な値を示さなくなる。<<p.283>>
23時35分 吉田所長が2号機ドライベント指示。 (P.282)
第三者検討委員会は、武藤栄副社長(当時)が記者会見をした際、清水元社長が社員を通じて「官邸からの指示として、炉心溶融という言葉を会見で使わないように」と指示したと指摘。(2017年12月27日朝日新聞デジタル)
14日深夜から15日午前中にかけ、2号機格納容器の圧力が7気圧以上に上昇。シリコンゴム製のシール材などが高熱で溶融、大量の放射性物質が放出された可能性がある。<<p.283>>

3月15日
0時0分 2号機ドライベント実施とされていたが、2015年5月に発表された東京電力の検証結果では、2号機のベントはできていなかったという見解。<<p.283>>
0時0分 東電清水社長、枝野官房長官に電話で「撤退」の申し出をする。(P.282)
3時0分 2号機格納容器圧力が設計圧力を超える。Wiki福島第一原子力発電所事故の経緯より。
3時0分 東電清水社長、海江田経産相、枝野官房長官に電話で「撤退」の申し出をする。(P.282)
3時20分 菅首相以下主要メンバーで「御前会議」。東電撤退はあり得ないと言う結論に。P.318 (P.282)
5時26分 東電内に「福島原子力発電所事故対策統合本部」設置。菅首相が撤退はあり得ないと演説。P.325
6時10分 2号機異音発生。圧力制御室の圧力低下。Wiki福島第一原子力発電所事故の経緯より。
6時12分?14分? 4号機建屋で爆発?P.290,291,337 (P.282)<<p.286>>
9時38分 4号機原子炉建屋3階から火災発生。11時頃自然鎮火。(P.282)
13時 三春町 町長の決断で40歳未満住民にヨウ素剤配布。P.219
アメリカ政府は2号機格納容器の損傷と4号機建屋爆発により、東日本全体を失うかもしれないと考え始める。<P.29>
3月16日
5時20分 自衛隊ヘリからの放水失敗。P.414
18時?17日未明? 米政府 1Fから50マイル(約80km)圏内の米国民に避難勧告。(P.282)<<p.296>>

3月17日
未明 ヘリからの映像で東電技術者が4号機燃料プールの水を「確認」、NRCは「確認」を拒む。<P.76>
9時48分 自衛隊ヘリコプターが3号機に向かって4回の海水注入開始。P.419(P.282)7.5トンの海水投下。<<p.317>>
19時頃 機動隊高圧放水車での放水失敗。燃料プールに届かず。P.429
19時35分〜20時7分 自衛隊消防車5台で3号機に放水。P.431
放水作戦終了後、北澤防衛相が記者会見で「今日が限度であった」と述べる。<P.187>

3月18日
14時まで東電が電源回復作業。その間放水できず。P.431
14時0分 自衛隊消防車7台が3号機燃料プールに放水。P.431(P.282)

3月19日
0時30分 約20分、東京消防ハイパーレスキュー隊が3号機燃料プールに放水。P.447(P.282)
6時半 3号機の原子炉の温度計が復旧。366℃に達していることが明らかになる。<<p.321>>
14時5分〜15時40分 東京消防ハイパーレスキュー隊が3号機燃料プールに放水2回目。P.447

3月21日
17日〜21日まで、自衛隊消防車による放水5回。P.432

3月22日
17時17分 高所コンクリートポンプ車(通称キリン)が初めて放水にあたる。操作に当たったのは、東電工業社員ふたり。その後、定常的安定的注水実現。<P.209,211>(P.282)
22時43分 3号機の中央制御室の照明が復旧。(P.282)<<p.322>>

3月23日
1号機には、この日まで、ほとんど水が入っていなかった。{P.4}

3月24日
11時30分 1号機の中央制御室の照明が復旧。(P.282)<<p.322>>
3月25日
15時37分 1号機注水を真水に切り替え。 <P.139>
18時0分 3号機注水を真水に切り替え。<P.139>

3月26日 2号機注水を真水に切り替え。<P.139>2号機の中央制御室の照明が復旧。<<p.322>>

3月29日 東電清水社長入院。<P.417>

4月1日〜6日 汚染水海洋に流出。<P.246,252>
5月に東電が炉心溶融を認める。(2017年12月27日朝日新聞デジタル)

7月2日夕方 循環注水冷却に完全移行 朝日新聞デジタル版7月3日 http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107020452.html

12月1日 吉田所長、福島第一原子力発電所長を退任。


2013年
7月9日 吉田所長食道がんのため死去。

9月7日
安倍首相は、2020年東京オリンピック誘致演説で、福島第一原発の状況について「アンダーコントロール」にあると述べた。


2014年5月20日、
朝日新聞
が「吉田調書」特集したが、産経新聞、読売新聞などからの批判により、

2014年9月12日
朝日新聞記事内の「所員が所長の命令を知りながら、第一原発から逃げ出したような印象を与える部分」について削除、謝罪。


2016年2月
東京電力のマニュアルに照らせば事故から3日後の2011年3月14日の時点で1、3号機は「炉心溶融(メルトダウン)」と判断できていたとう。毎日新聞

2016年2月29日 東電旧経営陣3名が強制起訴される。


2017年10月現在も、放射線廃棄物は日々発生し、汚染水を完全にストップすることはできず、メルトスルーした核燃料の処理をどうするのか決まっていない。


【マスコミ報道】
「TBSをキー局としたニュースネットワークJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)のように、被災地からの報道を一過性のものにすることなく、継続的に伝えるために「JNN三陸臨時支局」を設置したことや、NHKがユーストリーム上でストリーミング放送を公式に始めるなど、画期的な対応がなされたことも記録しておこう。No.217」
フジテレビは、「20時7分の報道で、藤田祐幸(元慶応大学助教授)が電話取材で「メルトダウンが始まりつつあるのでは……」という、政府見解から一歩踏み込んだコメント No.614」
しかし、その後、「専門家の解説に局アナが自己解釈を加えて「安心」を強調 No.849」するようになった。


【疑問点】
Q1:3月12日のベントの遅れの原因は、現場がIC(非常用復水器)が作動しているものと判断したため差し迫った危機を感じていなかったこともあるのか?菅元首相の滞在による遅れは、ベントの遅れの主要因と言えるのか?
A1:「二号機のベントができなかった理由」について、「原発の耐震設計に詳しい専門家は、この配管が地震の影響で一部損傷して、圧縮空気の漏洩が起きた結果、ベントができなかったという可能性は否定できないと話している。<<p.284>>」

Q2:なぜ、本店は、吉田所長に海水注入停止を要請(3月12日、13日)したのか?海水注入により逆に危険が増大する可能性はあったのか?
A2:不明。「班目委員長が「海水注入による臨界の可能性はないと思うがゼロとは言えない」と答える。P.161」が影響した可能性あり。学者による「可能性はないと思うがゼロとは言えない」を官邸側が「可能性がある」と解釈してしまった可能性がある。

Q3:津波の前に、地震による冷却系の損傷はなかったか?
A3:循環水系や冷却系の配管のどこかが地震で損傷した可能性がある。新潟県技術委員会が2020年10月に公表した報告書によれば、
「原発を襲った津波は、東京電力の言う巨大津波第2波の2番目の波ではなく、その後の3番目の波であり、その到達時間は、午後3時38分台だったと主張している。すると、午後3時37分とされる電源喪失の原因は、原発敷地を乗り越えた津波が電源盤を被水させたためという東京電力の「説明」は崩れてしまう。<<p.69>>」


【ChatGPTとのQ&A】
Q4:東日本大震災時の福島第一原発付近の最大震度、最大加速度を教えてください。
A4:東日本大震災時の福島第一原発付近の最大震度と最大加速度については以下の通りです。

最大震度

福島第一原発が位置する福島県双葉町は、震度6強を観測しました。震度6強は、建物の倒壊が多発し、地面に大きな亀裂が生じるレベルの強い地震です。

最大加速度

福島第一原発付近で観測された最大加速度は、原発敷地内の観測点で最大550ガル(cm/s²)を記録しました。この値は非常に高く、強烈な揺れを引き起こす数値です。
これらのデータは、震災の影響を評価し、安全対策を講じるための重要な情報として利用されました。
Q5:東日本大震災時の福島第一原発の耐震設計で想定していた加速度は、どのくらいだったのですか?
A5:東日本大震災時の福島第一原発の耐震設計で想定されていた加速度は、以下のような基準に基づいています。

想定されていた加速度

福島第一原発の耐震設計では、設計基準地震動(S1)と耐震設計の目標とする極限状態地震動(S2)が定められていました。

  • 設計基準地震動(S1): 167ガル(cm/s²)

  • 極限状態地震動(S2): 270ガル(cm/s²)

これに対して、東日本大震災で観測された最大加速度は550ガルであり、これは設計基準を大きく超えるものでした。このため、震災による地震動は福島第一原発の想定を大幅に上回るものであり、これが事故の一因となりました。
Q6:日本の原子炉敷地内の使用済み燃料プールはどのように保管されていますか?福島第一原発の事故後、安全面で撮られた対策にはどのようなものがありますか?
A6:

使用済み燃料プールの保管方法

日本の原子炉敷地内の使用済み燃料プールでは、以下のような方法で保管が行われています。

  1. プール内保管: 使用済み燃料は、冷却プール内に配置されます。プール内の水は燃料からの放射線を遮蔽し、同時に燃料を冷却する役割を果たします。

  2. 冷却システム: プール内の水温を適切に維持するため、冷却システムが設置されています。このシステムは循環して水を冷却し、温度が上がりすぎないようにします。

  3. 放射線遮蔽: プールの構造は、放射線を外部に漏らさないように設計されています。これには、厚いコンクリートの壁や遮蔽材が使用されています。

福島第一原発の事故後に取られた安全対策

福島第一原発の事故を受けて、日本の原子力施設ではいくつかの重要な安全対策が実施されました。以下はその主要な対策です。

  1. 耐震強化:

    • 原子力発電所の耐震基準が見直され、設計基準地震動が強化されました。

    • 既存施設の耐震補強工事が進められました。

  2. 緊急冷却システムの改善:

    • 非常用冷却システムが強化され、複数のバックアップシステムが追加されました。

    • 電源喪失時にも冷却機能を維持するための非常用電源が強化されました。

  3. 使用済み燃料プールの安全強化:

    • プールの水位監視システムが改善され、緊急時に水を補給するための設備が追加されました。

    • プールの構造を補強し、地震や津波に対する耐性が向上されました。

  4. 防災対策の強化:

    • 防災訓練が強化され、緊急時の対応手順が見直されました。

    • 住民避難計画の改善と、避難経路の整備が進められました。

  5. 津波対策の強化:

    • 津波による浸水を防ぐための防潮堤が設置されました。

    • 発電所敷地内の重要設備の高台への移設や防水対策が実施されました。

これらの対策により、原子力発電所の安全性が向上し、再び同様の事故が発生するリスクを低減するための取り組みが進められています。
Q7:福島第一原発事故以降、様々な対策が施されているようですが、原子炉敷地内の使用済み燃料プールに想定される危険にはどのようなものがありますか?
A7:福島第一原発事故以降、様々な対策が施されましたが、原子炉敷地内の使用済み燃料プールには依然としていくつかの危険が想定されます。以下に主な危険を挙げます。

1. 冷却機能の喪失

使用済み燃料プールは冷却水によって燃料の温度を管理していますが、以下のような事態で冷却機能が失われると、危険が生じます。

  • 電源喪失: 非常用電源も含めた電源が全て失われると、冷却水の循環が停止し、燃料の温度が上昇する可能性があります。

  • 冷却システムの故障: 冷却ポンプや配管の故障により、冷却水の循環が止まる場合があります。

2. 水位低下

プール内の水位が低下すると、使用済み燃料が空気中に露出し、放射線の遮蔽効果が低下します。

  • 漏水事故: プールの構造に問題が生じて水漏れが発生する場合があります。

  • 蒸発: 冷却が不十分な場合、プールの水が蒸発して水位が低下することがあります。

3. 地震や津波

大規模な地震や津波によって、プールやその周辺の設備が損傷を受ける可能性があります。

  • 構造的損傷: 地震による揺れや津波の力で、プール自体が損傷するリスクがあります。

  • 津波による浸水: 津波によってプールに塩水が流入し、冷却水が汚染されることがあります。

4. 火災

使用済み燃料プール付近で火災が発生すると、プールの水が加熱されて蒸発し、冷却機能が失われるリスクがあります。

  • 施設内火災: 原子炉建屋内やプール周辺での火災が冷却系統に影響を与える場合があります。

5. 人為的なミスやテロ

人的なミスや悪意による破壊行為(テロ行為)も、使用済み燃料プールにとってのリスクとなります。

  • 操作ミス: プールの冷却システムの運転ミスが冷却機能に影響を与える場合があります。

  • テロ行為: 意図的な破壊行為によってプールや冷却システムが損傷するリスクがあります。

福島第一原発事故後の対策

これらの危険に対処するために、福島第一原発事故以降、以下のような対策が取られています。

  • 非常用電源の強化: 複数のバックアップ電源を設置し、電源喪失時にも冷却機能を維持できるようにしています。

  • 冷却システムの二重化: 冷却システムを二重化し、一方が故障してももう一方が機能するようにしています。

  • 水位監視システムの強化: プールの水位を常時監視し、異常が発生した場合には迅速に対応できるようにしています。

  • 耐震・耐津波対策: プールやその周辺施設の耐震強化、津波対策の実施によって、自然災害に対する耐性を向上させています。

  • 防火対策: プール周辺の防火設備を強化し、火災発生時の迅速な消火対応を可能にしています。

  • セキュリティ対策: テロ行為などに対するセキュリティ対策を強化し、敷地内への不正侵入を防止しています。

これらの対策を通じて、使用済み燃料プールの安全性を向上させる努力が続けられています。


【引用文献】
数字は、「カウントダウン・メルトダウン上」 船橋洋一著 文芸春秋 引用ページ
<>内は、「カウントダウン・メルトダウン下」 船橋洋一著 文芸春秋 引用ページ
()内は、 「原発敗戦」 船橋洋一著 文春新書 引用ページ
{ }内は、「福島第一原発1号機冷却「失敗の本質」」NHKスペシャル「メルトダウン」取材班 講談社現代新書 引用ページ
<<>>内は、「福島第一原発事故の真実」 NHKメルトダウン取材班 著 講談社文庫 引用ページ
(())内は、「ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか」 伊藤守 著 平凡社新書 引用 Kindle No.


*核分裂のイメージをChatGPTに描いてもらいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?