AIに仕事を「発注」する場合のプロンプトの工夫
はじめに
AI時代においてAIに仕事を頼むことは今後も激増します。
それをAIへの「発注」と呼ぶとします。
で、その発注自体は、自然言語=言葉=プロンプトで行わなければなりません。
人間への仕事の依頼と同じです。
このAIへのプロンプトによる発注の成功は、どれだけ的確に、かつクリエイティブに「自分が本当に求めるもの」を定義できるかにかかっています。単なるタスク依頼ではなく、価値を生み出すための「発注力」を磨くために、次のポイントに気をつけてみましょう。
1. 「なぜそれが必要なのか?」から始める
発注の際、まず大事なのは、その仕事が「何のために」必要なのかを明確にすることです。AIに「月次レポートを作って」と指示するだけでは、ただのデータの羅列になってしまう可能性があります。そこで、単に「何を」ではなく、「なぜ」それが必要かを具体的に伝えましょう。
たとえば、「経営陣が今月の売上を分析して、来月の営業戦略を立てるためのレポートが必要」と明確に定義します。この「なぜ」の部分があると、AIも目的に合わせたレポート作成を行いやすくなり、より価値あるアウトプットが期待できます。
2. 成果物の「イメージ」を具体的に描く
AIが理解しやすいように、成果物のイメージをできるだけ具体的に定義するのも大切です。「こういう内容が欲しい」という抽象的な指示よりも、「A社のレポートのようにビジュアルを重視し、トレンドの項目は多めに」「過去12ヶ月分のデータも含めて」といったように、望む結果に近い具体的な例やフォーマットを示しましょう。
たとえば、AIにプレゼン資料を作成させる際には、「インフォグラフィックスを2ページ含める」「主要なデータポイントは5つに絞り、トレンドの解説に2ページを割く」など、ページ構成やスタイルのイメージを言葉で具体的に伝えると、AIもその通りにアウトプットを仕上げやすくなります。
3. 「何を含めるか」「何を含めないか」を明確にする
AIは指示されたことを忠実に実行しますが、無駄にデータを盛り込みすぎる傾向もあります。そこで、発注の際に「含めるべき要素」と「除外すべき要素」を明確に示しましょう。例えば、「昨年の売上データは不要」「主要な競合のデータだけを含める」といった具体的なフィルタリング条件を伝えると、AIが余計なデータを省き、求める情報に集中してアウトプットを作成してくれます。
たとえば、AIにマーケティングプランを依頼する場合、「最新の市場データは含めてほしいが、古いデータや予測が不確実なデータは除外する」「B2Bセグメントのみに絞って分析する」など、何を外すかも明確にすることで、無駄のない計画が手に入ります。
4. 期待する「トーン」や「スタイル」を伝える
成果物のトーンやスタイルも重要なポイントです。AIはデータの羅列を得意としますが、プレゼン資料ならカジュアルな表現が良いのか、厳格でフォーマルな表現が良いのかを指定しないと、こちらの意図をくみ取ることができません。そこで、「CEO向けにフォーマルな口調で」「エンジニア向けに専門用語を多めに」「若手社員向けにカジュアルで読みやすく」といったトーンの指定を加えると、AIのアウトプットがグッと目的に合うものになります。
たとえば、社内の研修用資料をAIに作成してもらう際には、「新人が理解しやすいように、カジュアルで図解を多めに」「具体的な数字を少なくし、全体の流れにフォーカス」など、受け取る相手の視点に合わせたスタイル指示を加えることで、より効果的な資料が出来上がります。
5. フィードバックを活かし、次の発注に反映する
最初の発注=プロンプトでは、必ずしも完璧なアウトプットが得られないことがあります。そこで、発注→検収→フィードバックという流れを繰り返し、次回以降の発注にその学びを反映させることが重要です。
たとえば、初回のレポートで「もう少し深掘りした分析が欲しい」と感じたなら、次回は「この部分をさらに深掘りした分析を追加」とフィードバック内容を反映して、次の発注に生かします。AIも学習し続けるので、同じプロジェクトを何度も依頼していると、次第に発注が簡単になり、求める精度も上がってきます。
また、発注の際に「前回のデータに基づいた内容をさらに掘り下げて分析して」といった形で、過去のフィードバックを踏まえた指示を加えると、成果物がどんどん進化していきます。こうしたフィードバックの循環で、AIとの協働の精度を上げていくのです。
6. AIの得意分野を理解し、発注内容を最適化する
AIには得意分野と苦手分野があります。たとえば、統計的分析やトレンドの予測はAIが得意とするところですが、クリエイティブな言い回しや、柔軟な解釈が求められる文章作成には限界があるかもしれません。そのため、発注時にはAIの強みを活かす内容にフォーカスしましょう。
たとえば、顧客インサイトをAIに発注する場合、データの分析や数字的なパターン認識はAIに任せつつ、感情面や曖昧なニュアンスが重要な部分は自分でカバーする、といった工夫が効果的です。AIに適した作業だけを発注することで、無駄な出力を減らし、質の高いアウトプットを得ることができます。
まとめ
AI時代の「発注」は、単なる指示を出す作業ではなく、何が本当に必要かを見極め、求める成果を明確にイメージし、それをAIが理解できる形で伝える力が求められます。曖昧な発注では、曖昧な結果しか得られません。つまり、発注力を高めることこそが、AI時代のビジネスパーソンの最大の武器になるのです。発注を工夫することで、AIを真のパートナーとして活用し、より高次元の仕事に集中できるようになります。
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