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元銀行員の高校教員がやってみた金融教育

2学期の国際経済の単元の一環として、株式会社ARROWSと住信SBIネット銀行による『プロが教える!10代で必ずおさえたい「お金」のツボ』をお借りして、高校1年生の現代社会の授業をやりました。ちなみに、住信SBIネット銀行は、弊社on-shi-onのメインバンクでもあります(決済用の法人口座を持っている、というだけですが。まだ残高多くなくて、すみません)。

『よのなか学』の教材を活用させて頂きました

SENSEI NOTE経由で申し込んだ『よのなか学』の教材。初めて利用させていただきましたが、メインの授業スライドと動画教材、生徒用のワークシートと配布資料など、充実した教材一式で、そこまで準備に時間を掛けることなく、密度濃い授業をすることができました。

普段の授業でもYoutubeなどの動画を見たり、ワークシートを使ってグループワークをしているので、生徒としてはその点の目新しさはなかったと思いますが、いつとは違うテイストや観点からの教材を通して生徒は学ぶことで、新鮮味を感じられたのではと思います。授業の山場である資産運用シミュレーションでは、イベントがランダムに起こるのですが、それを決めるのは生徒によるあみだくじ。どのようなイベントが起こって、それが自分が選んだ資産にどう影響を与えるのか、生徒は一喜一憂しながら、楽しく盛り上がっていました。

学校教育における金融教育は近年導入が進みつつあります。2022年から本格適用される高校の学習指導要領では家庭科または公民科で金融教育が正規プログラムとして行われます。大切なのは、金融教育を通じて生徒に何を学んでほしいか、という目的意識でしょう。家庭科であれば、お金の使い方から生涯にわたる収支計画などを念頭に置いたライフプランニングや資産形成の考え方が必要となりますし、公民科では、18歳から成年になることを見据えて契約行為などの考え方や、資産運用のリターンとリスク、国際経済や経済活動によって資産がどのように影響を受けるのかを学ぶことになるでしょう。

メッセージ・金融教育を通じて学んでほしいこと

金融教育を通じて生徒に何を学び取ってほしいのか、このメッセージの伝え方が難しく、良い意味でも悪い意味でも教員の裁量によってしまうのが、金融教育だと感じています。今回は、お借りした教材をベースにして、「日本は少子高齢化で社会保障費が増大しており、将来のことをすべて国に頼ることはできない。なので、自分の資産はある程度自分で守り育てる必要がある。そのためには国内外の社会で何が起こっているのか、高校生のうちから関心を持ってほしい」というメッセージを伝えました。これが金融教育の在り方として正しいかどうかはわかりません。これからも考えていく必要があると思っています。あと、生徒の振り返りアンケートを見ていて感じたことは、知っている生徒と知らない生徒の差が大きいということ。知っている生徒は、知っているだけではなく、やっている、つまり投資経験があるとか、保護者とよく話しているため教材についても既知の情報でした、という反応がある一方で、知らない生徒は、初めて学ぶ内容なのでわかりやすい教材で親しみやすかった、という感想を書いていました。初学の生徒が大半で、当然知らない生徒に合わせた授業展開にすることになりますが、家庭環境の差も出てしまうのかなと思います。

金融教育をはじめとする実学志向の潮流

ということで、元銀行員ですが、あまり自分の経験や知見を全面に出さずに、外部教材におんぶにだっこで授業をしました(タイトル詐欺?ですね、すみません)。基本的には、私も生徒も楽しく授業を終えましたが、正直、大人に必要なスキルを小中高生から、ということでこんなにも実学に振り切ってしまっていいものか、民間企業を経由して学校現場にいる自分も迷います。最近では、2022年から本格導入される高校国語科学習指導要領の『現代の国語』から文学作品がなくなり、実用的な文章に置き換えられるという国語の検定教科書の問題にもあるように、世の中の潮流は実学志向が顕著です。プログラミング然り、英語教育然り。これからの時代を生きていく上で必要なことを学校で学ぶ、という総論は賛成ですが、それでも実学だけでなくて、なぜ生まれてきたのか、愛とはなにか、自分は何者か・・・について、思いを巡らせたり、同級生と語ったり、本を読んだりという青春ならではの時間を育むことも学校教育の愛でるべき一側面だと思っています。この話もいずれどこかで。

Re:メッセージ・金融教育を通じて学んでほしいこと

さて、この実学先取りの傾向ですが、金融教育も同じ流れにあります。ただ、アルバイトをしていて自分でお金を稼ぐとはどういうことか身を持って経験していれば切実なものとして金融教育に取り組めますが、高校生も全員がバイトをしているわけではなく、校則で禁止されていたり、勉強優先の生徒もいます。その場合、大人が実学教育の必要性や重要性をいくら声高に強調しても、実感がないわけです。リアリティに欠けるとただの机上のお勉強になってしまう。社会人になって初めてお金のことについて学ぶことの重要性に気がつく、って実は当たり前です。だって、その時初めてまとまった給料をもらい、大きな経済活動の流れに足を踏み入れることになるのですから。必要になった時に、その必要性に初めて気がつく。哀しいかな人間ってそういうものかなと。なので、必要になった時に、新しいことを学べる力、新しいことを学ぶときのよりどころとなる原理原則や考え方、情報の取捨選択、未知なるものへの向き合い方を学校教育では学ぶことのほうが大事なのではと思います。なので、今回の金融教育の授業のもうひとつのメッセージは金融リテラシー、具体的には、リターンにはリスクがあるよ、ちょろい儲け話などの情報には気をつけてね、騙す側にも騙される側にもならないでね(ちょっと言い過ぎ!?)、でした。この流れを受けて、次はビットコインなどの暗号資産についての授業をやりました。生徒からすれば、「先生、言っていることが違う!」となっちゃうのですが、それはまた次回に。

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